マレーシアに行っていてしばし不在をする間、TVの録画がとり溜まってしまっており…。毎度ながら周回遅れのTV番組ネタでありますよ。ま、ほとんどがEテレ(たまにNHK総合)なので、NHKオンデマンドにでも登録しておけばいいのでしょうけれど、そこまで執着している番組でもありませんからなあ(笑)。

 

ともあれ、ここで話題にのぼせようとしておりますのはEテレ『地球ドラマチック』の1月25日放送分、「古代エジプト スフィンクスの謎を解き明かせ」のお話でありまして。このドキュメンタリー番組では「ピラミッドの謎に迫る!」みたいな内容はまま登場するのですけれど、スフィンクスそのものに焦点があたるのは珍しいような。

 

と、ここで取り上げるスフィンクスは、エジプト・ギザの大ピラミッドの前に、あたかも番犬のように伏せている石像のことを言っておるわけですが、考えてみれば(というか、Wikipediaに曰く)「スフィンクス(Sphinx)は、エジプト神話やギリシア神話、メソポタミア神話などに登場する、ライオンの身体と人間の顔を持った神聖な存在あるいは怪物」のことであって、何もピンポイントでギザの石像を指すとは限らないのですよね。

 

エジプトの神話はもとより、ギリシア神話などにも出てくる・・となれば、その造形は一様ではないはずで、後々の時代にギュスターヴ・モロー描くところの『オイディプスとスフィンクス』などではエジプトらしい頭巾を被る代わりにティアラを乗せていたりするのですし。

 

とはいえ、時代の古さからいえばエジプト由来であって、スフィンクスと聞いただけでいの一番に思う浮かべるのは砂漠の中に佇む姿になろうかと。ですが、砂塵の舞い続ける土地柄だけに窪地に置かれたスフィンクス像は常に埋没の可能性があると。実際、ナポレオンがエジプト遠征に赴いた時(ロゼッタ・ストーンが発見されたときですな)にもスフィンクスの首から下は砂に埋もれていたのであると。

 

しかし、窪地なれば砂が溜まりやすいのは必定なわけで、なんだってこんなところに?と思っていたのは全くもってモノ知らずであったと、番組に教わったような次第です。なんとなれば、ギザの大スフィンクス像は(ピラミッドのように)石材を積み上げて造ったのではなくして、周囲の岩盤を掘り下げて造り出したものであったということで。

 

ちなみに、掘り下げる元の地面の鷹さよりも像の頭の部分は飛び出しているのですが、これも載せたのでなしに、この頭の部分だけ地面から大岩が飛び出していた…とは何とも都合のいい話のような。ただ、この飛び出した大岩こそが、スフィンクス像をここに掘り下げて造るのだというインスピレーションになったのかもしれませんですねえ。

 

それにしても、岩盤を掘り下げて像と造るとなれば、掘り出した石が相当に出たことでしょう…という心配は全くご無用だったようで。スフィンクス像の前面にはスフィンクス神殿、河岸神殿という二つの神殿を造る石材として使われたということですから。

 

取り分け、河岸神殿はギザの三大ピラミッドの真ん中、カフラー王(一番大きなピラミッドに眠るクフ王の息子)のピラミッドへの参道入口にあたるということでもあるようで、そんなこんなを合わせて考えると、スフィンクス像もまたカフラー王が造らせたのであろうということになるようです。

 

しかしまあ、ピラミッド造りだけでも大事業なのに、さぞかし動員された人たちは酷使されて…と思うところながら、この認識はどうやら昔ばなしというか、思い込みというか。ピラミッドや神殿、巨大石像を造るには大層な技術が必要であって、携わったのは当時の優秀な技術者たち。それなりの待遇がなされたとか。王の威信をかけた建造物が素人集団の手で出来損ないになっては元も子もないでしょうからねえ。それでも、下働きの人足仕事はあったように思いますが…。

 

てなことで、スフィンクス像はいわば摩崖仏だったのであるか…と、モノ知らずがまたひとつモノ知りになったという次第なのでありましたよ。大岩は宗教的インスピレーションを与えることの一つなのでありましょうかね。