宮城県石巻市の石ノ森萬画館に立ち寄って、ひとしきり『サイボーグ009』の話になってしまいましたですが、展示スペースを進んでいってもう一つ、石ノ森章太郎の代表作として大きく扱われていたのが、何を隠そう(?)『仮面ライダー』でありましたよ。

 

 

1971年に初めてTVシリーズが放送された頃に子どもではありましたけれど、仮面ライダーに入れ込んだのは弟世代であって、スナック菓子のおまけに付いているカード集めに熱くなっている連中を傍目でひややかに見つめていたことを思い出したりも(子どもらしからぬ子どもであったか…)。だもんで、世間的には人気を呼んだシリーズがどんどん続けられて令和の世に至るも存続しているとは驚くばかりでして、個人的に実際に見た記憶があるのは「V3」くらいまでですかね。

 

 

ともあれ、手を変え品を変え的にその時その時の子どもたちに人気があってこそ続いたのでしょうけれど、どうやら途中からは子どもと一緒に見ている母親の間で、主演俳優が話題になったりした時期もあったとか(聞きかじりですが)。特に平成ライダーとして登場した佐藤健とか菅田将暉とか竹内涼真とかのあたりですかね。これだけ長年にわたって続きますと、どこまで「石ノ森章太郎の」と言えるのかは微妙になってくるところでしょうけれど。

 

ところで、第1作の冒頭部に出てくるお決まりのナレーションに「仮面ライダー本郷猛は改造人間である」というのがありますが、先には石ノ森章太郎の人造人間ものなんつう言い方をしてしまったものの、人造人間というとフランケンシュタインみたいなふうでもあって、やはり改造人間というのが正確なのでしょう。「009」の説明のところでも改造、改造と出てきましたし。

 

ですが改造と言って、「009」の各キャラクターは一見したところでは改造が分からないですし、変身もしないわけですが、仮面ライダーになって加わった「変身」という要素(「ウルトラマン」も変身しますが、等身大という些かのリアルさを持ち込んでいますですね)はその後にずいぶんとたくさんの類似作品を生むことになったような。仮面ライダーと同じく石ノ森が原作を手がけた『人造人間キカイダー』などは、変身の逆手をとっておりますね。

 

 

この展示を見ると、あたかも人間がキカイダーへと変身しているように思えますけれど、石ノ森に用語の誤りはありませんで、先に人造人間と改造人間の違い触れましたように、ここは飽くまで人造人間キカイダーであって、ロボット、ロボットしている姿が本来であると。むしろ、普段は人間の姿に変身?しているということであるわけで。

 

 

ということで、SF的なキャラクター造形に長けていたと思しき石ノ森ですけれど、ギャグ漫画もあれば時代劇作品もある…という多彩さが、自らの造語「萬画」に込められてもおるのでありましょうね。

 

 

 

というような石ノ森作品の数々を、原画の展示なども含めてつらつら見て行きますと、手塚治虫の影響が大きいようなと改めて。「009」のギルモア博士が、「鉄腕アトム」の御茶ノ水博士のごとく鼻が巨大で…などという部分のみならず、です(笑)。

 

 

上京して、手塚の住まったトキワ荘に入居するずっと以前、上のパネルでは右から3つ目の写真は中学生の石ノ森が生家の机で漫画を描いているところですが、丸坊主頭にベレー帽を被っている。手塚への傾倒ぶりが窺えるではありませんか。実のところ、漫画そのものとして石ノ森作品に接したことは余りなかったのですけれど、展示を振り返ってみて「そうだったんだねえ」ということのいろいろある石ノ森萬画館探訪なのでありましたよ。

 

 

ちなみに、館内の飲料自販機は石ノ森キャラのデザインでしたですが、右側の「シージェッター海斗」というのは石ノ森デザインを活かして誕生した石巻のローカルキャラクターだそうな。ご当地では夙に知られた存在のようですが、全く知りませんでした…。