どうも岳南富士見紀行というわりにはなかなか岳南地方にたどり着きませんですが、もう一か所だけ行きがけついでに静岡市で訪ねた場所のお話を。

 

かつて静岡駅からほど近いところにあった駿府博物館。博物館と言いつつ実は美術館なんでうが、その頃に二度ほど立ち寄ったことがあったのですな。その頃は何とも古い建物、そしてこぢんまりした展示室…でありつつも、思わず目を止めてしまう日本画コレクションに出会えたりしたものですから、移転した後は「どんなかな?」と予て気に掛けておったところです。

 

で、いざ静岡に出かけるという段になって、何かしらの展覧会でもやっておるであろうかと同館HPを見れば「これ?!」と。日本画コレクションの様相とはずいぶんと異なる展覧会ながら、これはこれでついつい懐かしさに駆られて「この際だから寄らねば!」と思ったものでありましたよ。

 

 

最も知られたキャラクターとしては「それにつけてもおやつはカール」のCMに出てきたカールおじさんがありますが、これを手掛けたイラストレーター・ひこねのりおの作品展なのでありました(会期はすでに終了)。

 

キャラクターが有名なわりには作者の名前をこれまで聞いたことがなかったですが、アニメ・フリークの間では十分に知られた存在なのかもしれませんですね。なにせこの方、芸大美術学部の工芸科図案計画専攻を経て、東映動画や虫プロで働いておられたアニメーターでもあるということで。

 

一般的に知名度の高いTVアニメ作品との関わりでは、『ジャングル大帝』の原画、『ムーミン』の原画・演出、『天才バカボン』の絵コンテなどを担当していたそうなのですなあ。そして1974年、「カール」のCMを手掛けるに至ったということでありますよ。

 

 

「カール」のCMと言えば、先にも触れましたように思い浮かぶのはカールおじさんなのですが、どうやら当初の発想とは異なる独り歩きであったようで。展示解説に曰く、まずはこのように考えられておったようで。

…「カールを食べている子どもと村の動物たち」という設定うぃ考えた。そのため最初のCMは「坊や」がメインで「おじさん」は後ろにいる動物たちのなあに混ざったエキストラ扱い。ひこねは「いたずら半分で入れた」と振り返る。次第に人気が高まり、主役として定着し、生誕半世紀の超有名キャラクターとなった。

脇役が主役に躍り出る。その結果、1978年には三橋美智也があの独特の高い声で歌ったCMソングは、♪ハァ~あ おらがじゃあドカ雪が三日もつづき~と、どうしたっておじさんの村の物語感を醸すことにもなったのでしょう。ちなみに、このCMソングは『いいもんだな故郷は』というタイトルで1990年にシングルリリースされていたとは、知りませなんだ。この時までにはすっかりおじさんにお株を奪われた坊やだったのでしょう。

 

 

ところで、カールのおらが村から出て独り立ちを果たしたキャラクターがもうひとつ。上のセル画で、おじさんの左側にカールを持っているカエルが見えましょうか。これが「ケロ太」と名付けられて、「1978年には単独でアポロチョコレートのCMに出演した」と。そのことは個人的には記憶にないものの、ケロ太と言えばPARCO出版が出した『ケロ太のお天気カレンダー』でしょうか。

 

 

いったいどこでどう入手したものか、全く覚えておらないものの、確かひと頃は自宅の壁をこのカレンダーが飾っていたなあとうっすらと。これもひこねのりお作品だったのですなあ。

 

で、ひこねが描く動物たちはそれぞれに『きのこの山』や『たけのこの里』という活躍の場が与えられますけれど、それらを上回るもひとつのビッグヒットがこちらのペンギンということになりましょう。

 

 

こちらの新聞広告では、汗かきかき缶ビールを抱えたところはコミカルな印象ながら、一方でTV-CMの方では松田聖子の歌う『SWEET MEMORIES』をバックにしんみりした物語をペンギンたちが展開していたことが思い出されますよねえ。

 

 

サントリーのは「タコハイ」用にタコのキャラクターも提供したようでして、その後にも「実はひこねのりお作品だった…」というものを世に送り出しつつ、現在も90歳を間近にしつつ現役で活躍中であると。大したものです。

 

 

と、ゆったりと会場を眺めながら、思いは「あの頃…」に飛んだりしておったわけですが、今回の展覧会タイトルを改めて振り返ってみれば『ひこねのりお展 富士山を見におでかけ編』と。ですので、カールおじさんの富士見のようすを2025年最新作で見ておかねばなりませんですね。

 

 

三保の松原と清水港越しの富士のお山。カールおじさんは秀麗な姿を目の当たりにしておりますが、自らの岳南富士見紀行ではこの先どうなりましょうかね。静岡市内の立ち寄りはここまでとしまして、この後、JR東海道本線普通列車で少々東へと逆戻りしてまいります。