僕は、宿泊が伴う旅行の場合はほとんど「カプセルホテル」を利用しています。山間部や田舎の方など、根本的に施設がない場合はどうしようもありませんが、いわゆる「都市観光」と呼ばれる旅行の場合は、優先的に選んでいます。
以前はビジネスホテルを利用していました。初めて利用したのは仕事で出張した時だったのですが、その時は緊張しました。覚えている限りですが、回数は少ないものの、家族で旅行に行った時には親が宿の手配をしてくれました。その場合はもちろん普通のホテルでしたので、それまでにビジネスホテル自体に宿泊した事がありませんでした。
そのため、チェックインした後、外出する時にはどうしたら良いのかすらわかりません。鍵は持っていて良いのか、預けなければならないのか。朝食は部屋着(浴衣)のままで良いのか、私服に着替えなければならないのか。いま考えると笑い話でしかありませんが、誰も教えてくれませんから、部屋の中でどうしたら良いのか悩んだ事を覚えています。
回数を重ねるうちに、最初は電話で予約をしていたものが、いつの間にかネットで予約をするようになっていました。早ければ「ネット限定早割り」なんていうのもあったりして、とても便利になったと思いました。
ある時、急遽宿泊しなければならなくなったのですが、その時すでに、22時をまわっていました。近場にあったビジネスホテルを片っ端からあたってみたのですが、時すでに遅く、どこも満室でした。冷静に考えれば、ネットカフェに行くという手段もあったのでしょうが、その時は焦っていたので、どうしたものかと途方にくれました。周囲を改めて見回してみた時、たまたま目に入ったのがカプセルホテルでした。飛び込みで入ったものの運良く空きがあり、何とか一夜を過ごす事が出来ました。そこで、初めてカプセルホテルを利用したのですが、寝床があるというだけでとても安心出来たことを覚えています。そこは設備も充実していて、サウナだけの利用も出来るところでした。宿泊ですから全ての設備が利用でき、大浴場でその日の疲れを洗い流しました。
カプセルホテルを利用してみてわかったのは、ビジネスホテルに比べて値段が安いこと。そして、部屋(?)の確保がしやすいことでした。福岡は顕著なのですが、最近は外国人観光客が多くなっている事から、宿の確保が難しくなっています。実は、カプセルホテルも難しくなりつつあるのですが、ビジネスホテルに比べれば段違いに取りやすいです。
そこで味をしめて以来、カプセルホテルを利用しています。カプセルホテルを利用した事がない人も少なくないと思いますが、いわゆるパーソナルスペースというのは寝床しかありません。写真で見た事があると思いますが、「土管」みたいなものです。その土管が上下左右に連結されて、広い部屋に置かれています。そして、そのパーソナルスペースの中には、携帯電話などの充電が出来るコンセント(場所によっては有料の充電器の場合あり)とライト、アラーム付きの時計、テレビがあります。設備が新しいところでは、液晶モニターの場合もありますが、僕の経験ではまだまだブラウン管が主役です。そのため、天井部からテレビ分のスペースがせり出しており、中に入る時によく頭をぶつけます。奥まで行けば正座出来るぐらいのスペースはありますが、かなり狭いといえます。しかし、都市観光をする場合には、ホテルは基本的に寝にしか戻りませんので、これで充分です。
個人の持ち物は、別の場所にロッカーが準備されていますので、そこに入れます。チェックインした時に渡される鍵は、ロッカーの鍵です。寝床に鍵はありませんので、必然的に貴重品はロッカー、もしくはフロントに預ける事になります。
このカプセルホテルのシステムというのは日本独自のもで、海外にはないそうです。海外メディアが日本を紹介する時に、「回転寿司」と並んでカプセルホテルも紹介しているのを見ました。
そこでふと思い出した事があります。修行僧に密着したドキュメント番組だったのてすが、ある1日を取材していました。日中は清掃や座禅、お経を読んだり、さらには山に食材を探しに行って食事の準備をするなど、いわゆる修行をしていました。そして最後に就寝するのですが、寝るスペースとして許されているのはたたみ一畳でした。要するに、修行僧のパーソナルスペースとは、このたたみ一畳という事になります。それは同時に、人が生きていくために必要最小限のスペースである事を意味します。
僕には、それはカプセルホテルの考え方に通じるのではないかと思いました。人は、たたみ一畳さえあれば生きていけるのだと。もう少し考え方を広げてみると、日本人は狭い空間の使い方がうまいのではないかと思います。軽自動がその代表例です。
そういう意味では、携帯ゲーム機も同じ事が言えると思います。いまの携帯ゲーム機は、驚くほど高性能になりました。ひと昔前の最新術でつくられたものが、いまでは手のひらの上で楽しむ事が出来ます。それはやはり、たたみ一畳で実現出来る世界といえます。スマホやタブレットなら、さらに出来る事は増えます。この小宇宙に何を持ち込むのか。可能性は無限に広がりますが、必要なものをシンプルに追求していくと、案外少ないのかもしれません。
