「ボクがキミのサポートしたいって言ったらどうする? るんるん?」
「はい?」
「ボクがなるよ! ボクがしたいよ! キミのスポンサー!」
ヤゴの目はランランと輝き、ゴジラの肘から手首までの肩幅で、わっしょいわっしょいと言わんばかりに、肩を震わせている。ようするに、一人で興奮していた。
「あのさ、どっからどうしてどうなったら、そんな話が出てくるわけ?」
「だって、キミィ、今のままじゃ大変でしょ?」
この頃には、ヤゴにえせ霊能者の話はしてあった。なんつったって、ヤゴを笑わすには最高のネタだからな。
「あのね、大変なのは当たり前なの。自分で蒔いた種なんだから。でもね、何とかやってるからいいの! それにね、もう誰からも借金はしたくないの! こりごりなんだからね、もう!」
「違うよ! お金を貸すとかの話じゃないんだから、誤解しないでよォ、それにさ、もっとさ、たくさん書く時間がとれたらいいんじゃない?」
数ヶ月前から、ゴジラちゃんはえせ霊能者のことをノンフィクション小説にするため、時間を見つけては書いていたのだ。
「お気持ちだけいただきまっす。でも、ご遠慮させていただきまっす!」
・・・・・・・・・・・ 数日後 ・・・・・・・・・・・・・・
「やっぱり、ボクにさせてもらえないかな~、キミのサポート……」
「ま、まだ、言ってんのぉ~?」
「だってさ、キミを見てると、事務職なんて全然あってないんだよね~♪」
1か月前、デスクの頭上まであったパーテーションが胸あたりまで下げられてしまう、という悲劇的な事態が起きていた。そのため、ゴジラの食っちゃ寝の極秘事項があらわにされる羽目になる。
「もう、ゴジラちゃんさぁ、寝るときはさ、書いてるふりとかして、ごまかして寝てよォ~」
すでに部署のお笑い担当となってしまっていたゴジラは、女子たちによく言われていた。真っ直ぐ前を向いたまま大口をあけ、ヨダレというご丁寧な付属品までくっつけてるゴジラズ姿が、遠くからでもよ~く観察できるというのだ。珍しく寝てないな、と思ったら、何かムシャムシャやってるし……と。
くそ~! 何度も命拾いしたパーテンションが、今度はゴジラを陥れにかかろうとしていたのだ。
そして、ヤゴもそのゴジラズ姿を何度も垣間見ていた。
「ちょっと、事務職が合ってないって、それ、どうゆう意味ざんしょ?」
ゴジラがヤゴを本気で睨む。てめえ! チクッたらただじゃおかないからな! そんなこともししやがったら、毎月の30万、弁償しろよ! の意をこめて。
「ち、ちがうよ、寝てるからとかじゃなくて……、そのぉ、キミには事務職は地味すぎるってことだよォ~」
オ、オヌシ、勘がいいでござるな、確かに事務職をやってつくづく思った。つまらん……。1日から月末まで、毎月同じことの繰り返し。でもね~、もっとつまんないのはね~、ヤゴクン、アータとの、この時間ですからぁ!
「キミさ、バーとかさ、接客業とかが向いてるんじゃないの?」
おっ! ますます勘が冴えとるじゃないですか! 昔、クラブのママをやってたことも、保釈金ネコババしたことも、(それはこの場合関係ないし、誤解されるからやめなさいね) この男には言ったっけ??? どうだっけ???
「でもね……、そう見られるんだけど、実はそうでもないのよ。私、なんでも真剣になっちゃうからさ、酔っ払い相手はしんどいの……(チミも十分しんどいのよ……ヤゴクン)」
「そうなんだ……、じゃ、小料理屋の女将なんかは? るんるん!」
「んん……、お料理作るのあんまり好きじゃないしね……」
「じゃ、接客だけやればいいじゃん!」
「まあね、それならありかも……って、ちょっとぉ! どこに向かって喋ってんのよ!」
「だってボク、キミの夢を一緒に叶えたいんだよ……」
「はあ~? なんで~?」
「だって、もうこのまま年をとっても、なんの楽しみもないし……、棺桶にお金を持って行くわけにはいかないし……、キミといると、本当に楽しいんだ!」
このお二人さんには絶対に不釣り合いな、テーブルの上のキャンドルがヤゴの瞳に反射し、キラキラと不気味なほど輝いていた。このままこのキャンドルを、ヤゴの顎の下に移動させれば、「ザ・亡霊大会、どれが一番気持ち悪いでしょう!」 で間違いなく優勝できるぞ! と確信した。気が狂いそうなぐらい、ヤゴにそれを言いたくなったが、シャレにならんのでやめといた。
その後も、ヤゴからのアプローチつづくつづく……。
〈今日の報告事項〉
また、昨日のカワイコちゃんから、ヤゴがしつこいと、泣きの連絡入る。
ゴジラちゃん、「やめてあげてくれ」 のメールをヤゴに送る。
ヤゴからカワイコちゃんに、そんなつもりじゃないのに……さようなら、と悲しんでるメールくる。
ヤゴからのメール攻撃、また復活するな、の覚悟体制にゴジラ入る。
部屋の中、もっか漏電中。
モップ犬、餌が少ないと、キレまくる。
ゴン、缶詰食わせろ! とゴジラを噛みまくる。
ゴジラ、ゴンにおびえ、宝くじ売り場に走る!
スクラッチ一枚だけ買う。
おお! 3千円当たった! マジだよマジ!
運が向いてきたぜ! と涙目になり、売り場のおじさんに気味悪がられる。
以上。