塩竈市杉村惇美術館を出たときにはすでに夕刻になってきておりまして、さすがに11月下旬の東北地方らしい寒さを感じていた次第。で、ホテルへの戻る道すがら、「閉店前に間に合ったか」と立ち寄ったのがこちらの酒蔵なのでありました。お酒を飲んでほんのり温まる…てな思いもありまして。

 

 

昨年、京都伏見で訪ねた月桂冠やら黄桜やらは早くから全国的ブランド展開をしてきた酒造メーカーですけれど、いつしか地酒ブームといったふうになって全国的ブランドがむしろ陳腐化していったりしますですねえ。そんな地酒がもてはやされるようになる中で、この「浦霞」はかなり広く出回っているような。東京の居酒屋、スーパーでも見かけるくらいですのでね。

 

そんな知名度の高いブランド「浦霞」は塩釜のお酒だったのですなあ。「一七二四年に創業、 江戸時代後半には鹽竈神社の御神酒酒屋となり酒を醸し現在に至っています」(同社HP)とは、由緒もなかなかのようで。「浦霞」の名の謂われは(近くにあった解説板によれば)こんなふうだとか。

佐浦家の酒の銘柄(商標)である浦霞は、大正十四年(一九二五)、摂政宮時代の昭和店ぬおが行幸で当地に来られた際に献上された酒の銘で源実朝の和歌「塩竃の浦の松風霞むなり 八十島かけて春やたつらむ」に因んだものである。

 

 

ともあれ、直営店舗「浦霞 酒ギャラリー」では試飲ができるということですので、早速にほんのり温まることに。きき酒サーバーはコイン式でして、お猪口プラス3コインで400円、そのままお猪口を使ってお代わり2コインが200円、ちびちびと試飲を繰り返した次第です。

 

 

「限定商品」、「店長のおすすめ」、「季節のおすすめ」などという惹句には目移りせんばかりですが、全くもって個人の好みの関係でしょうけれど、実はどれにもピンと来るところがなくって「ううむ…」と。どうにも、前の晩に「牛たん弁当」とともにホテルで味わった石巻の地酒「墨廼江」の印象を上書きできないような。

 

 

戸惑いつつも、ここまで来たのだからと土産(自分用ですが)の一本を求めて店内をうろうろした結果として、宮城県限定商品というのに釣られて「蔵の華 純米吟醸 浦霞」をチョイス。きき酒サーバーには入っていないものでしたですが、試飲の印象から高を括って帰宅後早々に飲み始めてしまいましたら、何たることか「これ、いいね」と。「うまいじゃないの」とあっさり空けてしまった関係で、画像を残してもおりませんでしたので、醸造元から借用をお許し願わねばなりませんですよ。

 

 

てなことで、取り敢えずその時は「ほんのり温まる」という目的を達してホテルへ戻ったわけですが、件の土産酒がきき酒サーバーに入っていたなら、お代わりを繰り返して千鳥足…てなことになっていたかも。結果オーライの話ではあるも、話の途中で試飲の印象を「うむむ」と言ってしまった点、浦霞に「御見それしました」と申さねばなりませんなあ。