GWの最中に安曇野の美術館を3つ(加えて資料館をひとつ)巡ったですが、次へ次へと小さくなっていきましたなあ。それでも高橋節郎記念美術館は公立の一定規模の美術館でしたけれど、その後のふたつは完全に個人美術館だったわけで。

 

 

まずはこちらです…と言って、わざわざ間違えた写真を挙げたふうを装ってしまいましたけれど、この建物、個人美術館であると言われればそんなふうにも見えましょう?でも、ここは「そば処 上條」という、いろんな意味で結構こだわりの蕎麦屋なのですなあ。まあ、店主自ら写真家で、信州の四季折々をさまざまに切り取った作品が見られますので、個人美術館と言えなくもないような。ただ、昼飯に立ち寄って、こだわりある蕎麦を食したという次第でありますよ。

 

 

「天恵そば」という、冷やしそばにトッピング全部のせ的な一品ですけれど、こだわりのほどは左側に見える小どんぶりの方ですな。何はともあれ、水に晒した蕎麦で、そのものの味わいをご堪能くださいと。安曇野の名水を使っているのもポイントであるようで。もちろんおいしくいただいたわけですが、舌が子供なせいか、やはりにぎにぎしいトッピング具材といただくを良しというのが個人的なところでして。…と余談を混ぜたところで、本当に訪ねた個人美術館の一軒目はこちらの大熊美術館なのでありました。

 

 

瀟洒な建物が2棟ありますが、右手の小さい方はカフェが営業されていたものの、コロナ禍がたたったものか、今はやっておらないようで。ですので、左側の母屋?にあたる美術館へと直行です。

 

 

よくよく見ないと美術館かどうかも(蕎麦屋だとは思いませんが…)判じにくい、主張の少なさが感じられますけれど、中に入って「御来館の皆さまへ」と手書き!で書かれた貼り紙を見ますと、「なるほど」と思うところでもあり。

 

 

個人美術館を運営するにはあれこれ取捨選択を迫られるところもありましょう。「作品群の収集を優先し、パンフレット作成、看板等はかないませんでした」とは名を捨てて実を取る作戦かと。ただし、口コミという手段が今では(SNSを通じて)下手な宣伝よりも遥かに有効なご時勢になってますので、果たしてこの後はどう転ぶか。訪ねたときには他に来場者は誰もいなかったにせよ…。

 

 

 

展示室内はとてもとても落ち着いたふう。逆光になってしまってますが、高窓含めてそこここに配されたステンドグラスが実にいい感じを醸しています。で、肝心の展示物は?となれば、めだってずらりと並んでいるのはビング&グレンダール窯やロイヤルコペンハーゲン窯のクリスマスプレートが年代順にずらり。これは壮観でありますよ。

 

 

ちなみにこちらは、ビング&グレンダールが「プレートの素材に磁器を用い、また自社で開発した藍色釉下技法で世界で初めて」作成したクリスマスプレートであると。これ以前からヨーロッパでは、クリスマスの祝うご馳走を盛り付ける木製の大皿があったようですが、1895年に至って磁器製が登場したということのようです。

 

 

毎年のプレートがどんどんコレクションに加わっていくようですので、最近のものは展示しきれないというお断りがありましたが、多くの来場者は自分の生まれ年のプレートをしげしげと眺めていくのだとか。ですが、長い間には二度の大戦やらなにやらがあったわけで、世相なども想像しつつ、一枚一枚見ていくのが良しといったところかも。中には、デンマーク製なだけあって「マッチ売りの少女」を描いたもの(上段中央)もありましたなあ。

 

 

デンマークゆかりといえば、コペンハーゲンの古書店に知己を得て、古い植物図譜や古地図、アンデルセン初版本などもコレクションに加わってきたのだそうな。そんな具合にコレクションには広がりも見せているようですけれど、そのあれこれをつぶさに見ていくのは、実際に大熊美術館を訪ねた時のお楽しみにされてはいかがでしょうか。なにしろ口コミ頼みの個人美術館ですものね。全貌は訪ねてご覧くださいましということに(笑)。