2015年12月より天狼院書店「ライティング・ゼミ」を受講しておりましたが、今月末(2016年11月)で丸一年となります。これまで課題を毎週1回提出してきましたが、記事を落とした事は一度もありません。それは僕にとって小さな誇りです。
これまで3期(1期あたり4ヶ月)を受講してきましたが、レベルアップ出来たのかというと、自信がないのも事実です。先生に認められればWEBに掲載されますが、各期でその掲載率が5割を超えることはありませんでした。
しかし、一年という区切りとなる今月については、その集大成として評価がどうであったかに関わらず、掲載されなかった記事をブログにアップしたいと思います。どうぞ、よろしくお願い致します。
タイトル:チャンスは常識の向こう側
先日、ネットを見ていたら奇妙な単語を発見した。
「発声可能上映」
発声可能?
普通、映画は静かに黙って観るものだ。よく上映前に「上映中のおしゃべりはご遠慮下さい」など、他のお客の観賞の邪魔にならないように注意書きが流れるほどだ。実際、映画館で騒がれると迷惑極まりない。
その中で一番困るのは、カップルで観に来ているお客だ。二人の世界に入っているなら別に良いのだが、問題は彼氏が初見ではない場合だ。観ている最中に、要所要所で彼女に説明してくれるのだ。
「これは、こんな意図があってるセリフなんだよ」
「このあとね、こんなすごいドラマチックな展開になるんだよ」
こういう時に限って、とてもわかりやすく解説してくれる。
「だから、そのドラマチックな展開をこっちは観にきているんだよ。先に言ってくれるな」
まさに、大声で叫びたくなってくる。楽しみにしていたスポーツを録画していて、結果を聞かないように頑張って帰ってきたのに、家族から真っ先に結果だけを知らされた心境だ。だから、映画と発声は明らかに相性が悪い。
どういう事かと思い、もう少し記事を読み進めてみると、それは全国25館でイベント的に行われたようだ。そして、その作品名は「シン・ゴジラ」である。もう説明は必要ないと思うが、言わずと知れたゴジラ映画の最新作である。最初はあまり注目されていなかったものの、口コミやネットの書き込みなどで「かなり面白い」と評判になり、ヒットを飛ばした。
この発声可能上映では、シン・ゴジラを観ながら、声援や驚きを声に出そうというのだ。発声可能上映を実施するにあたり、映画館の外には「巨大不明生物映画のより楽しい観賞を目的とする発声可能を主軸とした作戦要項」と題した説明書きが貼り出されていた。すでに悪のり全開といった感じでり、総監督を務めた「庵野秀明」氏の代表作である「エヴァンゲリオン」風の書き方で、何だか見ているだけでテンションが上がる。また、応援が出来るという事で、サイリュームの持ち込み可、コスプレ可という映画鑑賞にはほど遠い事も出来たようだ。
発声可能上映がどんな様子だったのか、動画でもダイジェストで見る事が出来たが、本当にみんな発声していた。人物が登場するとその人の名前を叫んだり、有名なセリフのことろでは一緒に発声していた。さらには劇中で偉い人から命令されると「はーい」と答えるなど、まさにライブで映画の世界を楽しんでいるように見えた。
似たような光景が以前あったと思い記憶を辿ってみると、思い出す事が出来た。「矢口史靖」氏の「スウィングガールズ」だ。
この作品を勝手にかつアバウトに要約すると、高校生同士でジャズバンドを結成し、最後には音楽祭に出場する、という内容だ。そして、最後の音楽祭のシーンはクライマックスになるのだが、いつの頃からか、映画館の観客が立ち上がって手拍子するようになった。さすがに公開された当初は静かに普通に観ていたのだが、人気があった事からリバイバル上映がされるようになると、そういった現象が起き始めた。この時は発声する事もなく、ただ立ち上がって手拍子をするだけだったのだが、映画館として「最後のシーンで立って手拍子」という行為に対して、公式には許可はしていなかった。だが、ダメとも言われなかった。ある意味、まだユルい時代だったのかもしれない。
僕は基本的に、映画館では一度しか観ないのだが、スウィングガールズに関しては何度も観に行った。現在においても、同じ作品を何度も映画館で観たのはこの作品だけだ。良くてもDVDを購入して観る程度だ。
このシン・ゴジラでは、その現象をさらに進化させたように思えた。面白い、好きになった作品を何度も観たいというのはわかるが、さらに進めて「体感」「観客同士の共感」という新しい価値、エンターテイメントを示したのではないだろうか。
最近、映画館でライブを生配信する「ライブビューイング」というサービスが始まっている。これは、ライブ会場が遠くて行けない人や、チケットを取ろうとしたけれど取れなかった人たちへのサービスだ。ライブ会場と映画館をリアルタイムに結んで、あたかもその場にいるような体感をする事が出来る。僕はまだ行った事がないが、実際に体験した知人の話しでは「感動した、まだ興奮している」と言っていた。直接ライブ会場に行けなくても充分盛り上がれる事を証明しているのではないだろうか。実際、ライブビューイングは好調のようで、これから先も継続して行われるようだ。
家でネット配信による映画やライブの視聴が来出るようになった一方で、ライブ会場独特の雰囲気が大好き、という人も多いのではないだろうか。映画館を活用した、全く新しいエンターテイメントが生まれのではないか、という予感がする。「発声可能上映」は、これまでの映画観賞の常識を打ち破った、新しいサービスだと思う。
