信州・富士見町の入笠山は花の宝庫であるということで、ゴンドラリフトに揺られてたどり着いた山頂駅からしばし山道を歩いてきたところからお話の続きということで。
丁度、入笠湿原の入り口に差し掛かったところでして、湿原を取り巻いて中にはいる道筋にはそれぞれ鹿除けゲートが設けられていますので、これを開け閉めして通り過ぎることになりますな。
ちなみに昨今は、あちらこちらの山中はおろか里山の際まで熊の出没が話題にされますですが、ここ入笠山でも「目撃情報あり」の看板が立てられておりましたよ。そうしたことから、登山者の方々は従来はおよそ聴こえてくることの稀であった熊鈴をザックに下げて歩いていたようで。まあ、油断はならないのでしょうけれど、ことこの時期の入笠山に限っては道々に人の流れが途切れることがありませんから、熊も出てこられんでしょうなあ。
と、入笠湿原の心地よさそうな景色を眺めたところで、いい加減に花の話に向かいませんと、すずらん、すずらんと言っているのが看板倒れになってしまいますなあ。どうやら目の前に見える大きな斜面が「すずらん群生地」であるようです。振り返りみると、思いのほか斜度のありましたなあ。
でもって群生地と言われて思うイメージでは、すずらんの花のそれこそ鈴なり状態が一目瞭然!かと思うと、一面みどりに伸びた葉の間を覗いてみればひっそりと、でもたくさん…てな印象であるような。どうでしょう、なんとか判別できますでしょうか?
このままではもやっと感が募ってしまいますので、クローズアップで愛いやつを狙うことにしたのでありますよ。
てな具合に、控えめな印象を受けたすずらんですけれど、入笠湿原の斜面に群生しているのは「日本すずらん」なのであると。湿原までは大した距離ではありませんけれど、歩いてたどり着かねばなりませんが、ゴンドラリフトの山頂駅直近には(山歩きしなくても見られるように)たくさんすずらんが植えてあって、そちらは「ドイツすずらん」であると。違いのほどが、解説板になっておりましたよ。
要するに「日本すずらん」は葉の下に、「ドイツすずらん」は葉の上に花を付けるというのが決定的な違いですな。前者が深窓の御令嬢的な控えめ感があるのに対して、「ドイツすずらん」は「わたしを見て!」とフォトジェニックさを前面に出しているというか(例えが昭和風ですいません…)。ともあれ、後回しにしていたドイツすずらんの方も見ておくといたしましょう。植わっている環境も日本すずらんの群生地とは大きく異なって、八ヶ岳一望の明るく開けた斜面にあるのですなあ。
そんな日向で伸びやかに、ひと目ですずなり感あるようすをドイツすずらんは見せているのでありますよ。
と、ここまでの書きようからしますと、日本すずらんは奥ゆかしく、ドイツすずらんは目立ちたがりといった印象にもなるところながら、よくよく考えて見ると、日照条件のあまりよろしくないドイツにあっては葉の陰に隠れてなどおられない、お日さまが出ていたら精一杯浴びるのだ!という、環境ごとに異なる成長戦略の故であるかなと。なんにつけ、短絡思考ではいけませんでせすねえ。
ということで、入笠山で日本すずらんとドイツすずらんの違いをつぶさに見てきたわけですが、富士見パノラマリゾートHPに曰く、入笠山は花の宝庫だといことですので、他にもさまざまな花が咲いておりまして、中には絶滅が危惧される種類もあると。次回にはその辺を振り返っておこうと思っておりますよ。