思いがけない腰痛悪化によりまして、丸三日に及んだクアラルンプール停滞。なんとか徐々に薄皮を剝いでいくように快方へ向かう兆しを感じて、予定されていたマラッカ行きに間に合わせたような次第でありますよ。決して平癒には至っておりませんでしたけれどね。
ともあれそんな事情も抱えていたことから、クアラルンプールからマラッカへ向かうにあたっては「Grab(グラブ)」利用によるドア・ツー・ドア移動に頼ることに。マラッカに行くとなれば長距離バス利用で3時間ほどという移動形態が一般的なようですけれど、長距離バスは圧倒的に安いという利点はありながらも、到着するのが郊外のバスターミナルであって、そこでまたローカルバスに乗り換えなくてはならないものですから。
ところで、さらりとGrab利用とは申しましたですが、どんなものであるかは今回マレーシアに行って初めて知ったような次第。2012年以来、東南アジア各地に展開した配車アプリサービスということで、スマホの利用が広まって以降に東南アジアへ行かれた方はほぼほぼ使っているサービスなのかもです。当然に、30年前には影も形もなかったサービスですな。
ちなみに、クアラ~マラッカ間のような長距離移動に使うのは例外的かもですが、そも空港からKLセントラル駅に到着したのち、滞在するアパートまでの移動もGrabでしたし、最終的には帰国時、アパートから空港までもGrab利用と、何かと便利に使われている、それがGrabであるようです。ま、これもスマホ利用が大前提のようなところがありますので、スマホを持たずに海外へ出ることのできない状況はすぐそこまで来ているのであるかな…と思ったものでありますよ(今でもガラケーを利用しているものならでは感想です)。
余談ながら、マレー半島にはこれを縦断するマレー鉄道が走っておりますので、鉄道利用でもマラッカに行けるのでは…とも思うところかと。さりながら、マレー鉄道は海岸線から引っ込んだ内陸部を走っている関係から、最寄り駅といってもマラッカ市街とはタクシーで1時間くらい掛かるほどに離れておるそうな。鉄道利用というのも少々そそられはするも、それはまた別の機会にということで。
つうことで、クアラルンプールの中心街を発した後、車は高速道路を通過してマラッカへとなるわけですが、料金所のところでやおらGrabのドライバーさんがハエたたきを取り出したのですな。といって、ハエたたきとはいったい?てなことにもなるご時世でしょうか。昭和のひと頃を過ごした人ならば間違いなく思い浮かぶ形があると思うのですが、敢えて言い換えるならば、柄の長いフライ返しの首の部分が曲がっていない、まっすぐになった形とでもいいましょうか。
で、このハエたたき状のものの先っぽ、平たい部分の四隅にはカードをさしはさむためのスリットが付いておりまして、高速道路の料金カードを取り付けるのであると。料金所では運転席の窓を開けて、ハエたたき(に取り付けたカード)を持った手を伸ばし、読み取り機にタッチ!で通過するという具合でありましたよ(読み取り機の位置が遠すぎるのか、車の寄せ方が日本人ほどには上手でないのか…)。
Grabという配車アプリにしても、街中でのキャッシュレス・ショッピングにしても、日本以上にデジタル化が進行している(良し悪しは別ですが)と思しき仲にあって、このアナログ的なハエたたき利用には東南アジアらしいほほえましさは健在(といっては語弊があるかもですが)てな気もしたものです。「ETCはないのかいね?」と思ったわけですが、後になって空港へ送りに利用したGrabでは、全く日本のETC同様な感じでするっと高速のゲートを通り過ぎていましたので、もしかするとETCのシステム自体が高価なのであるか?とも思ったものでありました。
余談はともかくも、沿道の景観は高層ビル群を離れ、やがて聳える山が見えたり深い木立ちの間を抜けて、車はひた走る。あの山で錫採掘が行われたのであるかな、この深い木立ちではゴムが栽培されているのであるかな…といったことを想像しているうち、「Melaka」(マレー語・マラッカは本来ポルトガル語)の看板で高速を離れ、市街地へ。結果的にはKLCC近くのアパートからマラッカのホテルまで、ドア・ツー・ドアで2時間15分ほど。お陰様で、腰に負担を感じることなく移動出来た次第です。
この日の泊まりは海に近いロケーションのホリディインメラカでして、隣接する古い市街地を見下ろす高層ホテルでありましたよ。低層階の建物が建ち並ぶ旧市街と思しきあたりの傍らに、やおらこういう建物があるということにも少々曰くがあるようですな。そのあたりはまた、マラッカ街歩きの間にも触れてまいることにいたしましょう。