京都・伏見は酒のまち。訪ねたからには、と一日のうちに何軒もの酒蔵を渡り歩くことを目的にされる剛の者(無茶な人?)もおいでとは思いますけれど、個人的にはそのレベルには行っておらない。それでも、町なかをふらりとする中で「富翁」とか「京姫」とか、見知った銘柄を見かけると呼ばれているような気がしたものです。

 

 

さりながら酒蔵以外であちこち見て回りたいところがあったものですから、そこは堪えてやり過ごす。その代わり、工場見学があったり資料館が併設されているところに限定して立ち寄ることにして、その代表格が先に訪ねた月桂冠大倉資料館だったわけなのですなあ。で、伏見の酒にあって取り分け全国的浸透度の高いお酒としてもうひとつ、それが黄桜だったのでありますよ。

 

 

実はこれまでううろろしていた伏見の町なかにも「キザクラカッパカントリー」という施設がありまして、旅行ガイドブックなどにも載っておるのですけれど、どうやらここはレストランがメインであるようで。だもんで「別途、飲み食いに来ようかいね」と通り過ぎるにとどまっておったわけですが、伏見が誇る、月桂冠と並ぶ大衆的ブランドの雄?としては、企業史などを含めたPR施設が無いはずはない。市街地からちと離れて立つ新工場の方に該当施設があったのですなあ。こちらに来る以前の情報収集段階ではひっかかってこないでいたのですが…。

 

 

とまれ、京阪中書縞駅から徒歩20分(実際にはそれほどにかからなかったですが)という「黄桜 伏水蔵」を訪ねた次第。町なか施設の方は、いかにも黄桜らしくカッパ、カッパしておりましたが、こちらはずいぶんと落ち着いた雰囲気で…と思えば、入口ではやっぱり黄金のカッパが出迎えておりましたよ。

 

 

ところで施設名の「伏水蔵(ふしみぐら)」とは、先に何度も触れてきましたように伏見の地はかつて伏水と言われていた…というところから来ているのだろうと知ったか状態でしたけれど、その実、黄桜には黄桜の、独自の湧き水を「伏水(ふしみず)」というようで。「伏見名水スタンプラリー」」の紹介欄に書いてありましたですよ。と、水の話は(ここでは)ほどほどにして、施設見学へとまいりましょう。

 

 

 

酒造りではもちろん水は大事なわけですけれど、酒米もまた。ここでも酒造好適米と紹介されている「山田錦」は「酒米の王者」とも言われるとか。ですが、山田錦の何がそんなに凄いのか、なぜに酒造りに適していると言われるのか…には思い巡らしたことはありませなんだ。どうやら、こういうことのようで。

(山田錦は)一般的な米より大粒で、通常よりさらに磨く「高度精米」にも十分耐えられる特性を持っています。
米麹を造るために蒸米に麹菌を植え付けますが、米の中心部には心白(しんぱく)と呼ばれる細かい隙間があり、そこに菌糸が入り込みます。山田錦はこの心白が大きく、菌が育ちやすいため、良質な米麹が育まれます。

普段食べるお米は玄米から白米になるくらい、外側をうすく磨く感じかと思いますが、酒米の場合には中央部分のデンプンと取り巻く脂質やタンパク質が多く残ると雑味になってしまうのであると。そのため、心白近くぎりぎりまで磨くを良しとして、精米歩合が高さはお酒の値段に関わってくるのですなあ。

 

 

米を粉砕してしまっては元も子もないわけですから、磨く作業はなかなかに繊細なもののようで、50%まで持って行くのにおよそ24時間かかるとか。食べるお米の精米時間は1~2分だそうですが…。

 

 

と、この先、長い廊下に沿って壁面には解説パネル、反対側はガラス張りになって製造工程が見えるようになっておりましたよ。あいにくと作業はおよそ行われておりませんでしたけれどね。

 

 

で、プロセスは端折って恐縮ながら、全国区知名度の黄桜の酒が出来上がっていくのであるということになりましょう。

 

 

ですが、ここの工場が新設されたのは必ずしも日本酒需要が高まったから…ということではないのであるとか。次回はそのあたりを振り返ることにいたしましょうね。