東京オペラシティのコンサートホールで、月1回開催されている「ヴィジュアル・オルガンコンサート」。ずっと以前から開催されていることは知っていましたけれど、平日の真っ昼間に無料招待制とあっては中々出かけることもままならず。されど、もはや仕事の縛りが無いものですから、ようやっと出かけることができたのですなあ。

 

 

それにしても「ヴィジュアル」オルガンコンサートとは?…ですけれど、基本的には奏者のうしろ姿が見えるばかりのオルガン演奏に際して、手元や足元のクローズアップ映像をリアルタイムで映し出すという仕掛けがヴィジュアルたる由縁なのでしょう。フライヤーの写真でも、誰もいないステージ状にスクリーンが接地され、映像が映し出されているのが(なんとか)判るかもしれません。

 

とまあ、かようなオルガンコンサートの、取り分け今回の11月開催分はオルガン独奏のみではなくして、「トランペットとオルガンによる多彩なトッカータの世界」というもの。興味倍増と言ったところでしょうか。

 

ところで「トッカータ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは…というばかりではなしに、むしろパイプオルガンの曲で最も世に知られているのが、J.S.バッハの「トッカータとフーガ 二短調」ではなかろうかと。あの印象的な出だしはバロック音楽、クラシック音楽の演奏会の領域を遥かに超えて、映画やドラマなどでも印象的に使われていたりしますから。さりながら予て聞き及びもし、また先日読んだ『クラシック偽作・疑作大全』にも偽作の疑いありとされておりましたですなあ。果たして「実はバッハ作では無かった」と断定される日がくるのでありましょうか…。

 

と、それはともあれ「トッカータ」というのは、バッハの他の曲にも別の作曲家の作品にも出てくるところですけれど、要するに「つかみ」というか、強烈な「マクラ」とでも言いますか。も少し学術的な?説明として、今回の演奏会プログラムにあった説明を引用しておくことにいたしましょう。

「トッカータ」とは、イタリア語の「toccare」(触る)に由来します。16、17世紀頃のイタリアにて、教会や宮廷などに置かれた鍵盤楽器で本格的な曲を弾く前に、試し弾き、指慣らしとしての即興的な演奏が発祥とされ、即興的な要素を持つ、速い旋律が特徴の楽曲を「トッカータ」と呼ぶようになりました。初期バロック時代より曲の名前となった「トッカータ」は、その後進化を遂げながら、今日にいたるまで、鍵盤楽器作品を中心に、様々な作曲家により作曲されています。

かかる紹介どおりにプログラムは、バロック期のものと20世紀(つい今世紀と言いそうになる…笑)の作品とを取り混ぜた内容でして、パイプオルガンといえば古い曲ばかりをイメージするところながら、いわばシンセサイザーの原型のような多彩な機能を持ったオルガンの特性を生かした現代曲もあるのだと改めて。それはそれで興味津々なのですけれど、やはりイメージにそぐうバロック音楽との相性は実にしっくりしたもので。

 

まして、トランペットとのデュオにおける祝祭感は心躍るというか、心晴ればれといいますか。ジョヴァンニ・マルティーニの「トッカータ」やヴィヴァルディ作品をバッハがアレンジしたBWV972 の2曲を聴くだけでも、出かけた甲斐があったというものです。いずれもトランペット&オルガンによる演奏をYoutubeで視聴することができますので、ご興味おありの方は是非どうぞ。とはいえ、コンサートホールの広い空間で盛大に鳴り響くオルガン、そしてバルコニーから吹き降ろされるトランペットの音はその場にあってこそ。自宅のステレオでは再現できない音の洪水だものですから。実に気持ちがいい。爽快な気分となってホールを後にしたのでありましたよ。

 

会場内を見回す限りまだまだ座席には余裕がありましたけれど、一応抽選ということですので毎度「当選!」とはならないかもですが、またの機会を楽しみにしたいところなのでありました。

 


 

というところで、また明日はお休みを頂戴いたします。月例となってきている両親の通院介助はもそっと先なのですが、それを前に父親が別の検査を受けることになりまして、やはりここは付き添っておくかと。ではまた(おそらくは)明後日(11/13)にお目にかかりますです、はい。