先ごろようやっと通り過ぎてくれたのろのろの台風7号がやってくるちょいと前の束の間、明野のひまわり畑を出かけた時以上に朝方の雲が湧いていないことを見計らって、見晴らしのよいであろうところへと出かけたのでありましたよ。

 

当初は美ヶ原とか霧ヶ峰とかいったあたりが選択肢として挙がる中、夏休みだし連休だし、そのての有名どころは道が混むと進退窮まることを想像して、両者の中間を採ることに。山梨県の小淵沢から長野県へと入り、車を走らせること1時間余りで到達したのは高ボッチ高原なのでありました。

 

 

美ヶ原も霧ヶ峰も路線バスでアプローチできるのに対して、高ボッチ高原は公共交通機関ではたどり着けない場所だというのも、車便乗が可能であった今回ならではなのですな。しかしまあ、塩尻市街から九十九折りの坂道を登り始めてなるほどと思いましたのは、「この道では、バスが通うのは無理だあね」ということ。かつて四国の剣山を目指した時ほどではないにせよ、車同士が対面ですれ違うに些かの難儀を伴う道であったことは間違いないところでして。

 

ただ、最高所である高ボッチ山頂1665mのちょいと手前まで駐車場が整備されていまして、駐車場のところですでにこの展望なのですな。知名度が今ひとつであることに感謝してもしきれないような。

 

 

正面に連なっているのは北アルプス、左寄りに大きな雲の湧き立っているあたりが穂高連峰になります。このスカイラインを右手の方に辿っていけば後立山連峰が望め、左側に目を向ければどっしりした木曽御嶽山の山容がくっきりと眺められるのですなあ。ですが、高ボッチの真価はこれに留まらないという。

 

 

もはや高木の絶えた草原の中の緩やかな登りを400mほど進みますと、看板に「日本一のシャッターポイント」とあるのが伊達ではない展望台へと到達できるのでありますよ。先ほど眺めた北アルプスはもとより、ほぼほぼぐるり360度の眺めが得られる。シャッターポイントという言葉が使われていながら、魚眼レンズでも収まりきらないところであろうかと。

 

 

といって山頂標識の向こう側は、駐車場のある展望台からは望めなかった八ヶ岳なのですが、すっぽり雲の中であるのは何とも残念至極。ですが、高ボッチの真骨頂はこちらですね。諏訪湖をすっぽり眼下に収めることができるわけで。おまけに、雲間の見え隠れながら富士山までも見えています。

 

 

折しも諏訪湖の湖上花火大会は8月15日開催が予定され(高ボッチに出かけたのはその二日前)、「中央道の諏訪湖SAで花火見物するのはいけんよ」という立て看板がそこここ置かれてありましたけれど、いささか遠目とはいえこの高ボッチ、花火を見下ろす絶景ポイントでもあったかもしれませんですね。ちなみに駐車場近くにはテント場がありましたので、花火見物のあとは満天の星を望む一夜という、絶景フルコースが楽しめたのかも(何しろ、とても夜道で車を走らせられる場所でもないので、泊まるしかないでしょう。美ヶ原のような宿泊施設は無し…)。

 

ところで四方に眺望がきく高ボッチは、いわば長野県のへそ(でべそであるか…)ともいうべき地点なのだそうで。山頂標識の傍らには公共1級基準点「信濃の国の重心」を示すモニュメントが埋め込まれておりました。

 

 

で、右側に縦書きで記されているのはこのような一文なのですな。

信濃の国は十州に 境連ねる国にして
聳ゆる山はいや高く 流る川はいや遠し
松本伊那佐久善光寺 四つの平は肥沃の地
海こそなけれ物さわに 万ず足らわぬ事ぞなき

まあ、お国自慢と思しきところながら、どうしても「海なし県」であることはコンプレックスなのかもしれませんですなあ。

 

ともあれ、四方に遮るものなく眺望が良い…ということは、吹き抜ける風が実に涼しいわけでして、ともすると肌寒いくらいでもありました。ひたすらに暑い今年の夏ながら、かくも天然クーラーがきいているところがあったのだなあと、しみじみ思う高ボッチ高原なのでありました。

 

 

おっと、申し遅れましたが、高ボッチという地名の由来は、伝説の巨人「だいだらボッチ」が腰を下ろしてひと休みしたという言い伝えによるそうで。一番上に載せた案内図の片隅にだいだらぼっちがおりましたですねえ。