2018年5月17日、福岡にある「福岡天狼院書店」がリニューアルオープンしました。
天狼院書店(以下、天狼院)は、東京池袋にある一号店の開店を皮切りに、地方都市も含め、現在も続々と開店しています。一つ一つのお店は、他の書店と比べてそう大きいとは言えませんが、それでも開店が続いている原動力は「ゼミ」の存在だと思います。
ゼミでは、まさに大学のゼミのように、さまざな事を学ぶ事が出来ます。しかも、その講師陣はプロとして第一線で活躍されている方が多く、その言葉の重みと説得力が尋常ではありません。
僕も、天狼院の人気ゼミである「ライティングゼミ」を一年間受講しましたが、その前と後では、ハッキリ自覚出来るほど変わりました。同時に、やればやるほど自分のレベルというものもわかり、あとからゼミを受講した方が、あっという間に追い抜いていく現実は、なかなか辛いものがありました。
そんな事もあり、次第に足が遠のきましたが、それでもSNSを通じて、どんな事をしているのか逐次情報は確認していました。
そんなある時、福岡天狼院がリニューアルするという情報が入ってきました。唐突という印象を受けましたが、天狼院のフットワークの軽さとお客様を驚かせようとするそのサービス精神ならありだな、と納得しました。
良い機会なので、ちょっと見てみたいという気持ちになり、行ってみる事にしました。本当ならリニューアルオープン当日に行きたかったのですが、時間の都合がつかなかったので、オープン後最初の週末に行く事にしました。
見慣れた階段を登り、入口のドアを開けて最初に感じたのは、「圧」でした。いま風に言うなら「プレッシャー」になるのだと思いますが、その場を覆っている雰囲気が僕の知っているものと違っていました。
以前にも感じてはいましたが、その「創作」に対する想いのレベルが上がっているように感じたのです。それは、単にリニューアルしてレイアウトを変えた、本のラインナップを変えた、というものではなく、何か根本的に違う気がしました。
その理由は、店内を見て回ってすぐにわかりました。
天狼院を利用しているお客様一人一人のモチベーションが高かったのです。たまたまだったのかもしれませんが、多くのお客様がパソコンを持ち込んで、難しい顔をしながら画面を見つめていました。カフェコーナーの利用なのですから、もう少しリラックスしても良いと思うのですが、そういったお客様は少数派だと感じました。そして、その集中力は非常に高いように思えました。
よく、図書館は勉強するのに最適だと言われます。それは、図書館という場所のルールとして、静かにしなければならない事から、集中しやすいのだと思います。
しかし、天狼院はそれと少し違う感じがしました。店内には音楽が流れ、壁には開放的な大きな窓があるからです。目の前には公園があり、僕が行った日にも、10人くらいの高校生たちが「オタ芸」の練習をしているのが見えました。
それでも集中出来るのは何かと考えてみたとき、「勉強に適している環境と、創作するのに適している環境は違うのではないか」と思いました。
勉強というのは、どちらかというと参考書などを読み込む「インプット」が主だと思います。一方、創作というのは自分の中にあるものを形にしていく「アウトプット」が多いと思います。さらに言うと、行き詰まりや問題にぶつかった場合には適切な「インプット」も必要になります。それには静か過ぎるよりもむしろ、心地よい「ノイズ」があった方が良いのではないかと考えました。
さらに、自分の周りで同じように頑張っている人の姿を見ると、「自分も負けていられない」と奮い立つのではないでしょうか。
人は環境に左右されやすいと聞いた事がありますが、一番わかりやすい例は「食事」だと思います。まったく同じ料理でも、盛り付け方ひとつで、美味しそうに見えたり不味そうに見えたりします。
盛り付ける皿にしても、その料理に合っているかが重要です。ラーメンどんぶりにシチューが盛り付けられていたら、美味しそうに見えるでしょうか。ステーキ皿に刺身を盛り付けても、色味が悪くなって美味しくなさそうです。
また、同じ料理を食べるにしても、部屋の内装によって感じ方が変わります。ラーメンを食べるのにフレンチレストランでは違和感がありますし、その逆も然りです。変わり種としてそういった事を狙ったお店もありますが、それはごく一部であり、基本的にはその料理に合った内装にするかと思います。
盛り付けにしても内装にしても、それらは全て、料理を最も美味しく感じるようにするための「空間演出」と言えます。そして、天狼院は創作するための空間演出が凄いのではないかと思います。
通常営業の時は、スタッフもお店の席に座って、パソコンに向かい作業をしています。スタッフの方はライターでもあるので、きっと記事も書いていることでしょう。そういう場所ですから、来店したお客様はスタッフの「創作オーラ」を感じ取り、作業場に選ぶのだと思います。そんな人たちが集まってくれば、大きな輪となり、自然と環境も整います。
そして、天狼院に足を踏み入れば集中力が湧き出てくる。それは人気マンガ「ドラゴンボール」に登場した「精神と時の部屋」のような環境になったのだと思います。精神と時の部屋は、中に入ると外界よりも時間の流れが早くなり、1日で1年(365日)分に相当する時間を過ごす事ができます。
つまり、それだけ集中出来る事になり、1分で10分の作業が出来るような濃縮された時間を過ごせるのではないかと思います。
そんな福岡天狼院は「STYLE for Me」をコンセプトに生まれ変わったわけですが、これまで以上に「創作空間」として最適化されたのだと思います。そして、これから天狼院を起点に、さらに面白い事が起こりそうな予感がします。
