鹿児島県南九州市の宿「いせえび荘」でしこたま飲み食いした翌日。前日の雨はすっかりあがって、眩しいくらいに朝日が差しておりましたよ。車で出立するまでのひととき、宿の前にある番所鼻自然公園を少々散歩に及んだ次第です。

 

 

しかしまあ、観光地にはよくよく鐘が据え付けられておりますなあ。観光客はそれほどに鐘に釣られやすいということ、実際にあるのでしょうかね…。ところで、番所鼻といってこの読み方はてっきり「ばんしょばな」だと思っておりましたら、正しくは「ばんどころばな」であると。鹿児島県観光サイトに曰く「薩摩藩の番所があったことから名づけられた」とあるのを見て、関東者としてはやっぱり「ばんしょでないの?」と思うところながら、読みにもいろいろ地域差があるということになりますか。

 

ただ、開聞岳を望む景勝の地であることは間違いない…としても、開聞岳は900mほどの高さながら周囲にはこれを遮るものがないだけに、錦江湾沿いならばかなり遠くからでも眺められるのですよね。となれば、展望場所もあちこちにあるわけですが、番所鼻に一等抜きんでているというお墨付き(?)を与えた人物がいるということで。ぽつりと建てられている石碑には「伊能忠敬先生絶讃の地」とあります。

 

 

全国の海岸線を測量して歩き廻った伊能忠敬。それこそ「絶景かな!」という場所には数多めぐり合ったことでしょうけれど、分けてもここは「けだし天下の絶景なり!」と言ったとか。見聞の多かった人だけにお墨付きには十分でもあろうかと。

 

 

ところで、自然公園内には海岸線に沿って遊歩道が設けられておりますが、取り分け通称ドラゴンホールと呼ばれるらしい海の池をひと巡りくらいはしておこうかと。

 

いかにも溶岩流が作り出した、地球外のどこかの惑星のような雰囲気もある岩が海を目前に池を作り出しているのですなあ。

 

 

 

と、歩き始めて半ばほど、海に最も奥側に入り込んだあたりで「これ、まずいんじゃね?!」と。寄せてくる波が荒々しく、しかも歩いて行こうとする先はすでにざっぱんと波をかぶり始めている。どうやら上げ潮のときに歩き始めてしまったようで…。

 

 

海の道へと入る手前にはちゃあんと注意書きが出ていたとは、こういうのは気を付けたおかんといけんですねえ。

 

 

潮の満ち引きという自然現象に敵う術もなくすごすごと退散したわけですが、晴れたといって喜んでいたこの日、移動を重ねるごとにとんでもない強風が吹き荒れるようになっていったのですなあ。すでにその予兆が波を押し上げていたのでもありましょう。

 

そうそう、番所鼻はタツノオトシゴの生息地としても知られておるらしく、「番所の鐘」(一番上の写真)にはタツノオトシゴのデザインが付いておりますし、自然公園内にはタツノオトシゴハウスなる「日本唯一の観光養殖場」もあると。入場無料で見学可となれば立ち寄りたいところでしたけれど、前日の雨で旅程が押し気味、残念ながら対面は叶わず。番所鼻に行かれる方はどんなところだか、タツノオトシゴハウスを覗いてみてくださいましね。