
毎月のようにメンテナンスをしていたヴァイオリニストの女の子が、メンテナンスを始めてから自分の身体を気遣うようになり、ある時から
「ナンバ体操を始めました(^^♪」
と話してくれた。
「ナンバ」とは江戸時代までの日本人の日常動作のことを言います。
歩き方、走り方、その他の日常動作は現代のものと全く違います。
彼女が行っていた「ナンバ体操(骨体操)」自体がどのようなものかは、残念ながら聞いていなかったのですが、いつも通りセラピーを始め、身体に触れてみて驚きました。
最近の日本人は「巻き込み肩」の人が大変多いです。
肩が前面に巻き込むように出ている感じです。
パソコンやスマホなどの影響もありますし、学校での勉強の姿勢なども大きく影響しています。
その子も例外に漏れず「巻き込み肩」で、特に右側の肩に顕著に表れていました。
どうしても腕を内側に捻るような動作が多いと、腕の骨格が内側(前方側)に捻じれるようになり、結果、巻き込み肩となってしまいます。
そして、腕の筋肉もその形に固定されてしまって、それが当たり前の状態になります。
ヴァイオリンの弓を持つ腕が、どうしても内側に捻じれてしまうのでしょう。
その影響で「練習をし過ぎると背中が痛む」ということになってしまいます。
肩が前に巻き込んでいるため、背面が常に突っ張っている状態で、そこへ練習のし過ぎで筋肉や腱が強張(こわば)ると、酷いときは脊柱の胸椎(きょうつい)がズレてしまいます。
それが背中の痛みの原因となってしまいます。
彼女がヴァイオリンを教えている生徒さんたちも
「先生、どうしてこんなに身体が痛むんですか~?」
と訴えているそうです。
それほどクラシックの楽器を演奏するには「負担」が大きいということでしょう。
彼女はナンバ体操を始めてから「巻き込み肩」が解消され、以前のように背中の痛みを訴えなくなっていました。
「最近、肩こりも減ったし背中の痛みも出ないんです(^^♪」
と言って喜んでいました。
肩の凝りもかなり減っていたようです。
脊柱がズレているときは、決まって
「バッハのヴァイオリン独奏」
の練習後でしたが、それも無くなっていました♪
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日本には「小笠原流礼儀作法」というものがありますが、これは「日常の身体操作」を研究しつくした動作方法です。
小笠原氏は兵法や軍楽を専門とする家ですが、そこから日常の身体操作にまで発展させたのでしょう。
だから非常に理にかなっています。
「身体を痛めず、尚且つ疲れない」ための身体操作法です。
「捻(ひね)らない、溜(た)めない、踏ん張らない」
この兵法の身体操作を日常の動作に生かしたものであります。
だからこそ、日本の侍は世界に恐れられていたのです。
動きがけた外れに「迅速」だからです。
西洋人は踏ん張った足を軸点として、その軸点から力が伝達していきます。
しかし、日本人は常に身体の「中心点」を軸に四方八方に力が発動されていました。
それが「迅速」を生む秘訣です。
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「居合」をやっていたのでよくわかりますが、踏ん張れば「足から剣先」に力が伝わるまでに「距離と時間」が大幅にかかります。
ですが、身体の「中心点」から力を発動すると、同時に三つの動きが可能となります。
剣を抜く
鞘を引く
身体を回す(鞘と剣の分離を加速する)
最低でも三分の一の時間で「抜刀」が完了している状態です。
西洋人が剣を抜き終わる手前で「既に斬られている」ということになります。
だから明治維新でアメリカ人もイギリス人も「自ら戦おうとしなかった」わけです。
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日常動作の中から「捻る」ことを排除すれば、巻き込み肩は解消されるでしょう。
特に「腕を捻る」ことを意識していれば、肩は正常な位置に納まり、筋肉も正常な位置に納まってきます。
納まりが良ければ当然動きも良くなります。
身体を痛めない身体づくりは、そのままパフォーマンスアップに繋がるものと思います。
それは「使う筋肉が変わってくる」ことでもあります。
今まで使っていた筋肉が、実はパフォーマンスに限界を作っていて、練習量だけではそれを超えられない・・・
しかし、姿勢・骨格・動作が全般的に変わることで、筋肉の位置も変わり、結果、今まであまり使っていなかった筋肉を使えるようになり、パフォーマンスがアップしてくるということです。
そうなると、あとは長年蓄積されていた「凝り」や「捻じれ」を取っていけばいいだけとなります。
そして何より「取りやすい」状態となっています。
その自身の身体の推移がわかれば、今度は「身体がいたいよ~」と言っている自分の生徒さんたちにも「身体が痛まないため」のあれこれを指導できますね。
Re:ist メソッドについて