今年も暑い夏がやってきた。まだ梅雨明け宣言はされていないが、福岡の夏の風物詩である「博多祇園山笠」が終わった事で、本格的に夏がやってきたと認識している。
それを裏付けるかのように、日中の室内温度は35℃付近まで上昇し、夜になっても30℃を下回る事はない。エアコンがないと、熱中症で倒れるのも時間の問題という環境だ。
横浜から福岡に引っ越してきたのは2011年なので、福岡での夏は今年で7回目となる。しかし、こればかりは慣れそうにない。
暑さが厳しく、暑いというより痛いという感覚だ。博多駅や経済の中心地である天神では、地下街(地下道)が発達したが、この暑さを避けるために考案されたのだろうと思っている。都心部の徒歩による移動は、地下街を使わない手はない。やはり昔の人は偉大だ。
そんな暑い夏を今年も迎えたわけだが、この夏はこれまでとはちょっと違う。いや、大きく違うといって良いだろう。
いま、オレの隣では「トド」が、いや、「トドのような女性(ヒト)」が寝ている。
出会ったのはちょうど一年前の夏だったのだが、ある婚活パーティーで知り合った。
当時、オレは独身貴族を満喫しており、ローカルアイドルにハマっていた。ライブに行ってはお目当のアイドル(推しメン)に声援を送ったり、「MIX(ミックス)」と呼ばれるコールを、声が枯れるまで張り上げていた。しかし、オレがどんなに声を張り上げて応援しても、推しメンはいつか卒業してしまう。アイドルをやめた瞬間、全くの他人同士になってしまう。これまで、そんなアイドルを何人も見送ってきた。
その都度、違うアイドルを推し直すのだが、オレも40歳を過ぎた。若い娘を応援しているのは、エネルギーをもらっているようでそれはそれで楽しいが、もう少し自分の人生と向き合わなければならないと、遅まきながら思った。
そこで、手頃な婚活パーティーをネットで調べて参加してみたところ、うまい具合にマッチングしたのが彼女というわけだ。
そこで連絡先を交換し、その後正式に会い始めたのだが、最初の印象は良くなかった。とにかく、性格が男勝りで気が強いのだ。さらには酒が大好きで、最初の待ち合わせ場所が、いきなり居酒屋だった。一緒にいると、どちらが男なのかわからなくなりそうなほどだった。しかし、オレとしてもあまり気を使う必要がなかったので、ほとんど「呑み仲間」という感覚で付き合っていた。
それが心地よくて呑み会を繰り返し、会う事も頻繁になった。しかし、居酒屋で呑んでいるとお金もかかるので、思い切ってオレの家で呑む事を提案してみたところ、アッサリと了解をもらってしまった。
その後は、朝まで呑む事も多くなり、彼女が家に泊まる事も頻繁になった。それだけ濃厚な時間を過ごしたわけだが、その中で、彼女がなぜ酒が好きになったのかがわかった。
彼女には寝たきりの母親がいたのだ。
介護を必要とし、昼間の短い時間なら仕事も出来たが、正社員のような長時間労働&残業は不可能だった。そのため、アルバイトやパートを繰り返し、介護を続けていた。
父親は仕事で帰りも遅く、とても介護を出来る状態ではなかった。結果、彼女は長い時間家を空ける事が出来ず、楽しみと言えば呑む事しかなかった。
そんな彼女の母親も昨年亡くなり、これからの事を考えて婚活パーティーに参加したのだそうだ。
今日は彼女も仕事が休みという事で、まるでトドのように寝ているが、これまでの疲労と苦労を考えれば、これで疲れが取れるとは思わない。
しかし、少しづつでも回復して欲しいし、その手助けが出来るなら本望だ。
さて、「となりのトド」が起きたら、彼女の家に挨拶に行くとしますか。
