立川駅南口の賑わいからちと外れたあたりで、『孤独のグルメ』の井之頭五郎よろしく昼飯どころを探していたときのこと。ふと覗いた裏道にひとつ小さなお店を発見したのですね。ぼけぼけ写真で恐縮ですが。

 

 

「島想食堂」(これが「しまおもいしょくどう」ではなしに「しまおもうしょくどう」と読むとは後から知ったこと…)という名称からして、即座に浮かんだのは沖縄料理?と。

 

 

店頭に置かれたメニューによれば、ランチはずばり!「ごはんセット」オンリー。ただ、それだけでも購入可能なお惣菜が数種類ありまして、それをお好みでチョイスする形のようでありました。さほど詳しくないながら、メニューに掲載された写真を見る限り「沖縄ではないのか…」とも(何せ、ゴーヤチャンプルーが無いようですし)。ではいったい?と興味にかられて店内へ入ってみますと、「おお、小笠原諸島であったか!」と気付かされたのでありました。

 

 

肉と野菜のバランスを考えて?チョイスした3品は左上から右へ、厚揚げの豚肉巻、地元野菜を使ったコロッケ、そして竹輪と小松菜のおひたし。ごはんと味噌汁、つけものはセットの基本ということになります。

 

おいしくいただいて不平不満は無い一方で、さほどに小笠原らしさも想像できないような。ですが、ディナータイムともなりますと、四角豆の天ぷらだの、ウミガメの煮込みだの、さらには「ピーマカ」とか「ダンプレン」とかいう郷土料理(もはやどんなものだか想像もつかない…)をお酒のつまみとして数々提供されるよし。やはりランチでは限界がありましたかね。

 

とまれ、沖縄料理はいくつか馴染んだ名前のものもありますし、店も結構たくさんありますが、同じ東京都の島ながら小笠原諸島の食事など全くもって知らなかった世界でありましたよ。ちなみに同店は小笠原アンテナショップも兼ねていて、片隅には小笠原名物が並べられているという。グァバうどん?薬膳島辣油?モリンガ茶漬け?、果てはオガサワラオオコウモリタルト?まあ、最後のは観光地によくある甘い物系土産物で、よもやオガサワラオオコウモリが練り込んであるという類いではなく、コウモリ形をしたお菓子なのでしょうけれど。

 

しかしまあ、ことほどかほどに小笠原のことを知らないのは、太平洋の荒波に揉まれつつ一昼夜(ちょうど24時間)を船の中で過ごしてようやっとたどり着ける場所だったりするからでもあろうかと。ユネスコ世界自然遺産に登録されている貴重さ、稀少性から空港を作らずにいることにポリシーが窺えるところとして理解できますけれど、やはり行きにくいこととは引き換えになりますですねえ。

 

と、そんなことに思い巡らしていた折、ふいに思い出したのが先月のミューザ川崎ランチタイムコンサートなのですね。演奏後のアフタートークで加羽沢美濃が、小笠原に向かう豪華客船クルーズの船内イベントでピアノを弾くオファーを受けたことがあり、1名同行可としてトークの相手であるランチタイムコンサートの共演者(大学時代の友人)を連れ立って出かけた話をしたいたのでありますよ。曰く、あまりの揺れに船室に籠り切りであったとか。

 

確かにクルーズ船は「にっぽん丸」と言っていたでしょうか。1990年に進水した現在のにっぽん丸(代替わりをしているので)であれば2万トンを超える大きな船なのですが、それでもげろげろ(汚い話で恐縮ですが)だったとすれば、通常の小笠原航路で使われているおがさわら丸はその半分くらいのトン数で、揺れ方もまた…と思ってしまうところです。もちろん、横揺れ防止のフィンスタビライザーは付いているわけですが、小笠原海運HPにも「外洋を航行しますので、全く揺れないとは言えません」と。これがどのくらいであるのかは、各自の想像に委ねられて…。

 

ところで、グロッキー状態であった加羽沢さん、そこはそれプロとしてイベント演奏は乗り切ったようですけれど、ここまで来て今さらながら、ランチタイムコンサートの当日に加羽沢オリジナルが2曲ほど演奏されたものの、加羽沢作品がどんなであるか、ピンと来ていないことに気付き、近くの図書館でCDを借りてくることに。聴いてみたのがこちらの1枚なのでありました。

 

 

加羽沢美濃のピアノをフィーチャーしつつ、弦のアンサンブルなどが寄り添って、なかなかに上質なサロン・ミュージック風な仕上がりといったらいいでしょうかね。決して軽んじているのではなくして、穏やかな旋律の中には確かに琴線に触れてくるものもありますしね。アルバム・タイトルにもなっている『やさしい風』ですとか、最終曲の『夕焼け雲』などは取り分けて。なんかこう、懐かしさを醸すといいましょうかね。

 

演奏者のコンディションがよろしくない中でしたでしょうけれど、豪華客船の中でこうしたメロディーが聴けたならば、さぞ贅沢な時間を過ごせたのではないかと想像してしまいましたですよ。が、考えてみれば、聴いている側のコンディションもなかなか手痛い状況だったのでしょうなあ。さてはて、東京都の中であるという小笠原、果たして出かけることがありましょうや。船は嫌いではないのですが…。