高槻で食したものの中でカレーを引き合いに出して思い出したわけでもありませんけれど、先に川崎に出かけた折の昼食ではかようなお店に入ってみたのでありましたよ。看板には本格ネパール・インド料理とあります。

 

 

いつの頃からか、町なかにインド料理店、時にはインドに加えてネパールとかパキスタンとかが並ぶこともありますけれど、要するにカレーを食せるお店がたくさんできていますですね。お店の壁面に写真入りのメニューを大々的に表示している形は、店の名前こそ違えど「どこかに共通したウラがあるのでは」と感じさせ、ちらちらと労働環境の問題も漏れ聞こえてくるようになっていたりもするような…。ちょいと前に読んだ中島京子の小説『やさしい猫』の巻末参考資料にも、そんな関係につながるものがあったやに思うところです。

 

ですが、ここではそのあたりに深入りはしないでおくとして、この本格ネパール料理店に入ってみたのはカレーを食したかったわけではないのでして、「カレーでないものもあるのか…」ということなのですなあ。その料理というのがこちらです。

 

 

結局のところはカレーライスではないとしてもカレーうどんか、といった印象ですが、メニューに書かれてあった料理の名前は「チベティヤントゥクパ」となりますと、チベットの料理なのではなかろうかと。真っ赤に見えてさほどに辛くない(一緒に出て来たスパイスをふりかけると、立ちどころに辛くなる!)スープに、麺と併せてごろごろと小籠包のようなものが入っている。これが特徴でしょうか。

 

後付けにはなるものの「トゥクパ」を検索しますと、Wikipediaに「チベット料理やブータン料理の一種で、チベット文化圏で作られる、日本のうどんに似た食べ物」とありまして、「なるほどチベット料理か」と思うところながら、どうもチベット料理のトゥクパに小籠包のようなものは入っていないようすなのですな。ですが、同じ項目には「トゥクパはチベット食レストランではモモと並んだ2大スターであり、メニューがこの二つしかない場合もある」とあって、ここに出てくる「モモ」というのが小籠包状の食べ物であるような。でもって、トゥクパにモモが入ったものとなりますと、ネパール料理店のメニューとして発見できたりするのでありますよ。

 

ここで改めて世界地図で確認しますと、チベットとブータン、ネパールはヒマラヤの大山脈を挟んで隣り合わせにある関係なのですよね。もちろんおいそれと行き来できるような場所ではないとしても、おそらく峠道(それも富士山より遥かに標高が高いところ)を通り抜けて人々の往来はあったではないですかね。今こそ容赦無く国境線が引かれてはいますけれど、人々の往来は文化交流に繋がり、料理もまたそのひとつとして似たものが食されたりもしようかと。

 

料理にしてもとかくどこそこ国料理という括りを考えてしまうところながら、もちろん国や地域ごとに個性がある反面、国境にかからわない広がりというものも確かにあるわけですね。と、そんなようなことに、直近でまた思い至ることにもなったのですが、こちらのお店を訪ねたことからでもありまして。

 

 

立川市のけやき台団地に面した、非常にローカルな商店街の片隅にあるアフリカ雑貨を扱うお店兼カフェでして、セネガル料理やガーナ料理も食せると聞き及び出かけたという次第です。

 

 

原色鮮やかな衣類や雑貨の並んだ店内のカフェスペースで、この間、日野オートプラザでダカール・ラリー関係の展示に触れたこともありましょう、セネガル料理の「プレヤッサ」を目当てにしていたのですが、どうやらこれは夏場限定であったらしく「終わってしまった」と。されば、ガーナ料理の「フロー」とやらを尋ねたところ、「これもない」と申し訳なさそうに。ご飯ものはピーナッツ・カレーがあるというので、取り敢えずというか止む無くというか、それを。いずれにしても、またカレーでして(笑)。

 

 

ともあれ、この料理もアフリカで食されているものであるか?と尋ねてみるに、「(アフリカの)西の方ではよく食べます」てな応答が。で、アフリカ大陸北西部のでっぱり(セネガルのあるところですな、海岸線を南に回り込むとガーナに至る)を思い浮かべて、ざっくりと「西の方ですか」と。

 

アフリカではほんのお隣どうしで内戦に及ぶなどの部族間対立があったりしますけれど、そうなる以前と言っていいのか、これまたざっくりとアフリカの西の方でもさまざまな部族が相互に行き交っていたのではなかろうかと。そこでは、先にも触れたような文化交流、引いては料理も似たものがあったりするという状況が生まれもしたことでしょう。その地域的広がりは国境線とはやはり関わりのないところでありましょうねえ。

 

ところで、店員さん(アフリカのどちらかのお国の方と推察いたします)の曰く、近々メニュー変更になるということで、どうも端境期に来てしまったようですが、やがて新メニューが固まるとこのピーナッツ・カレーもそこに連なるのでしょうか。カレーとは言え、およそ辛くはない味でしたなあ。鶏肉ごろごろに日本のしめじ(の小さいの)のようなキノコが入っていて、これもおいしくいただきましたですよ。

 

ちなみに「Gallery & Cafe ADEGO」というお店の「アデゴ」という名前はガーナの言葉(だったかな…)で、「Let's go」の意であるとか。向こうで「いくぞ!」と言う時に「アデゴ!」と言うんだそうです。ま、新メニューが落ち着いたら、またアデゴってみようかと思っておりますよ。