イスラエルは防空システム「アイアンドーム」を購入したいというウクライナの要望を断ったというニュースを聞いた。
アイアンドーム1セットに付き最大80発の標的に対応でき、イスラエル軍の発表では命中率の実績は85~90%と非常に高く、実績ベースでは世界で最も優れた防空システムである。
防空システムが乏しいウクライナは昨年から世界でも最も優れた防空システムの一つであるイスラエルの「アイアンドーム」の購入をアメリカに求めていた。
アイアンドームはイスラエルとアメリカとの間で共同開発された兵器で、第三者に売却する場合は両国の同意が必要で、アメリカは前向きでしたが、イスラエルは非公式協議でこれを拒否した。
ここ数か月の緊迫した情勢もあり、ウクライナは直接、イスラエルに働きかけたようですが、これも拒否した。
イスラエルはウクライナとロシアの問題については中立の立場を取らざる得ない背景がある。
中東で様々な火種を抱えるイスラエルはシリアとイランの対応において、ロシアを苛立たせたくないという思いがあるのだ。
紛争が続き、政情不安なシリアに敵対するイランがアサド政権を支援する名目でシリア国内に軍事拠点を建設、これがイスラエルへの攻撃拠点になるとして、シリアのイラン施設を攻撃している。
しかし、この時、危惧せねばならないのがロシアの存在である。
イランとロシアの拠点や人員が完全に分かれていればいいのですが、ロシアとイランは友好国であり、攻撃地点にロシア人が居ないとは限りませんし、誤ってロシア側の陣地を攻撃してしまう可能性も否定できない。
自分たちの攻撃でもし、ロシア側に被害を与えることになれば関係は悪化、シリア、イランへの攻撃も控えざる負えない。
そこで、イスラエルは攻撃前にロシア側に通知し、ロシア人の被害を出さないようにし、ロシア側も攻撃を認めています。もし、ウクライナにアイアンドームを売却すればこの協力関係が崩れることなる。
世界は複雑な関係があり、欲しい物があるからと言って簡単に購入することは出来ないのだ。
アイアンドームは、Counter-RAM に分類されるイスラエルの防空システムである。
ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズとイスラエル国防軍により共同開発された。
Counter-RAM として4キロメートル以上70キロメートル以内から発射される155mm砲弾、ロケット弾は元より、対空ミサイルとして10キロメートル以内のUAVや航空機、誘導爆弾に対する近接防空を担うことも考慮されている。
全天候型のシステムとして構築され、重要性の低い目標へ向かう攻撃を対象から除外することで、ミサイルの消費を押さえる事も可能とされている。
2008年の段階では、射程15キロメートルでロケット弾が飛来した場合、150平方キロメートルのエリアを防御可能であると考えられていた。
迎撃成功率は、2011年末で75 %、2012年3月には80 %、6月の段階で90 %とされている。
これは、迎撃を試みた目標に対するものであり、迎撃対象外とされたものについては分母に含まれない。
運用時には、同時に2発のミサイルが用いられている。
イスラエルは、度々ハマースやヒズボラなどによってロケット弾による攻撃を受けており、2006年のレバノン侵攻では、イスラエル北部に約4000発が打ち込まれ、イスラエル南部では2000年-2008年にかけて、ガザ地区から迫撃砲弾とロケット弾各4000発が撃ち込まれた。
2006年のイスラエル北部へのロケット弾攻撃では、市民33人以上が犠牲となり、軍人にも犠牲者を出している。
このため、イスラエルにとってはロケット弾が着弾する前に迎撃し、被害を未然に防ぐ防空システムの構築が急務であった。
2007年2月、アミール・ペレツ国防相はガザ地区からのカッサムや北部で使用される BM-21 などのロケット砲に対処可能なシステムをラファエル社に発注した。
2008年7月にはミサイルのテストに成功、2009年3月にはシステムの、7月にはロケット弾迎撃テストに成功した。
2009年8月よりイスラエル空軍に大隊規模の部隊が編成され、2010年7月には最終テストに成功した。
2011年3月には、ベエルシェバとアシュケロン近郊に最初の部隊が展開した。