さてと、仙石線沿線をうろちょろしてきた旅も最終日となりました。東北本線よりも海沿いを走る路線なだけに海に近いところにいたわりにはあまり海の話になりませんでしたが、この日は朝から塩釜の港へ向かうことに。本塩釜駅近くから、長い長いペデストリアンデッキが繋がっているのでありますよ。
町の個人商店を脅かしている?駅前の大型ショッピングモールの傍らをまっすぐに進みますと、やがて階段を上り、ペデストリアンデッキへ。見晴らしの良さそうな予感がしてきます。
といっても、塩釜港は松島湾の奥に入り込んだ入江の中にありますので、あまり開けた景色ではないようで。漁港であるとともに、貨物の取り扱いもあることから、見えるのはクレーンばかりのようでもあり…。
ですが、水面に目を泳がせておりますと、「ん?あれはもしかして…」ということに。単なる遊覧船とも思われぬあの姿は「塩竈みなと祭り」の船ではないかと思い至った次第でありまして。ちと、クローズアップしてみましょう。
塩竈みなと祭は…厳島神社の管弦祭(広島県廿日市市宮島町)、貴船神社の貴船まつり(神奈川県真鶴町)と共に「日本三大船祭」に数えられ、海の祭典としては全国有数の規模を誇ります。最大の見せ場である神輿海上渡御では、東北有数の参拝者数を誇る「陸奥国一宮」志波彦神社・鹽竈神社の2基の神輿をのせた御座船「龍鳳丸」「鳳凰丸」が約100隻もの供奉船を従え、日本三景松島湾内を巡幸します。美しい島々と海を背景に展開される勇壮華麗な大船団の様子は、さながら平安絵巻の様相を呈しています。(塩竈市観光物産協会HP)
船首の飾りで分かりますように左側が鳳凰丸、右側が龍鳳丸でして、今は静かに港内に停泊しておりますと、祭り当日ともなれば、大漁旗を高々と掲げた漁船に曳航され、また数多の漁船群を引き連れて颯爽たる姿で立ち現れるのであるとか。もしかすると祭りを迎える「海の日」(7月第3月曜日)は、塩竈の瞬間人口が最大になる日なのかもしれません。そんなお祭りだけに、宿泊したホテルのロビーでも壁面が祭りのようすで飾られておりましたですよ。
ちなみに港を目指したこの日、マリンゲート塩釜という船着き場から乗船した遊覧船の乗組係員の方曰く「御座船には動力が付いていない」のであると。塩竈市観光物産協会HPによれば「鳳凰丸とその供奉船行列は江戸時代、仙台藩62万石の威容を誇る伊達家の松島湾内遊覧のための御用船が原点であるといわれています」とありますので、動力無しの由縁はそのあたりにあるのかもしれませんですね。
と、しばし「塩竈みなと祭り」に思い巡らすうちに到着したのは「マリンゲート塩釜」、ペデストリアンデッキの終着点となります。松島との間を結ぶ遊覧船と近隣の島々の生活の足となる市営汽船の発着場であるとともに、道の駅の海版である(らしい)「みなとオアシス」として飲食店や土産物屋が入り、イベントスペースもある(なんとハローワークまで入っている)複合施設のようですな。
で、ここからは日本三景のひとつ、松島へ向かいながら島々を眺めやる遊覧船に乗ることに。乗船券売り場の傍らには何気なく松尾芭蕉の像が置かれていますが、芭蕉も『おくのほそ道』の道すがら、塩釜から松島へは船で向かったそうな。
松島観光は、松島に行ってしまってその場で湾内周遊の観光船に乗る人が多いであろうところ、ここはひとつ松尾芭蕉にあやかって塩釜から出航することにしたのでありますよ。ということで、松島湾を遊覧船に揺られて…というお話が次回に続いてまいります。