ある日、家電量販店に行ったら、パソコンにおいて女性が歌っているデモが流れていました。何かの音楽再生ソフトの販促かと思っていたのですが、画面にはイラストの女性キャラが表示されていました。
見た目の年齢は16歳くらいで、髪の色は黄緑といったら良いのでしょうか。ツインテールで元気の良さそうな女の子でした。何でこんなのデモしているんだろうと思ったのですが、その後、理由が判明しました。
「初音ミク」
パソコンで歌っていた女性ボーカルの名前です。彼女は「ボーカロイド」と呼ばれており、誤解を恐れずに言うならば、音階とセリフを入れてやれば、その通りに喋ってくれる、この場合は歌ってくれるというソフトです。ジャンルとしてはデスクトップミュージック(DTM)と呼ばれ、簡単に言えばパソコンで作曲しようというものです。これには、電子機器をつないで演奏する事も含まれます。
そのDTMの中で初音ミクは、異例の売れ方をしているという事で紹介されていました。そこには、家電量販店で見たキャラクターの絵も紹介されていたので、気が付く事が出来ました。
思い出してみると、そこで流れていた曲は、初期の名曲「みくみくにしてあげる」でした。改めて聞くと不自然な箇所もありますが、その時は本当に女性が歌っていると思うほど、自然に聞こえました。
このソフトの登場により、多くの人たちが曲を発表し始めました。その曲数は、本当に星の数と言って良いと思いますし、今も現在進行形で増え続けています。この事を知った当時、J-POPやアイドルには興味がなかったので、「ボーカロイドがいれば、もう歌手はいらないじゃん」と思いました。その時すでに名曲も数多く誕生しており、僕自身も随分ネットで視聴しました。とにかく、曲がアップされるスピードと数が圧倒的だったので、見ていて全く飽きませんでした。
さらには、実在のアーティストのようにライブを開催し、多くの会場で絶賛されてきました。しかし、僕もこれはこれでありだと思いますが、現在はさすがにアーティストやアイドルの代わりにはまだならないかな、と思います。
しかし、技術の進歩はめざましいものがあります。先日ネットを見ていたら、とんでもない画像が出てきました。女子高生らしき女の子の写真だったのですが、詳細を読んでみると、それはフルCGだと言うのです。
彼女の名前は「Saya」。どこからどう見ても、実在する女の子としか思えないレベルです。人間は、自分たちに似せて作られれば作られるほど見る目が厳しくなり、不気味、もしくは不自然に感じるそうです。しかし、Sayaはその壁を明らかに越えているように感じました。
それを見た時、初音ミクの事を思い出しました。現在は世界中でAI(人工知能)の研究が行われています。恐らく、人と会話が出来るレベルに達するのもそう遠くない将来だと思います。もし、Sayaが完全リアルタイムCGになり、AIを搭載したら、アイドルのように振る舞えるのではないかと思いました。しかも、自分好みにカスタマイズ出来るので、見た目や性格も思いのままです。さらにVRを使用すれば、その没入感は想像するだけで凄いものになると思います。
アイドルの本来の意味は「偶像」です。今、アイドルとして活躍している人たちも、やはり「アイドルとしての自分」を見て欲しいと思っているのではないでしょうか。それは、素の自分を見て欲しいというわけではなく、レッスンにおいて蓄積された、歌唱力やダンスをライブなどで見て欲しいのだと思います。
同時に、アイドルは不可侵の存在でもあると思います。ローカルアイドルは、その身近な存在であるが故に、ライブで行われる物販に参加すれば交流出来るのが魅力です。それでも、アイドルとファンという立場で交流しているのであって、友達として知り合うわけではありません。
さらにメジャーアイドルともなると、基本的にはステージという大きくて高い壁が、ファンとの境界線を作っています。AKBのように握手会をしているところもありますが、時間が短くお金もかかります。そういう意味で、多くのアイドルは近づけない存在だと思います。
しかしそれは、二次元も同じ事が言えるのではないでしょうか。画面上ではどんなに近づいても、触れる事は出来ません。完全な不可侵な存在といえます。
技術の進歩は、デジタルの偶像を作りつつあります。生身と二次元の境目がだんだん曖昧になりつつある中で、アイドルはどこに向かうのでしょうか。そして、アイドルファンにも、究極の選択を突きつけられる日が来るのかもしれません。
「二次元のアイドルが好きですか。それとも、三次元のアイドルが好きですか」
