この小説は、以前上梓したものの再掲載です。

ブログ再開にあたってのテストです。



【人類乾燥化計画(前篇)】

「なってこった!」

酒匂 杜(さかわ もり)博士は、思わず嘆息した。

彼の開発した未来予測コンピュータがおそるべき結果を出力した。

ここ数年で太陽が寿命を迎え膨張を始めるという。

膨張が始まれば数100日の間に、水星軌道、金星軌道を飲み込み、

やがて地球軌道までに到達するという。


「急いで対策を打たねばならない。」

彼は、知り合いの世界科学技術連合総裁にメールを打った。

「至急、連絡されたし。大変なことが起こります。」


数分後、彼のタブレットに緊急コールが入った。

彼は、総裁のシルヴァスタインにこれから起きることを手短に伝えた。

「よし、わかった。」

総裁は、決断が速かった。

世界科学技術連合に加入している科学者40万人に酒匂の予測結果を伝えた。

反応はさまざまだった。

「本当なのか?」

「確度はどれぐらいなんだ?」

「早く逃げ出さなくちゃ。」

酒匂のところにメールが殺到したが対応している時間はなかった。

より正確な日時を知るためにあらたにプログラムを組むためだった。


やがて、彼の予測が正しかったことが各国の科学者から報告された。

そして、国連でも正式な報告がなされた。

国連本部事務総長のスティーブン・ヒラーは、各国に呼びかけ避難のためのワーキンググループを作った。

「3つのワーキンググループを立ち上げました。

1つは、スケジューリングチームです。これは太陽が膨張を始める正確な時期を予測します。

2つめは、気候影響度予測チームです。これは、いつから温度上昇が始まるかをまたそれに応じてなにが起きるのかを検証します。

3つめは、地球脱出計画チームです。人類の生き残りをかけ地球を脱出する方法を探ります。」


酒匂博士は、地球脱出計画チームのメンバーに選出された。

彼の構想力と先見性がチカラになるだろうとの判断だった。


半年後、ワーキンググループが相次いで結果を公表した。

スケジューリングチームは、太陽の挙動を綿密に観察し、膨張開始の時期を予測した。

それは、2020年4月1日プラスマイナス7日とされた。

気候影響度予測チームは、膨張開始から85日で気温が12度上昇しその時点で生命の存続が困難になるとの見通しを示した。

地球脱出チームは、あらゆる可能性を検討した。

全生物のDNAを磁気記録として残しそれを恒星間宇宙船に乗せる方法が最後まで残ったが、

酒匂が提案した方法がそれを凌いで最終的な候補となった。

それが人類乾燥化計画である。

(続く)

【2019年10月記】
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