父親と母親と、それぞれの通院のたびに介助に出かけるのは些かいやはや…と思っておりましたですが、幸いにも次回からは両親ともども同じタイミングの通院予約となってやれやれ…と。とまれ、隅田川の向こう側にある両親のところへ出向いたついでに、ちと両国に立ち寄ってきたのでありますよ。覗いたのは、かようなところです。

 

 

大きく「AH BASE」と書かれてあるのはどうやら愛犬家御用達の施設のようでして、個人的には関わりないところでして、下の方に小さく右向き矢印が記されている方、こちらが目的地。小さくて文字は読めませんでしょうけれど、NTTドコモ歴史展示スクエア「入口はこちらです→」と書かれてありまして。

 

ちょいと前、東京・武蔵野市にありますNTT技術史料館へ足を運びましたですが、その名のとおりに技術面での詳細な解説(その筋の方々にとって十分であるかは別ですが)が大きなスペースを占めていて、なかなかに太刀打ちできない内容だったのですな。ただ、訪ねた折に受付近辺で見かけた別施設の案内リーフレットがこちら、NTTドコモ歴史展示スクエアを紹介するものであったわけで、「なあんだ、こういう易しそうな内容と思しき施設もあるのであるか」と気にかけておった次第。ということで、この際にと思い立ったのですなあ。

 

両国駅前の国技館を裏側に回り込んだ先、NTTドコモ墨田ビルの1階に展示スペースが設けられておりましたけれど、すぐさま思い浮かんだのは「これだけ?」というもの。とはいえ、モノ作りの町である墨田区が展開する「すみだ小さな博物館」(工房の片隅に少々の展示があるとかいうもの)のひとつになっているとなれば、まあ、なるほどと言いましょうか。

 

 

とりあえず施設名のその名のとおり、「歴史展示コーナー」から見ていくことに。ただし、NTT全体ではなしくて、あくまでNTTドコモとしての歴史をたどることになりますので、年表は「1895年 イタリア実業家マルコーニによる世界最初の無線電信機発明」からスタート。この際、有線は範疇の外というわけですね。

 

流れとしては、いかにも無線頼りであろう港湾船舶電話の商用サービスが日本では1953年に始まり、その後これが応用されて1965年に新幹線電話へ発展したと。ちなみにこれが広く自動車電話として利用されるようになるのは1979年であったそうな。大学を卒業してすぐに就職した職場では、社長車に自動車電話を搭載していたと記憶しますが、当時はまだ結構新しいサービスだったのですなあ…。

 

 

その頃の自動車電話は国立科学博物館の「重要科学技術史資料」に登録されているそうですから、技術史の一時代の証人のようなものでしょうか。携帯電話が著しく普及した現在では、「今さら自動車電話?」と思いがちながら、携帯電話のネットワークでカバーされない、いわゆる「圏外」の場所でも通話を可能にする衛星電話は生きているのですな。特殊な用途かもしれませんですが、衛生電話用にはこんな丸いカバーの被さったアンテナを搭載しているそうです。

 

 

右側(カバーの被さった方)が車載用、そして左側(カバーを取り去った状態の方)が船舶用ということですけれど、船舶用を見ると分かりうやすいように、丸い形状なのはレコード・プレイヤーのターン・テーブルのように、アンテナを載せたお皿がGPSを自動追尾(ミサイルのようですなあ)して、常に電波をキャッチできるようになっている…と、展示コーナーに一人だけ配置されていた係の方が教えてくれました。

 

ところで、「携帯電話が著しく普及した現在では…」てなことを言いましたですが、その普及率の推移も紹介されておりましたですよ。日本で初めて携帯電話機が発売されたのは1987年であったそうな。で、2年後の1989年の携帯電話普及率はたったの0.3%であったのは、今からは想像もできないほどに携帯しにくい大きさだったからでもありましょう。

 

 

それでも右側に見えるバッグのような本体の付いたショルダーホンよりは格段にコンパクト化したわけで、ショルダーホンの発売された1985年からたった2年で、本体部分がまるまる不要になるくらいの集積技術が進んだとは、その後の加速度的な技術革新を思わせるところでもあろうかと。1991年には、ほぼほぼその後の携帯電話らしい形となる「超小型携帯電話ムーバ」が発売されることになりますが、それでも翌々年1993年の普及率は1.7%であったそうで。

 

こうした普及率の低迷状態にあって一大ブレイクスルーとなったのが、どうやら「端末お買い上げ制度」が始まって1994年であるとか。それ以前の携帯電話機はレンタル制で契約には保証金10万円が必要であったところ、それぞれに電話機を買うことで保証金負担の必要がなくなり、一気に敷居を下げたのだそうです。1994年の普及率はまだ3.8%ですけれど、1998年には38.6%、1999年には47.5%、そして2000年には56.0%と爆発的な普及を見せて5割超えにと到達したのですなあ。

 

その後も普及率は上がり続け、2010年には88.5%まで行った…ところで、紹介が「スマートフォン普及率」へと変わります。こちらの推移は端折りますけれど、2020年のスマホ普及率は84.4%(内閣府調べ、これ以前の数値は総務省調べ)ということで。いわゆる携帯電話がガラパゴスと言われるのも当然なのでありましょう。昨今ではスマホ所持が前提となっている各種サービスが当たり前のようにあることもまた…。

 

と言いながら、個人的には未だにガラケー所持者であって「スマホがなければできないことはやらない」ことにしておりますよ。だんだんと制限は多くなってきているようにも思いますが、それでも差し当たり「スマホを持つか」と考えたことは一度もないのですね。それだけに、電車に乗ると誰もがスマホに見入っているようすを見ると、「なんだあ…?」と思ったりするわけですが(笑)。

 

とまあ、そんなレトロ的なる者としては歴史展示を「なるほどね」などと思いつつ見て周ったわけですが、はてさて技術が進むとはこの後さらにどんなふうになっていくのでありましょうかね。