
課題があるところにビジネスチャンスも投資の妙味も潜んでいるものです。
「2024年問題」のキーワードとともに一時期脚光を浴びていた物流業界も課題だらけの分野のひとつ。
コロナ禍、私たちの生活を支えるかけがえのない仕事や働き手を「エッセンシャルワーカー」と称し、改めてその尊さに気付かされました。
有事の際にも留まることが許されない重要な業務。
医療・介護、小売や農水産業、そして物流従事者です。
外出自粛によってEC取引の需要が爆発的に普及していく中で彼らは社会の毛細血管として機能し続けました。
その流れはコロナ禍以降も続いています。
しかし需要が拡大する一方で現場は深刻な人手不足、低賃金、長時間労働という三重苦に喘いでいます。
現在は中東情勢の緊迫化によるエネルギー高が加わっての四重苦。
ひとつの転換点となったのが「物流の2024年問題」です。
これは働き方改革関連法によりトラック運転手の時間外労働に年間960時間の限度が設定されたことを指します。
これにより輸送能力が逼迫しこれまで通りの翌日配送や安価な送料が維持できなくなる物流危機が叫ばれました。
あれから約1年半。
物流危機に関するニュースを見かける機会は極端に減りましたが、何かが根本的に解決されたわけではありません。
再配達の削減や荷主への価格転嫁は道半ばで現場の負担は依然として重いまま。
2030年には物が運べなくなるとも言われています。
この不透明な状況は物流大手の株価にも色濃く反映されています。
2024年初頭から2026年現在にかけての推移を見るとヤマトホールディングスやSGホールディングス、NIPPON EXPRESSホールディングスといった主要各社の株価は、日経平均株価が史上最高値を更新するのとは裏腹に、概ね横ばいか軟調な推移を続けています。
燃料費の高騰や労務費の増加が利益を圧迫し、成長シナリオを描ききれていないのが実情です。
一方、物流の「構造」を変えようとする動きは活発です。
人手不足を補うための物流倉庫の無人化が進み、省人化ソリューションを提供する機械メーカーの株価は対照的に好調を維持しています。
マテハン(マテリアルハンドリング)世界最大手のダイフクや、ハンディ端末や自動認識システムで高い技術力を誇るサトーホールディングスなどの機械メーカー。
これらの企業は物流センター全体の自動化需要を取り込み、力強い成長を見せています。
ただここで新たな問題も浮上しています。
倉庫内を動き回るAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)については、安価で高性能な中国メーカーが台頭しておりシェアの争奪戦が加熱している状況です。
技術力やチャレンジ精神にあふれた彼らの勢いに今の日本は完全に後塵を拝しているのが現実。
これは経済安全保障の観点からも無視できない課題と言えます。
物流の問題をこれ以上先送りすることは許されません。
人口減少が不可避な日本では労働力は減るうえに高齢化による配送需要も増えていく。
現場の負担軽減と効率化を両立させるためにはドローン配送や自動運転、そして国産技術によるロボティクスの導入加速など国の強力な後押しも必要です。
課題があるところには必ずそれを解決するためのビジネスチャンスが存在する。
物流業界が抱える深刻な歪みを正す技術や仕組みに投資家の資金も適正に向かう。
その資金が業界全体の生産性を高め、エッセンシャルワーカーの待遇改善に繋がる。
投資とは本来、私たちの大切なお金を必要とされる企業や業界に投じることで経済発展や社会貢献を実現する行為のはず。
今の高騰する株価の推移と、社会構造の実態に大きな隔たりや違和感を覚えてしまうのは考えすぎでしょうかね。
お粗末さまでした。
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