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たし、自分がすべきこととは違うとも思った。

(わたしは、目の前のことを真剣にやるだけよ。炊事の手伝いならそれを、土いじりならそれを――。特別な力なんかないわたしにはこれくらいしかできないのに。のんびりしているわけにはいかないもの。下働きだろうが、動いていなくちゃ)

 その朝、狭霧は、粥を炊く大鍋のそばに立っていて、兵の一人一人へ器を渡す役目を負っていた。

「どうぞ」

 にこりと笑って手渡すと、目が合った兵は、照れ臭そうに頬を赤らめる。

「ひ、姫様の手から飯をいただけるなんて……」

 兵を従える立場にある武人たちのもとへは、従者の役目にある者が、すでに粥を運んでいるので、飯にありつこうと大鍋の前で列をつくるのは、位の低い兵ばかりだ。勇ましく身を飾る鎧兜を脱いでしまうと、彼らの身なりはとても簡素で、髭が伸び放題の人もいれば、髪がぼさぼさの人もいる。

 頬を緩ませる兵たちへ、狭霧の隣で給仕をする男は、ちくりといった。

「申し訳ないと思うなら、姫様から役目を代わったらどうなんだ?」http://www.ctzschool.com


 が、すぐさま兵の列から不満の声があがる。

「ええ? 嫌だ! おれだって姫様から飯をもらいたい!」

「そうだそうだ、姫様から手渡されるだけで飯がうまくなるんだ。ささやかな幸せを奪うようなことをいうな!」

 ただ、器を配る手伝いをしているだけなのに――。褒めそやされてしまうと、狭霧は顔を赤くした。

「そ、そんなに大したことはしてませんから……!」

 それから、ふと不思議に思った。

(姫様、か――。みんなと同じことをしているだけなのに、そんなに珍しく見えるものなのかな。それが、血筋?)
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 目の裏には、盛耶(もれや)の傲慢な笑顔が蘇った。記憶に残る盛耶の顔は、狭霧を上から押し付けるような傲慢な笑みを浮かべていた。

『「力ある者が上に立つ、出雲に血の色は無用」……か。もっともらしいが、本当のところはどうだ? ――つまり、結局は生まれがものをいうんだよ。ここが出雲だろうがな』

 知らずのうちに、唇を噛んでいた。蘇った盛耶の声に、それは違う、そうじゃないといい返したかった。

 狭霧は、ぼんやりとした。でも、ぼんやりとしていると、わくわくとした声が、狭霧を現実に引き戻す。

「姫様、おれにも飯をください!」
 
 目の前には、もじもじと手を差し出す若い兵が立っていた。

「は、はい。ごめんなさい、今……!」

 慌てて、手にしていた粥の器を手渡す。そうしていると、嬉しそうに笑う兵の頭のずっと奥で、大きく口をあけてあくびをする大柄な青年の姿が目に入った。盛耶だった。

「おい、俺のメシはどうした。腹が空いたぞ。早く持ってこい」

「た、ただいま!」

 盛耶は、今起きたばかりというふうに大きく背伸びをして、機嫌悪く従者へ文句をいっている。

 それを見るなり、狭霧はむっと唇を結んだ。

(偉そうな人。やっぱり、ちゃんと働こう。ああはなりたくないもの)

 盛耶と目が合ってしまいませんように、ここにいると見つかりませんように――!

 兵の影に隠れつつ、狭霧は、手仕事を続けることにした。




 朝餉の片付けが済むと、狭霧の足は、こっそりと森の奥を目指した。

(畑へいく前に、少しだけ)

 こうやってわざわざ遠回りをするのは、もはや日課だ。

 人の目を盗んで林を駆け抜け、奥にある川に渡された丸木橋を通って、いにしえの森へ向かう。森の中でひっそりと茂る涼草の草園へ、こうして毎日通っているが、その森で、邇々芸(ににぎ)に再び出くわしたことはなかった。邇々芸の姿どころか、その森には人の気配そのものがなかった。あるのは、森の侵