Facebookを見ていたら、「この日の思い出を見る」が表示されていた。そこには、自分の中で絶対に忘れられない、運命の出会いをしたアニメのパッケージ写真があった。
2年前の2014年11月4日。アニメ「Wake Up,Girls!」のBlu-rayを購入したと書かれていた。「Wake Up,Girls!」と出会ったのは、アニソンバーだった。店内にはモニターが設置されていたが、カラオケと連動している事から、歌う時にはその画面を見ながら歌う。しかし、カラオケで使用されていない時は、お役御免と言わんばかりにモニターは暇を持て余す事になる。その暇な時を利用して、アニメやライブの映像を流していた。
普段はキャストの娘が話し相手をしてくれるので良いのだが、混んでいる時にはそういうわけにはいかない。カウンターに座ってひとりの時間を満喫する事になるのだが、そんな時ふと、モニターの方を見てしまう。アニメは好きな方だが、この頃はあまり見ていなかったので知らない作品が多かった。アニメを流すといっても、本編というよりはオープニングやエンディングを編集したもので、アニソンが絶えない環境であった。その辺は、アニソンバーらしいと言える。
その時に流れていた曲の一つに「Wake Up,Girls!」のテーマ曲「タチアガレ!」があった。絵としては今風の「萌え」色は強くなく、どちらかというと地味な印象だった。しかし、曲が流れるとモニターに集中してしまった。ちょっと暗い感じだったのだか、自分の中で惹かれるものがあった。アニメの曲は、どちらかと言うと元気をくれるような明るい曲調のものが多いので、何となく物悲しい感じの「タチアガレ!」は違和感があった。その時は気付かなかったが、その違和感こそが好きになった理由だと思う。
その後もアニソンバーに通い続けるうちに「タチアガレ!」を何度も聞く事になったのだが、だんだん本編を見たい衝動に駆られた。しかし、この時は作品名も知らなかったので、モニターに映像が流れるのを待って、キャストの娘に聞いた。
そして、その情報をもとにレンタルDVD店に行った。すると、すでにレンタルは開始されていたのだが、困った事が起きた。テレビ版の他に劇場版があるのだ。そこまでは知らなかったので、どちらを借りたら良いか迷ってしまった。アニメの場合よくあるのは、テレビ版を放送してから総集編という形で劇場版を出すパターンだ。今回もそれかと思い、まずは劇場版を借りてみる事にした。
ストーリーを要約すると、メインとなる娘は、実は人気絶頂のアイドルグループの元センターだった。(AKB48を想像すれば理解しやすいと思う)しかし、現在は母親の実家がある仙台に引っ越している。そんな時、地元の芸能事務所がアイドルを立ち上げようとしており、たまたまスカウトマンが彼女を見つけた事から、再びアイドルグループに入る事を決意する、といった感じだ。
作品を見てからわかったのだが、劇場版は時間軸としてテレビ版の前にあたる。つまり、プロローグだ。だが、僕にとっては大当たりだった。一番最後にライブシーンがあるのだが、ここで「タチアガレ!」を歌ったのだ。1番を歌い終わったところでカメラはフェードアウトし、そのままエンディングへと突入した。アニソンバーでは1番しか聞いた事がなかったので、この時初めてフルコーラスを聞いた。
その後、ライブシーンからエンディング部分だけを何度も繰り返し聞き、飽きてきたら本編を見るという事を、レンタル期限ギリギリまでやった。それでも飽き足らず、ついにBlu-rayを購入してしまった。やる事はレンタルした時と全く同じで、家にいる時はとりあえず流していた。
さらにもう一つ、自分の中で大きな変化があった。カラオケで「タチアガレ!」を歌いたくなったのだ。実はそれまで、カラオケは好きではなかった。今でもそうだが、歌は上手くないので、他の人に聞かれたくないという思いがあったからだ。しかし、「タチアガレ!」はどうしても歌いたくなったのでどうしようかと思っていた時に、ふと気がついた。ひとりで行けば良いのだと。
昔は、カラオケにひとりで行くのはとても勇気が必要な事だったが、その時ちょうど「ひとカラ」が流行り始めていた。チラシで見たのだが、ひとカラ専用の部屋もあり、そこにはミキサーや録音機材などもあって、かなり本格的だった。これなら行けそうと思い、近くのカラオケ店に行き始め、現在はホームグラウンドになっている。さらに運が良かったのは、アニソンバーの社長も「タチアガレ!」が好きだった事だ。覚えたての頃は、ずいぶんデュエットしてもらった。
その後、テレビ版を全て視聴し、続編として作られた「Wake Up,Girls!2 前後編」を「前売り券」を買って「映画館」で見た。気が付いたら、どっぷりサブカルチャーの世界に入り込んでいた。かつてアニメが好きだった頃の感覚が戻っていた。いや、明らかに以前よりもパワーアップしている。
ついに、もともと持っていた気質が目を覚ました。自分の足で立ち上がり、歩むべき新しく拓けた道が示された。きっと、迷わず進めると思う。「Wake Up,Girls!」との出会いが、今の自分を作ったと言い切れる。
