先ごろ訪ねた市谷の杜 本と活字館はその存在を新聞で見かけた…と申したですが、見かけたのは6/22まで開催中の企画展の紹介だったような。印刷の工程を見せてくれる1階の展示とは別に、2階に上がると企画展スペースでもって「FANTASTIC!プロセスインキ」展をやっておりましたよ。

 

 

2月に始まって春休みやGWを挟んで6月までの会期とあって、フライヤーを見てのとおり、子ども連れにも分かりやすく「色にまつわる素朴な疑問にお答えします」というのが趣旨のようしたなあ。ともあれ、覗いてみたのでありますよ。

 

現在、もっとも一般的に用いられるオフセット印刷では、シアン(藍)、マゼンタ(紅)、イエロー(黄)、そしてブラック(墨)の基本の4色で色を再現しており、これら4色は印刷現場では「プロセスカラー」と呼ばれています。それぞれの色のアルファベット表記から「CMYK」の名でご存じの方もいるのではないでしょうか。
「FANTASTIC!プロセスインキ」は、オフセット印刷で使われるプロセスカラー=CMYK が主役の展覧会です。

ま、家庭用にせよ事務用にせよ、PCデータのアウトプット用にプリンターを利用していれば、もはやCMYKはお馴染みのこと。世に数多く存在する色のほとんどをこの4色の配合比率を変えることで再現しているわけですね。

 

 

 

ではCMYの3色を重ねると、それはもう「黒」でないの?という具合ですけれど、完全な黒とは別物ということで。CMY3色で印刷したものとCMYKで印刷したものとを比較しているものを現場で見ると、結構一目瞭然…ながら、この写真では右の方がシャープな黒が出ているのが分からないでしょうなあ、残念ながら。

 

 

ちなみにですが、「C」「M」「Y」がそれぞれシアン、マゼンタ、イエローなのはいいとして、ブラックは何故に「K」であるのか。さすがに「KuroのKでしょ?」とは思いませんでしたが、BLACKのおしりの「K」かなとは少々。正解は、印刷において黒=墨版は基本中の基本であることから、元来墨版を「Key Plate」と呼んでいたところから「K」はきているのであると。

 

ところで先ほど、世にある色の「ほとんど」をCMYKで再現していると言いましたですが、再現不可能な色(「特色」というそうな)もあるのですよねえ。分かりやすい例では、金色、銀色や蛍光色が特色に当たるようです。

 

 

CMYKの組み合わせでなんとかしようとしたところで、どう頑張っても金色は黄土色になってしまい、銀色は灰色になってしまうそうでありますよ。

 

ということで、いささか子供向けっぽい作りの展示ではありましたけれど、それなりに「ふむふむ」と思うこともありつつ見て回った次第。で、この展示コーナーの裏側には「印刷と本づくりを実際に体験し、モノをつくる場所」として制作室が置かれておりました。

 

 

適宜開催されるイベントの際にはあれこれの機材を使って印刷体験を…となるようですが、今回は飛び込みですので「卓上の活版印刷機(テキン)」なるものを使った栞作りだけやらせてもらえました。

 

 

手前に付いているハンドルを押し下げますと、下に隠れているローラーがせり上がってきて、丸い面にのせてあるインキをからめとって印刷できるという仕組み。これで印刷したインキは完全に乾くまでなんと!4日間かかるそうな。「こりゃ、商業印刷向きではありませんな」と、係の方に問いかけますと、「いえいえ、テキン印刷は手刷りの風合いが人気あるんですよ」とか。ちと、大量生産に毒された問いかけをしてしまいましたかね…。