案の定、ランキング落ちました……。
お笑いからちょっと外れただけで、これだもんなぁ♪ 今、やろうと思ってたのにぃ~、(懐かしいでしょ? ねっねっ、これ、西田敏行よ~ん) ← これじゃ、笑いはとれないよ、ゴジラ……。
めげずに、頑張るわ!
2006年10月、ゴジラちゃん、馬込のボロアパートに越しました。その頃の生活は悲惨すぎて笑えるから、えせ霊能者の話のときに書くね。
とりあえず派遣会社に登録し、決まった会社はオランダに本社を持つ、有名外資系会社だった。事務職経験ゼロのゴジラちゃん、履歴書がデタラメだらけだったのは言うまでもない。
「ゴジラさんの履歴書、もう一枚必要になったので、もう一度書いてください」 とか 「何年何月は何されてたんでしたっけ?」 なんて聞かれたら、「ああ~、その時ですね、イヒヒヒッ!」 なんて思い出し笑いなんぞし、相手の反応を目の端に置きながら、その場を切り抜けるしかない。
同じような人はコピーを取り、当分は持ち歩くことをお勧めする。
しかし、えせ霊能者との空白の二年間を埋めるのには頭を使った。さて……どうするか……、
「麻布新規事業プロジェクト参加、営業、事務全般担当、(4L担当)」
「あのう……この 「4L」 ってなんですか?」
「えっ? (しまった、余計者なことを書いちまった……) はい、4Lサイズの洋服も売ってたんです」
「この会社、洋服屋さんだったんですか?」
「い、いえ、違います。(事務職募集の面接なのに、まずいぜ!) ただ、スポンサーが4Lの女だったので……」
「?????……4Lなんてサイズあるんですか……?????」
「い、いたんです。本当に……」
意味不明が度をこすと、脳味噌は混乱し、考えるのをやめてしまう、作戦大成功だった。
ひろーいフロアに、外人がたくさんいたのには驚いたよ。お陰で、ドラマ 「24」 見ても、あんまりびっくりしなかった。 (あのね、誰も驚かないから) 髪の毛が金髪というより、白金に近くてさ、宇宙人みたいだなって思った。
パソコンが当たり前のようにあるデスクを与えられ、「この資料を、チキナチキナチキナベイビー、ホニャララホニャララホニャラベイビーに作成し直してください」 と言われたが、意味チンプンカンプン。しかめっ面で、PC画面見つめること30分。天の助けのTOM (妹、日本人だよ) にメールで聞きまくること1時間、何とか乗り切った。(乗りきったのは、仕事中の涙目のTOMの方)
その後、エクセルをアクセルと言ってみたり、表計算を総決算と聞き間違えてみたり、年下女上司の冷やかな視線を浴びながら、デスクで寝たり食べたりを繰り返し、頭上までのパーテンションで命拾いも繰り返す。
5時30分の退社後は一目散で帰宅し、テレクラさのさくらで受話器を握りしめ、土日はデパートの売り子で声をからした。年末年始は二時間かけて千葉の奥地のブティックに出向き、足を棒にし、最終電車に飛び乗った。
娘は一年の約束で実家にあずけていた。ボロアパートでゴジラちゃんを出迎えてくれるのは、ゴンとモップ犬二匹だ。二階の部屋へと上がる、鉄骨がむき出しの階段に響くゴジラの靴音を、世界でたった3匹だけが待つ毎日。
薄い板一枚の扉の中から聞こえてくる、クークーニャ~ニャ~ワンワンのむせび声……、そこには折り重なるようにゴジラを見上げる三匹のつぶらな瞳……。
オ、オヌシたち、ブレーメンの音楽隊かっ!
年が明けた。
懇親会の回覧メールが届く。こりゃ大変だ! とばかりにゴジラちゃんはスタコラサッサと帰宅準備。忍者のごとくエレベーターに滑り込み、会社の裏口から出ようとしたその時だ。
「ゴジラく~ん、まさかぁ……帰るんじゃぁないだろうねぇ、イッヒヒヒヒ!」
「ぶ、部長!」
しまった! 一番見つかりたくない相手だ。
「今日は帰さないよ~! まだ一度も飲み会に参加してないじゃ~ん! イッヒヒヒヒ!」
ゴジラは飲み会どころか、オフィスでも必要以外誰とも口をきかないでいた。ゴジラの正体がバレたら大変だ。お茶や飲み会に誘われるのは目に見えていた。そんな時間も金もない。
ゴジラは毎月40万を借金返済に充ててたんだからな。テレクラのさくらは、ゴジラの大切な収入源である。
しかしこの部長、なかなか勘のいい奴だった。喫煙室で会う度、ゴジラちゃんの正体を暴きにかかり、最近では、変なやつ見っけ! と嬉しそうなにやけ顔でゴジラにアイコンタクトまでしてきやがる。
結果、部長 (舘ひろし似のイケメン、ゴジラと同い年) の絶妙な舌さばきと手さばきで、アレヨアレヨという間に、ゴジラ脱がされる。いや、懇親会に連行される。
酒に負けじと猫をかぶり、一次会は何とか切り抜ける。しかし、勘のいい部長はゴジラの横にピタリと張り付き、二次会のカラオケボックスに絶妙な腰さばきで誘導する。 (さすがのゴジラもこれにはかないましぇ~ん!)
一番大きな部屋に30人の男女がなだれ込む。広いステージとミラーボールがうるさい部屋だ。
たぬきさんチームとうさぎさんチームに分かれ、歌合戦が始まる。ゴジラ、サラリーマンの世界に溜息漏らす。
ふと、横から視線を感じ振り向くと、そこに一人の小さなおじさんがいた。本当に小さくて小さくて、おとぎの国から現れた妖精のおじさんを見ているのかと思ったほどだ。だが、妖精にしては顔がくたびれている。オヌシ! もしや白雪姫の七人の小人のうちの一匹か!
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「ボク、ヤゴです」
「ヤゴ? ヤ、ヤゴって、あのヤゴさん?」
ヤゴという名前……、忘れるはずがない。なぜなら、ゴジラちゃんのPCに変なメールを送ってきた不可解な奴だったからだ。
一か月前、ゴジラちゃんが営業クンにある簡単な事務報告のメールをしたところ、間髪なしに 「ヤゴ」 という名前の人物から空メールが届く。
「なんですかね、これ、間違いメールですよね?」
隣の席の女子に聞く。
「ホントだ、間違いだね。何にも書いてないもんね」
と女子。ちょうど、後ろを通った別の女子が覗きこむ。
「あ! 一番下見て見て! なんか書いてある!」
三人で指された場所を見る。すると、画面ギリギリ下を横一列に、アリンコが這ったような小さな小さな文字。
「なななに……これ???」
「以後、このようなメールは一番上の上司である私にもくれなければ困ります。必ずそうしてください。ヤゴ」
「はぁ~ん???」
三人で吹き出した。内容はともかくとして、なぜアリンコ? なぜこんな下?
後日、このヤゴという人物、還暦まじかの営業マン、海外勤務経験ありで英語堪能、営業成績アジアナンバーワン、と判明。しかし、社内で見かけたことはなかった。
気がつくとゴジラの歌う番だった。この時、何を歌ったかは覚えていない。この直後、衝撃なものを目にしたからだ。覚えているのは、酒の力か、ゴジラの昔とった杵柄か、クラブのホステス顔負けでゴジラが歌っていたことだ。
一瞬、シーンとしたね。オフィスでは常に伏し目がち、頭上までのパーテンションの中、何やってるんだか分からん女がさ、大きな声とうざいビブラートで喉ふるわせて歌ってんだからさ。カツラゆさゆさ揺らしてね。
すぐさま、場が一気に盛り上がる。しかし、悲しいことにゴジラのオンステージはそこまでだった……。
薄暗い客席から、何かがステージ目がけ、いやゴジラちゃん目がけ、突進してきたのだ! それは、とてもとても小さな……
ヤ、ヤゴ!
オ、オヌシ、な、なにする気じゃ!
ヤゴは短い手足を振り回し、踊り狂っている。ふと、回りはじめる。くるくるくるくるクルクルクルクル、ひとりで回る。楽しく回る。バレリーナのように、くるくるくるくるクルクルクルクル……。オヌシ! 何かに変身する気か……。と思ったら、ヤゴ止まる。
今度は両手を広げ、気持ち良さそうだ。おお~! ヤゴ! さてはトンボになったのか! そ、そげに嬉しいのか!
オトコもオンナも唖然とし、冷やかな視線でヤゴを見つめる。ゴジラは珍しい生き物に瞳がランランとする。
その後、何もなったかのようにヤゴは席に着いた。会場はシーンと静まり帰っている。ゴジラはトイレに直行した。カツラのことを忘れていたからだ。この時、ゴジラの頭はハゲチョビンだった。ずれてたりでもしたら大変だ! ホッ、ずれてなかった。しかし、トイレから出たとたん、カツラまで禿げるかと思うほど驚く。
なんと、そこにヤゴが立っているではないか!
キ、キ、キサマ! いつからそこに……。
「待ってました」
「はっ?」
「あなたをお迎えにきました!」
「なんでですかぁ~???」
ヤゴは酔っ払っているのか、重力に負けてしまったのか、顔の筋肉が崩れきっている。ゴジラちゃんは頭の中を ??? に占領され、ヤゴを完全に無視した状態で部屋に入る。しかし、ヤゴはゴジラちゃんの隣から離れようとしない。
「あのう……ひとつ聞いてもいですか?」
「はい」
「あのう……、なぜ、そこにずっといるんですか? オトコの人、席変わったりしてますけど……」
「キミガフカソウダカラ……」
おお! 納得! いやね、えせ霊能者と一緒にいた年月とこの数ヶ月の毎日で、ゴジラちゃん一気に老けたんですわ……。おまけにこの頭だよ、「千と千尋」 のカオナシみたいなんだぜ。生え際が5センチ後退した妙な髪型の女にさ、どこのどなたさんもゴジラを女とは認識しないはずなのよ。「フカソウダカラ」 も意味不明だったけど……。
「チュッ!」
――― えっ?
ヤ、ヤゴが、ヤゴがゴジラちゃんのほっぺにキスしやがったぁ!
てててめえ! このやろう! ふふふざけんじゃ、ねえ!!!
今、今、今、なにしやがったぁ!
思いきりヤゴを睨みつけたい気持ちと、マジで意味わかんないっす、の気持ちが交差する。目を血走らせ気味でヤゴに振り向くと、ヤゴは満面の笑みってやつで、ゴジラの目の前に壁画のように微笑んでいた。酔っ払い相手にくだらない、そうゴジラちゃんは決断を下し、今のは無かったものと片づけた。
そんなこんなで、二次会は終了となる。しかし、翌日からヤゴからのメール攻撃が始まったのだ。
(つづく)