日本のコンサートホールでも立派なパイプオルガンが備え付けられているのはそこここで見かけるところながら、普段オーケストラの演奏会を聴く限りにおいては(宝の持ち腐れと言ってはなんですが…)オルガン込みの演奏を聴く機会は比較的少ないような。だからこそ!なのかもしれませんが、あちこちのホールでオルガンを気軽に聴いてもらおうという目論見か、ランチタイムコンサートのような形でお披露目されることも数多あるわけで、此度はサントリーホールの「オルガンプロムナードコンサート」を聴いてきたのでありますよ。

 

 

予てサントリーホールには何度か演奏会を聴きにいっておりますが(他のホールに比べて少ないのは交通事情の故ですが)、常々そのホール・トーンには感心しきりであったりするわけながら、そこに据えられたオルガンの真価に触れることはついぞ無かったような。やっぱり、サントリーホールの音はいいですなあ。

 

オルガンは多彩なストップを使い分けることで、同じ曲でも演奏者によっては全く異なる響きを作り出すことができますですね。一応、「ストップ」のことを説明しますと、といってWikipediaの受け売りですが、こんなふうになろうかと。

オルガン(パイプオルガン)におけるストップとは、オルガンの音色選択機構であり、これによってピッチや音色の異なる複数のパイプ列から発音するパイプ列を選択する。

ちなみに近頃耳にしたオルガンとしては、東京オペラシティ・コンサートホールのものは54ストップ、ミューザ川崎のものは71ストップで、単純に言えばこれが多ければ多いほど、演奏で音色のバリエーションを作り出せるということになりましょう。で、サントリーホールではこれが74であると。

 

いずれのホールでも、一度の演奏で全てのストップを駆使して演奏が行われるものではないところながら、今回登場した中澤未帆というオルガニストによる演奏では、結構ハスキーな音色を選んでいたのか、その点が印象的でしたですよ。

 

特に前半の2曲、ヴィエルヌとコレア・デ・アラウホの曲において。最後に演奏されたデュリュフレのコラール変奏曲では(特に始まり部分で)オルガンにいかにもな輝かしい音色が響き渡ったりしたものですから、それとの対比においてもなおのこと印象深いものとなったものです。もっとも、さほどオルガンに詳しくありませんので、取り分けサントリーホールのオルガン特有のストップを使ったのであるかは分かりませんですけれどね。

 

ただ、近頃ともにオルガンの音色を耳にする機会を得てようやっと、その音色を楽しむのもオルガンの聴き甲斐のひとつなのであるなとは改めて。何しろ、こう言ってはなんですが、そもそもオルガンの曲をどれほど知っているかとなれば、「バッハ名曲集」みたいなCDがあったら収録されるであろうものくらいしかないわけで(笑)。

 

そうではあっても(2019年を最後に出かけられておりませんが)ヨーロッパに出かけて教会でふとパイプオルガンの演奏会といわず、たとえオルガニストの練習であっても、その響きを耳にしますと「ええなあ…」としみじみ感じたりはするのでして、キリスト者にとっては教会という大伽藍の中に響き渡るオルガンの響きというのが、神への畏怖を掻き立てて信仰心を弥増す効果を生じているのかもと、思ったりもしたものです。

 

ともあれ、少しずつですけれど、オルガンの音色に馴染みが出来てきたように思う今日この頃、ハンブルクあたりの北ドイツの町々で繰り広げられる「orgel sommer」(「オルガンの夏」ですかね)やフランクフルトの「Museumsuferfest」の際に行われる「orgelmeile」(オルガンのマラソンコンサートのおような)をまた聴きに行きたいものだと思ってしまいましたですよ。どこの教会のオルガンもそれぞれに唯一無二の楽器なわけですから。コロナは落ち着き気味にはなってきているも今少しの様子見とともに、円安が何とかならないことには出かけにくさは残るような気がしておりますけれどね。