しばし無沙汰をいたしてしまいました。

またしてもいずこに旅に出ておったかを詳らかにすることもなく、ただ「東海道新幹線で京都へ移動…」とだけ申しておりましたが、京都といっていわゆる定番京都はさておいて、伏見から宇治川、淀川に沿って大阪へと下って行くというのが全体のイメージなのでありました。

 

これまで京都には、中学校、高校のそれぞれ修学旅行で、その後は長らくの時を経て大阪から大山崎山荘美術館を訪ねたついでに美術館「えき」Kyotoで立ち寄った時(つまりは京都駅から出ていない)、そして両親を奈良に連れて行った際に京都駅で乗り換えをした時(要するに駅から出てない)、とまあ、それだけなのですよね。考えて見ると、全くもって個人の印象ですけれど、京都にはあまりにも気になる場所が多すぎてポイントを絞り込めないから、どうにも出かけられないわけでして。気にはなるけれど敬して近づかない、いわばパリのようなところとも言えましょうか。

 

とまれ、このほど新幹線で京都駅に着くとなれば、駅から北の方にもあれこれちょっかいを出しておきたいような心持ちが少々うごめいたものの、そこは初心貫徹。駅から北へは行かない。ともかく南へということに。でもこの選択は、京都駅に到着早々、「間違っていなかった」と思い知ることになりましたですよ。予てインバウンド、インバウンドという話は聞いていたところながら、これほど酷い(?!)とは目の当たりにした状況でようやっと認識させられたのですなあ。

 

駅のコンコースを埋め尽くす外国人&修学旅行生。これに交じって日本の観光客、もちろん地元の人も混じってはおりましょうけれど、(外国人風の日本語で言えば)「ぶたまげてしまった」次第。八条口でさえ、タクシー乗り場には延々と長蛇の列ができていて、出張かなんかで来た人が急いでいるのでタクシーを使って、なんつうことは全く期待できないことでもありましょう。

 

と、京都駅で「ぶたまげた」印象はともかくも今回の旅ですけれど、背中を押すきっかけがいくつかありまして。ひとつには、ちょいと前まで書いていた「美濃瀬戸やきもの紀行」の終わりの方で瀬戸蔵ミュージアムを振り返る中で、ちとファインセラミックスに言及したことですな。もしかしてファインセラミックスに関わる資料館があったりするのかいね?と検索してみれば、まさに京セラ本社にファインセラミックス館なる施設が併設されておることに気付いた次第。京セラ本社の所在地が京都市伏見区だったのですなあ。

 

さらには先日、山梨県立博物館で企画展『物流と文化の大動脈 富士川水運の300年』を見た折、徳川家康の命を受けて富士川を舟運に適うよう開削工事にあたった角倉了以は京都市内の中心部から伏見にかけて高瀬川を開削した人でもあったことを知ったのですな。これによって、京都の中心部から高瀬川、宇治川、淀川を通じて舟運の便が良くなったのであると。ここまで来て、淀川の舟運については一昨年(2022年)に高槻に出かけたとき以来ちと気になるところではあったことを思い返し、「そうだ!伏見へ行こう」と相成った次第でありますよ。

 

折も折、あれこれと調べ出してみますと、高槻から淀川を隔てた対岸の枚方から大阪・天満橋まで、季節運航ながら淀川下りをする船があると知り、これにも乗らねばと。これで旅のフレームはおよそ出来上がった感じですが、淀川下りは5月半ばから運航されるということでしたので、これを待っていざ出立!

 

とまあ、そんなこんなのきっかけが積み重なって東海道新幹線車上の人となったわけですが、途中で気にかけていたのが「おお、これこれ、富士川!」ですな。新幹線の駅で言えば新富士駅を出てほどなくというあたりです。

 

 

山梨県立博物館の展示解説にもありましたですが、日本三大急流のひとつと言われた富士川も水量が減って(ダムで調節されて)とても舟運の可能な川ではなくなっておるなあ…としみじみ。では、淀川は?てな思いを抱きつつ、新幹線は一路西へ西へ。

 

これまた余談ながら、京都駅到着に先立って車中で昼飯をと、新横浜駅で買っておいた崎陽軒の弁当(これも駅弁と言っていいのかどうか…)を食することに。

 

 

崎陽軒のいわゆるシウマイ弁当や横濱チャーハン、横濱ピラフはお馴染みですが、これは「おべんとう初夏」と題した季節限定もの(6月15日まで販売予定らしいですが、そういうものに釣られやすく…)。もっとも、当然ながら(シューマイならぬ)シウマイはしっかり入っておりまして。

 

わらびや姫竹などの山菜と人参を炊き込んだ彩り豊かな「山菜ごはん」には、「山菜煮」と「きゃら蕗」をトッピング。 おかずには、脂ののったカレイをふんわり揚げた「カレイの黄身揚げ」、よもぎが爽やかに香る「よもぎ真丈煮」、一度凍結することでコリコリとした食感が楽しめるこおりこんにゃくを使用した和え物などが入った、初夏の味わいを少しずつ楽しめるお弁当です。(崎陽軒HP)

駅弁は冷めてもおいしくいただけることこそ肝要と(個人的なこだわりとして)思っておりますが、崎陽軒の弁当、この点にぬかりはありませんでしたなあ。およそ中華風のイメージを裏切るおかずの数々、実においしくいただけたものでありましたよ(例によって、量はすくなめですが)。

 

と、まるで崎陽軒の回し者のようになってきましたですが、ともあれ車中で昼食を済ませて、京都駅に到着。駅の雑踏に「ぶたまげた」話は先にも触れたとおりでして、その人波をかき分けて八条口のバス乗り場へ。目指すは伏見です。