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趣郡猡胜啡イ盲矿婏棨辘纫痪wで、高比古に、過去に戻る気はないんだ)

 それに気づくなり、狭霧は彼とのちがいを思い知ってしまった。

(わたしは、高比古みたいにできない――。高比古みたいに、すべてを変えていけるほどの強い意思がないもの)

 しだいに、胸元に忍ばせた大切なお守りが重くなっていく。それは、捨てられそうにない過去への想いだ。

 高比古はそれを「捨てなくてもいい。大事にしてやれ」といってくれたが、そんなふうに過去を想うことのない人から慰められたのだと気づくなり、憂鬱になった。

 それから、思った。

 高比古は相手が誰だろうが、ひとたびそうと感じれば手厳しく文句をいう人だ。でも、実は、まずいことをしはしないかと彼が誰よりも動向を見張って、厳しく律している相手は、きっと彼自身だ。

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6章、窺見と刺客 (1)



  翌朝、笠沙(かささ)の山宮にたどりついたばかりの一行は、同じ山道をくだって港を目指した。

 まだ身体の調子がよくないのか、狭霧の頭の疼きはその日もとれなかった。

 火悉海は狭霧を気遣ったが、昨日までの彼とはいくらか態度が変わっていた。

「本当に一人で歩けるのか。まだ本調子じゃないんだろう。無理しなくていいんだぞ」

 狭霧のそばに寄るだけで照れ臭がることはなくなり、そのぶんいっそう頼もしく狭霧の身を案じた。

「狭霧って、見かけによらず頑固で、負けず嫌いだよな。大国主譲りなのかな」
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 くすりと笑った彼は、無理に狭霧をおぶって運ぼうとか、そういう提案をすることもなかった。大人びた微笑を浮かべると、狭霧のそばに鹿夜(かや)を歩かせた。

「狭霧を助けてやってくれ。後ろには高比古もいるし、何人かは付き添わせるから」

 鹿夜と従者に狭霧の世話を任せると、自分は肩で風を切って列の先頭へ向かう。身を翻したときに風にたなびいた腕飾りの染め紐や、堂々とした背中は、若王の名に恥じなかった。
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 鹿夜は目をしばたかせた。

「あいつ、どうしちゃったの? ねえ、狭霧。昨日、火悉海となにかあった?」

「なにって……なにもありませんが……」

 ぽかんとしてそう答えるほど、なにかが起きた気は狭霧になかった。

 昨日の、火悉海の真剣な眼差しはよく覚えていた。その目で狭霧を見つめながら、彼がいった言葉も。

『いいよ。伝えたいことは話したから。……狭霧、俺とのこと、すこし考えてよ。どうして狭霧が迷っているのか、俺も考えるからさ……』

(火悉海様が伝えたいことは、本当に全部聞いたのかな――。火悉海様とのことを、わたしは考えなくちゃならないのかな――)

 なぜそんなことを考えなくてはならないのか、狭霧はまだわからなかった。

(火悉海様のことは、優しくて面白くて、立派な人だって憧れるけれど――。憧れるだけじゃ駄目なのかな。夫になるかもしれない相手として見なくちゃいけないのかな)

 狭霧は、高比古の唸るような声も思い出した。

『そうしないと、切り札にさせられるんだぞ? あんたは、あんたの大事な王子と同じ身の上になるかもしれないんだぞ。あの王子がそんなものを望むと思うか。あんたはそれでもいいのか』

 高比古は狭霧へ、彼の主、彦名と、狭霧の祖父、須佐乃男の意図をひそかに知らせた。

 そして、主の思惑を見て見ぬふりをしてまで、阿多へ逃げるようにいった。それが「狭霧は永遠に出雲におく」と明言した父、大国主に逆らうことだとも、彼はじゅうぶんに理解していた。

 高比古が突きつけた選択肢は、二つ。いや、三つあった。

 一つは、彦名と須佐乃男の思惑通りに、和睦の駒として大和に嫁ぐ日を待つこと。

 一つは、それ