グラーハが楽しい
リースリングを飲んでいて常々思うのは、「美味しい」と「楽しい」は似ているようで違うという事。
昔は前者を追い求めていたが、最近は専ら後者に重きを置いて手当たり次第にボトルを消費しているように思う。
もちろん美味しければ楽しい訳だが、中には美味しいけれど退屈なものもあるし
楽しくても美味しいとは限らないのがややこしいところ。解るようで解り難い抽象的な話なのだが。
で、どんなのが楽しいリースリングなのかと言うと、それは個性的であったり土地の味がよく出ていたりするもの。
ベタな表現になるが、やっぱりテロワールのしっかり感じられるものが五感を刺激してくれて最高に楽しい。
そういう意味では土壌の多彩なプファルツやナーエは判り易いが、粘板岩一辺倒のモーゼルは少々判り辛い。
モーゼルの銘醸畑なんて、ヴィンテージによる味の傾向を差し引くと、確かにどれを飲んでも似たようなものだ
...物知り顔にそう嘯いていた、つい最近までは。
それが今まで手当たり次第に飲み散らかして来た経験の賜物か
ようやくその微妙な違いを、時々ではあるが感じ取れるようになって来た気がする。
その意味ではまだまだ修行は始まったばかり。中でも一番判り易いのはグラーハじゃないかと思っている。
グラーハと言えばヴィリー・シェーファー。今夜は2016年産のグラーハー・リースリング・トロッケンを。
スクリューキャップ。外観は僅かに緑色がかった薄いレモンイエロー。注いだグラス壁には疎らに細かい気泡。
香りは閉じていて、僅かに蜜蝋や鉱物、そして辛うじて淡い果実が香るのみ。もうそんな時期なんだなぁ。
口当たりはスマートな果実味とほんのりとした軽い甘み、伸びの良い爽やかな酸、
そして重心真ん中やや低めの焦げ臭いミネラル味のバランスが良い。
それでいて抜けの良い、水捌けの良い土壌を思わせる味わいはなるほどグラーハの急斜面を思い起こさせる。
4日前に開けたキュンストラーのホッホハイマー・ヘレとは対照的なテロワール感である。
翌日・翌々日は、力強い酸が主体の直線的で骨太な味わい。オルツヴァインにしてはなかなか説得力あり。
シェーファーのこの裾モノ辛口って、ここ数年凄く良くなって来ていると感じるんだけど、造り手がどうこうと言うより
飲み手側の味覚がこの土地の味にピントが合って来つつある、って事なのかもしれないな。85/100
(過去のヴィンテージ→2015年産、2014年産、2011年産、2010年産、2009年産)
2016 Graacher Riesling Qualitaetswein trocken
Weingut Willi Schaefer (Graach/Mosel)
A P Nr 2 583 154 06 17,Alc 11.5%vol,10.00€