東京砂漠のゴジラちゃん -13ページ目

東京砂漠のゴジラちゃん

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案の定、ランキング落ちました……。

お笑いからちょっと外れただけで、これだもんなぁ♪ 今、やろうと思ってたのにぃ~、(懐かしいでしょ? ねっねっ、これ、西田敏行よ~ん) ← これじゃ、笑いはとれないよ、ゴジラ……。

めげずに、頑張るわ!





2006年10月、ゴジラちゃん、馬込のボロアパートに越しました。その頃の生活は悲惨すぎて笑えるから、えせ霊能者の話のときに書くね。





とりあえず派遣会社に登録し、決まった会社はオランダに本社を持つ、有名外資系会社だった。事務職経験ゼロのゴジラちゃん、履歴書がデタラメだらけだったのは言うまでもない。

「ゴジラさんの履歴書、もう一枚必要になったので、もう一度書いてください」 とか 「何年何月は何されてたんでしたっけ?」 なんて聞かれたら、「ああ~、その時ですね、イヒヒヒッ!」 なんて思い出し笑いなんぞし、相手の反応を目の端に置きながら、その場を切り抜けるしかない。

同じような人はコピーを取り、当分は持ち歩くことをお勧めする。




しかし、えせ霊能者との空白の二年間を埋めるのには頭を使った。さて……どうするか……、





「麻布新規事業プロジェクト参加、営業、事務全般担当、(4L担当)」




「あのう……この 「4L」 ってなんですか?」




「えっ? (しまった、余計者なことを書いちまった……) はい、4Lサイズの洋服も売ってたんです」




「この会社、洋服屋さんだったんですか?」




「い、いえ、違います。(事務職募集の面接なのに、まずいぜ!) ただ、スポンサーが4Lの女だったので……」




「?????……4Lなんてサイズあるんですか……?????」




「い、いたんです。本当に……」


 



意味不明が度をこすと、脳味噌は混乱し、考えるのをやめてしまう、作戦大成功だった。
ひろーいフロアに、外人がたくさんいたのには驚いたよ。お陰で、ドラマ 「24」 見ても、あんまりびっくりしなかった。 (あのね、誰も驚かないから) 髪の毛が金髪というより、白金に近くてさ、宇宙人みたいだなって思った。





パソコンが当たり前のようにあるデスクを与えられ、「この資料を、チキナチキナチキナベイビー、ホニャララホニャララホニャラベイビーに作成し直してください」 と言われたが、意味チンプンカンプン。しかめっ面で、PC画面見つめること30分。天の助けのTOM (妹、日本人だよ) にメールで聞きまくること1時間、何とか乗り切った。(乗りきったのは、仕事中の涙目のTOMの方)





その後、エクセルをアクセルと言ってみたり、表計算を総決算と聞き間違えてみたり、年下女上司の冷やかな視線を浴びながら、デスクで寝たり食べたりを繰り返し、頭上までのパーテンションで命拾いも繰り返す。

5時30分の退社後は一目散で帰宅し、テレクラさのさくらで受話器を握りしめ、土日はデパートの売り子で声をからした。年末年始は二時間かけて千葉の奥地のブティックに出向き、足を棒にし、最終電車に飛び乗った。





娘は一年の約束で実家にあずけていた。ボロアパートでゴジラちゃんを出迎えてくれるのは、ゴンとモップ犬二匹だ。二階の部屋へと上がる、鉄骨がむき出しの階段に響くゴジラの靴音を、世界でたった3匹だけが待つ毎日。

薄い板一枚の扉の中から聞こえてくる、クークーニャ~ニャ~ワンワンのむせび声……、そこには折り重なるようにゴジラを見上げる三匹のつぶらな瞳……。





オ、オヌシたち、ブレーメンの音楽隊かっ!






年が明けた。

懇親会の回覧メールが届く。こりゃ大変だ! とばかりにゴジラちゃんはスタコラサッサと帰宅準備。忍者のごとくエレベーターに滑り込み、会社の裏口から出ようとしたその時だ。






「ゴジラく~ん、まさかぁ……帰るんじゃぁないだろうねぇ、イッヒヒヒヒ!」




「ぶ、部長!」




しまった! 一番見つかりたくない相手だ。





「今日は帰さないよ~! まだ一度も飲み会に参加してないじゃ~ん! イッヒヒヒヒ!」





ゴジラは飲み会どころか、オフィスでも必要以外誰とも口をきかないでいた。ゴジラの正体がバレたら大変だ。お茶や飲み会に誘われるのは目に見えていた。そんな時間も金もない。

ゴジラは毎月40万を借金返済に充ててたんだからな。テレクラのさくらは、ゴジラの大切な収入源である。





しかしこの部長、なかなか勘のいい奴だった。喫煙室で会う度、ゴジラちゃんの正体を暴きにかかり、最近では、変なやつ見っけ! と嬉しそうなにやけ顔でゴジラにアイコンタクトまでしてきやがる。

結果、部長 (舘ひろし似のイケメン、ゴジラと同い年) の絶妙な舌さばきと手さばきで、アレヨアレヨという間に、ゴジラ脱がされる。いや、懇親会に連行される。





酒に負けじと猫をかぶり、一次会は何とか切り抜ける。しかし、勘のいい部長はゴジラの横にピタリと張り付き、二次会のカラオケボックスに絶妙な腰さばきで誘導する。 (さすがのゴジラもこれにはかないましぇ~ん!)

一番大きな部屋に30人の男女がなだれ込む。広いステージとミラーボールがうるさい部屋だ。

たぬきさんチームとうさぎさんチームに分かれ、歌合戦が始まる。ゴジラ、サラリーマンの世界に溜息漏らす。





ふと、横から視線を感じ振り向くと、そこに一人の小さなおじさんがいた。本当に小さくて小さくて、おとぎの国から現れた妖精のおじさんを見ているのかと思ったほどだ。だが、妖精にしては顔がくたびれている。オヌシ! もしや白雪姫の七人の小人のうちの一匹か!






「こんにちは」




「こ、こんにちは」




「ボク、ヤゴです」




「ヤゴ? ヤ、ヤゴって、あのヤゴさん?」





ヤゴという名前……、忘れるはずがない。なぜなら、ゴジラちゃんのPCに変なメールを送ってきた不可解な奴だったからだ。

一か月前、ゴジラちゃんが営業クンにある簡単な事務報告のメールをしたところ、間髪なしに 「ヤゴ」 という名前の人物から空メールが届く。





「なんですかね、これ、間違いメールですよね?」





隣の席の女子に聞く。





「ホントだ、間違いだね。何にも書いてないもんね」





と女子。ちょうど、後ろを通った別の女子が覗きこむ。





「あ! 一番下見て見て! なんか書いてある!」





三人で指された場所を見る。すると、画面ギリギリ下を横一列に、アリンコが這ったような小さな小さな文字。





「なななに……これ???」





「以後、このようなメールは一番上の上司である私にもくれなければ困ります。必ずそうしてください。ヤゴ」





「はぁ~ん???」





三人で吹き出した。内容はともかくとして、なぜアリンコ? なぜこんな下? 

後日、このヤゴという人物、還暦まじかの営業マン、海外勤務経験ありで英語堪能、営業成績アジアナンバーワン、と判明。しかし、社内で見かけたことはなかった。







気がつくとゴジラの歌う番だった。この時、何を歌ったかは覚えていない。この直後、衝撃なものを目にしたからだ。覚えているのは、酒の力か、ゴジラの昔とった杵柄か、クラブのホステス顔負けでゴジラが歌っていたことだ。

一瞬、シーンとしたね。オフィスでは常に伏し目がち、頭上までのパーテンションの中、何やってるんだか分からん女がさ、大きな声とうざいビブラートで喉ふるわせて歌ってんだからさ。カツラゆさゆさ揺らしてね。

すぐさま、場が一気に盛り上がる。しかし、悲しいことにゴジラのオンステージはそこまでだった……。





薄暗い客席から、何かがステージ目がけ、いやゴジラちゃん目がけ、突進してきたのだ! それは、とてもとても小さな……





ヤ、ヤゴ!



オ、オヌシ、な、なにする気じゃ!




ヤゴは短い手足を振り回し、踊り狂っている。ふと、回りはじめる。くるくるくるくるクルクルクルクル、ひとりで回る。楽しく回る。バレリーナのように、くるくるくるくるクルクルクルクル……。オヌシ! 何かに変身する気か……。と思ったら、ヤゴ止まる。

今度は両手を広げ、気持ち良さそうだ。おお~! ヤゴ! さてはトンボになったのか! そ、そげに嬉しいのか!

オトコもオンナも唖然とし、冷やかな視線でヤゴを見つめる。ゴジラは珍しい生き物に瞳がランランとする。





その後、何もなったかのようにヤゴは席に着いた。会場はシーンと静まり帰っている。ゴジラはトイレに直行した。カツラのことを忘れていたからだ。この時、ゴジラの頭はハゲチョビンだった。ずれてたりでもしたら大変だ! ホッ、ずれてなかった。しかし、トイレから出たとたん、カツラまで禿げるかと思うほど驚く。

なんと、そこにヤゴが立っているではないか!

キ、キ、キサマ! いつからそこに……。





「待ってました」




「はっ?」




「あなたをお迎えにきました!」




「なんでですかぁ~???」





ヤゴは酔っ払っているのか、重力に負けてしまったのか、顔の筋肉が崩れきっている。ゴジラちゃんは頭の中を ??? に占領され、ヤゴを完全に無視した状態で部屋に入る。しかし、ヤゴはゴジラちゃんの隣から離れようとしない。





「あのう……ひとつ聞いてもいですか?」





「はい」





「あのう……、なぜ、そこにずっといるんですか? オトコの人、席変わったりしてますけど……」





「キミガフカソウダカラ……」





おお! 納得! いやね、えせ霊能者と一緒にいた年月とこの数ヶ月の毎日で、ゴジラちゃん一気に老けたんですわ……。おまけにこの頭だよ、「千と千尋」 のカオナシみたいなんだぜ。生え際が5センチ後退した妙な髪型の女にさ、どこのどなたさんもゴジラを女とは認識しないはずなのよ。「フカソウダカラ」 も意味不明だったけど……。






「チュッ!」






――― えっ?






ヤ、ヤゴが、ヤゴがゴジラちゃんのほっぺにキスしやがったぁ!

てててめえ! このやろう! ふふふざけんじゃ、ねえ!!!

今、今、今、なにしやがったぁ!




思いきりヤゴを睨みつけたい気持ちと、マジで意味わかんないっす、の気持ちが交差する。目を血走らせ気味でヤゴに振り向くと、ヤゴは満面の笑みってやつで、ゴジラの目の前に壁画のように微笑んでいた。酔っ払い相手にくだらない、そうゴジラちゃんは決断を下し、今のは無かったものと片づけた。




そんなこんなで、二次会は終了となる。しかし、翌日からヤゴからのメール攻撃が始まったのだ。




(つづく)

「退去命令が出てるってことはさ、ゴジラ、ヤゴの援助がなくなったってこと?」




「そだよ」




「なんで?」




「断ったから」




「だって、もう何度断っても、続いてたじゃん!」




「ヤゴが病気と知ったからだよ。分かった以上、続けるわけにはいかない」




「でも、ヤゴ、納得したんだ……」




「しない、時間かかった」




「その間、どうだったの?」




「家に押しかけてきたり、お金握りしめてきたり、泣いてみたり……、ゴジラはヤゴのカウンセラーやってた」




「で?」




「病院いきなって言ったよ」




「で?」




「一緒に病院行ってくれって言われた」




「で?」




「病院探したよ、だけど、土壇場になってヤゴは行かないって言ったよ。で、ゴジラの役目は終わった、さようならって、言った」




「援助したいって、言うんだから、援助してもらい続ければよかったじゃ~ん!」




「やだね。体が腐っても、心は錦さ!」




「今、ヤゴ、どうしてんの?」




「ゴジラいじめが始まってる」




「どんな?」




「被害者2000万円の会からのメールが押し寄せてきてる。いい人だって豪語してたのが、ひどい奴になってるよ。それも病気の症状だ」




「げ~、どうすんの?」




「どうも?」




「でも……2000万でしょ……」




「2000万なんてはずないだろがぁ! そうなら今頃、ちっちゃいマンション買ってるぜ!」





ヤゴは週に3,4回はピンクサロンっていうんですか? お姉さまが裸でご奉仕くださる場所に足しげく通ってらっしゃった。 (これも、病気の症状です) 

そこで、100万円、200万と、お姉さまにプレゼントされていた。 (これも、病気の症状です)

他にもあげれば切がない。それを、全部ゴジラちゃんにくっつけている。 (これも病気の症状です)




いや、正確には金額の問題でない。100円だろうが、5000万だろうが、1億だろうが同じだ。問題なのは深い闇の底で、なにを思い、どういられるかだ。その時こそ、自分という生き物の正体を見破れるチャンスである。

ゴジラの場合、えせ霊能者のおかげで、自分がゴジラだということを知った。サンキューえせ!




しかし、ヤゴはもっともそれが苦手、なぜならそういう病気だからだ。




境界性人格障害……、常に心が空虚であり、自分という存在価値を探しもとめる。人より、どこか秀でていなければ人に認めてもらえない、自分の存在価値がないと思っている。





世の中、完全な人間などいない、それにそんな奴面白くもない。世の中みな病気なのだ。

ゴジラもかなりの重症患者だ。

真剣に向き合った相手には正直に反応してしまう。それがエスカレートし、相手の開けてほしくない蓋を思いっきりあけてしまう。そういう奴に限って、蓋を何重にもかぶせてやがる。しかも、心の底では蓋を開けたがってもらっている。よくいう、魂の叫びってやつだな。





思いっきり生きることは、素晴らしいことだ! ゴジラはそうやって生きていきたい。だから、そんな人をみると嬉しいんだ。しかし……、思いっきり生きた先に待ってるのは思いっきりに見合ったものである。人はそれを成功とか、失敗とかいうが、そんなもの、何と比べて判断するのだ。他人や世の中と比べてどうすんの? アータ、だれのために生きてんの?





ヤゴ……、チミはゴジラちゃんの、カツラを被ってるのに、なおも気ぐるみを被ろうとする姿になにを見たのか! ゴジラに援助することで、自分の存在価値を実感できるチャンス到来! とでも思ったのか。自分がスーパーマンになって、認めてもらえる相手を見つけた! と思ったのか。

ヤゴ……、チミは甘かった。ゴジラがもし人間なら、アンタが一番! よっ、ゴジラのスーパーマン! とチミを賛美しながら、背中をむけ、越後屋のオヤジのように小判をかじり、ニンマリとやったかもしれない……。




しかし……、チミが精神分裂症なら、ゴジラは珍獣、相手が悪かった。ゴジラにとってスーパーマンも金もなんの魅力もないのだよ! (TOTO買ったり、宝くじ買ったりしてるくせに。あっ、今だけ今だけ!)

ゴジラが欲してやまないのはね、世界のひとたちの笑顔と、ゴジラの運命の人。そ・れ・だ・け。

かぁ~! くさ! ランキング、落ちるな。





次は、ヤゴとゴジラの出会いを書いてみることにした。今日のブログみたいに説教くさくないから、楽しみにしててね~!





〈今日の報告事項〉


不動産から、退去日はいつか? との連絡あり。

ヤゴから、15通のメールあり。どれも「被害者2000万円の会」からの暴言集。

部屋の中、もっか漏電中。

ゴン、火傷の治療中。

モップ犬、生贄後、心臓マッサージにより生き返る。

以上。





どうするか……。どないしまひょ? どないする?




12月で退去せねばならぬのじゃ、引っ越し費用もなく、行先もないゴジラちゃん。





宙を見上げる。



眉間にシワを寄せる。



頭をかきむしる。



うなり声をあげうっぷせる。



顔あげる。



鼻ほじる。



食べる。



ゴンをなぜる。



なぐる。



モップ犬の耳掃除する。



ついでに自分の耳掃除する。



匂いかぐ。



顔しかめる。



退去命令思いだす。



泣く。



鼻かむ。



ティッシュでこより作る。



鼻に入れる。



くしゃみする。



ティッシュ丸める。



ゴミ箱に投げる。



はずれる。



真っ暗やみに気づく。



ろうそくつける。



ゴン、ジャンプする。



ろうそくの灯、ゴンに燃え移る。



ゴン、悲鳴あげる。



ゴジラ、悲鳴あげる。



火だるまのゴン、走りまわる。



ゴジラ追いかける。



カーテンに引火する。



部屋じゅう、火の海になる。



ゴジラ、インディアンになる。



祈りのダンスする。



モップ犬を生贄にささげる。



神サマ現れる。



金の斧か、銀の斧か聞かれる。



ゴジラ、銅の斧だと豪語する。



神サマ喜ぶ。



TOTOビッグの当選券くれる。









ゴジラちゃんただいま妄想中……ゴジラちゃんただいま妄想中……。





しかし……TOTOビッグは全滅だった……。





宝くじは買ってみたものの……当選発表は1月1日。

退去は12月中……。







「働けよ!」




「働いてるぜ!」




「いつから?」




「10月31日から」




「月いくらになるんだよ!」




「12万くらい」




「家賃にもなんないじゃん」




「さようで」




「他、収入ないのかよ!」




「ねえ!」




「おまえ、終わったな……」




「まあな……」






ゴジラちゃん、また妄想に突入。また妄想に突入……。