最近、個人鑑定で来た女性に、こんな方がいました。
彼女は、夫が亡くなって、五千万円の生命保険金が支払われたというのです。そして、その保険金を利用して、生前、ご主人が会社経営で残していた借金とその利子の返済にあてるとともに、さらに新しい投資の元手として使ったそうです。
たしかに、理屈としては筋が通っています。もともとご主人が掛けていたお金に基づいて支払われた保険金ですから、それを相続した奥さんがそれをどう使おうが、人にとやかくいわれる筋合いはありません。
ところが、彼女の家族はその後、次々と不幸に襲われたのです。まず、その奥さん自身が交通事故に遭いました。それも、相手の車が無保険車で、全治二か月の重傷を負ったにもかかわらず、結局、その治療費は全額、自分持ちでした。相手がまだ大学生だったために、まだ支払い能力がないというのがその理由でした。もちろん、その大学生は故郷に両親がいたのですが、両親にはまったくそんな余裕はなく、泣き寝入りせざるをえなかったのです。
次に起こったのが、息子さんの駆け落ちでした。相手はキャバクラのホステスだったそうですが、家から現金と預金通帳を持ち出したまま、いまだに行方がわからないというのです。
そして、最終的には、亡くなった夫が残してくれた会社も倒産してしまいました。しかも、倒産しかかってからわかったのですが、自宅の土地・建物が高利貸しの担保に取られていたのです。
亡くなった直後に財産と借金は全部整理したはずだったのですが、その高利貸しからの借金については、社員もそのことを知らず、社長であったご主人の独断で借りていたということでした。その結果、自宅までも差し押さえられてしまい、親戚の家に身を寄せるほかなくなったというときに、私のところに来たのでした。
私は、この話を聞いて思いました。生命保険金というのは、いわば自分のいちばん大事な人の生命を“犠牲”にして得たお金です。そのお金は、やはり亡くなった人の供養のために使うのがいちばんなのです。そのお金で立派な仏壇を買ったり、あるいはお墓をきちんと建て替えたりといった使い方をすれば、こんな悲惨なことは起こらずにすんだに違いありません。
その奥さんはそうしたことを忘れ、ご主人の遺志に反して、事業に注ぎ込んだり、あるいは子供に持ち逃げされたりしたため、結局スッテンテンになってしまいました。これは、恐らく亡くなったご主人の怨念というか、成仏できない苦しみの一念が現れたに違いないのです。
こうした場合、「因果の法則」は、前にご紹介した場合とは若干異なり、二代目の子孫に出てきたりはしません。即時に、つまり残された奥さんやお子さんに、ズバリ出てくるのです。それも、怨念のエネルギーが一度に爆発しますから、この例のように、はっきりとした形で不幸が襲ってくるというわけです。