ノルウェーのハルカバラの射撃場で対戦車/HE弾を放つ動画。
陸上自衛隊でも使われているカール・グスタフ84mm無反動砲。
戦車部隊でも装備しているが、戦車乗りは「無反動砲」「カール・グスタフ」等と呼んでいる。
これ同じ物を指して普通科では「ハチヨン」と呼んでいる。
カールグスタフ無反動砲は、スウェーデンで開発された口径84mmの無反動砲である。
名称の“カールグスタフ”は、生産に関わったCarl Gustafs stads gevärsfaktori社の名前に由来する。
現在はSAAB社が旧ボフォース社を買収して生まれたSAAB・ボフォース・ダイナミクス社が製造・販売している。
日本の陸上自衛隊ではカールグスタフM2を84mm無反動砲(84RR)として、カールグスタフM3を84mm無反動砲(B)として採用している。
戦車や装甲車、トーチカのように、歩兵部隊が保有する装備(小銃など)では破壊が難しい目標を攻撃する、高い破壊力を有する軽量の歩兵砲として、1946年よりスウェーデン軍王立陸軍兵器局(KAFT:Kungliga Armé Förvaltningen Tyg departement,)により開発された。
KAFTでは1942年にイギリスの発明家であり兵器開発者でもある、チャールズ・デニストン・バーニー卿(Charles Dennistoun Burney, 2nd Baronet を技術顧問に迎え、無反動砲の機構を持つ20mm口径の対戦車ライフルである“カールグスタフ Pvg m/42(Carl Gustaf Pansarvärnsgevär modell 1942:1942年型対戦車銃)”を開発した。
しかし、Pvg m/42は構造的な問題や威力不足(第2次世界大戦における戦車の装甲防御の進歩に対し、20mm口径の徹甲弾は威力において実用的なものとは見なせなくなっていた)といった観点から早急に後継が必要とされており、まずは37mmもしくは40mmに口径を拡大したものが構想されたが、成形炸薬弾の技術情報が入手されると、これを用いた弾頭を発射できるより大口径の無反動砲が要求された。
1964年より若干の軽量化と全長の短縮などの改良を加えたM2が実用化され、さらに1972年には、それまでの単眼式光学照準器を光学視差式距離計に射撃偏差計算装置を内蔵した"FFV550"に変更し、遠距離照準能力と対移動目標射撃能力を強化したモデルとしてM2-550が実用化された。
また、これらの砲の技術を応用して、同じく弾頭直径84mmの弾薬を使用する使い捨て式の対戦車擲弾発射器としてAT-4も開発された。
1991年には、砲身を砲鋼の鍛造から炭素繊維を用いた複合材料製の外筒に線条部分のみを鋼製の内筒としたものを組み合わせたものに変更し、その他の部品も大部分をアルミニウムや合成樹脂に変更して大幅な軽量化を実現し、重量を10kgとしたM3が実用化された。
これはスウェーデン軍において8.4cm擲弾発射機m/86(Granatgevär m/86, Grg m/86)として新たに制式化されたほか、アメリカ特殊作戦軍でもM3-MAAWS(Multi-Role Anti-Armor/Anti-Personnel Weapon System)として採用された。
なお、アメリカ軍では当初は第75レンジャー連隊で採用されたことから、"RAAWS"(Ranger Anti-Armor/Anti-Personnel Weapon System)と称されていた。
2014年には、砲身の素材をチタンと炭素繊維複合材を採用したものに変更し、砲尾噴射管のデザインを改良して全長を短縮化したM4が開発された。
これにより重量は6.8kgとM3より大幅に軽くなり、M2に比べると半分近い重量となった。
全長はM2に対して約13cm短縮されて99cmとなり、1mを切る長さにまで短縮された。
照準装置はドットサイト方式に変更され、オプション装着用のピカティニーレールが装備された。
この他、照準装置で捉えたデータを弾頭に直接入力する事が可能になり、積算発射数を記録するデジタルカウンターが備えられている他、外部装置による遠隔一括管理システムに対応しているなど、全体の“スマート化”が推進されている。
M4は2017年にM3E1として制式化され、実戦配備は2018年より始められた。
アメリカ陸軍においてもM3-MAAWSをこれに準じる形で改良したものが2017年に同じくM3E1の名称で採用され、海兵隊においてもMk 153 SMAWの後継として検討中である。
カールグスタフは、M1からM4までのシリーズを通して約40ヶ国に輸出された。
このうちイギリス海兵隊の装備砲(L14A1)は、フォークランド紛争の緒戦段階におけるグリトビケンの戦いに際し、アルゼンチン海軍のコルベット「ゲリコ」に対し命中弾を与え、これを中破させる戦果を挙げている。
しかし、開発以来半世紀を経て、カールグスタフの84mmという口径は対戦車兵器としては主力戦車を目標とするものとしてはやや威力不足であり、同じ無反動砲形式の対戦車火器としては、パンツァーファウスト3のように弾頭を外装式にして大型・大口径化し、高い貫通力を持たせた新世代の携行対戦車兵器が登場している。
本砲も口径を100mm台に拡大した発展形が構想されたことがあったが、個人で肩担するのが困難な重量となるために断念された。
1982年には外装式のロケット補助推進式大型弾頭(直径132mm)を用いて装甲貫通力をRHA換算で900mmに向上させた"FFV597"も開発されたが、装弾に時間がかかる上、装填時の総重量が重くなり過ぎるとして採用されずに終わっている。
対装甲兵器としては有効性が低下したとされたことから、ドイツやオーストリアではカールグスタフを照明弾を使った戦場照明機材として運用するようになり、名称も「照明弾発射筒(Leuchtbüchse)」へと変更された。
とはいえ、容易に多種多様の弾薬を運用できる点ではカールグスタフのような内部装弾式の携行火砲には大きな利点があり、度重なる改良によって大幅な軽量化と全長の短縮化がなされたこともあり、本砲も、前述のアメリカ軍や陸上自衛隊における例のように“携行対戦車兵器”から“携行多用途発射装置”へと分類を変更されて、今後もしばらくは世界各国で運用が継続されていく模様である。
個人運用可能な携行無反動砲であり、本体は砲身、グリップ、照準器、チークピース、肩当、脚、撃発装置、閉鎖器を兼ねた砲身後部ノズルからなる。
前方の砲口部にラッパ状の縁があるが、これは砲身の破損変形を防ぐための部品で、射撃時には外される。
発射方式は無尾栓型のクルップ式であり、弾薬底の破砕部が尾栓を兼ねる方式(砲自体には砲尾を完全に閉鎖する機構を持たない)で、特殊鋼製の砲身には24条右回りのライフリングが刻まれている。
使用弾薬は対戦車榴弾のHEAT 751(タンデム弾頭)、HEAT 551、多目的榴弾のHEDP 502、榴弾のHE 441B、照明弾のILLUM 545、発煙弾のSMOKE 469B、周辺防御用弾頭のADM 401といった多様な砲弾が用意されている。
対戦車榴弾にのみ、弾頭を加速させるため砲弾にロケットモーターと安定フィンが付属する。
雷管は薬莢の側面に配置され、装填の際に撃発装置との位置決めを行う必要があるため、薬莢底部のリム(起縁)には砲側の突起と噛み合わせるための切欠きが設けられている。
無反動砲という特性上、発射時には強力な後方爆風が発生するため、射手の後方に爆風を遮るものがないよう、発射する場所や環境には制限がある。
日本の陸上自衛隊では、カールグスタフM2を84mm無反動砲として採用しており、“84RR”の略号で呼ばれる。
部隊では通称として「ハチヨン」や単に「無反動」などと呼称されている。
通常は普通科小銃小隊1個班に1門を装備している。
本装備を使用する隊員は小銃ではなく9mm拳銃を携帯し、予備弾運搬手が随伴する。
使用可能弾種は榴弾、対戦車榴弾、照明弾、発煙弾の4種類があり、通常の砲弾以外に7.62mmNATO弾を使用できる訓練用アタッチメント(筒内砲)がある。
これは砲身内に砲弾の代わりに装填して空砲などを発射できるもので、演習で実弾のかわりに使用する。
それまで使用していた89mmロケットランチャー(バズーカ)に代わる歩兵携行用対戦車兵器として、1978年度予算の85門を端緒として調達を開始した。
当初は輸入による調達であったが、1984年からは豊和工業によるライセンス生産が開始された。
イラク人道復興支援活動で陸上自衛隊がイラクのサマーワに派遣された際には、宿営地に対する自動車突入などのテロ対策用小火器として持ち込まれている。
平成24年度からはカールグスタフM3の調達が開始され、平成24年度には多用途ガン表記で、平成25年度以降からは84mm無反動砲(B)表記で調達されている。
2016年度予算で30門が調達され、まず水陸機動団に配備後、第一空挺団へ優先配備される模様である。
調達価格は約1,000万円である。
旧式のうち、余剰となったものは特科・機甲・施設・後方支援部隊の自衛火器として管理替えされ、現在も第一線で使用されている。
レンジャーでも使われているが、リぺリング降下する時は重いので大変だった。
無反動砲だけでなく、その弾薬もあって重量は重くなるからね。
撃つ時は後ろに人がいないか警告してから撃つ。
「ハチヨン」と呼んでいる隊員と「無反動」と呼んでいる隊員で職種が解るので戦車好きは「無反動」と呼ぼうね。