例によって録画で見ているので放送とリアルタイム同期する話ではありませんけれど、NHK『笑わない数学』を興味深く見ているのでありますよ。「難解な数学の世界を大真面目に解説する異色の知的エンターテインメント番組」と紹介されてはいるものの、こてこての文系頭ですので「う~ん、面白い」というところまで行きついておらず、結果「興味深い」という言い方をしてみたという…。

 

これまで「素数」、「無限」、「四色問題」、「P対NP問題」、「ポアンカレ予想」、「虚数」、「フェルマーの最終定理」が取り上げられてきましたですが、どうしても「虚数」には付いていきにくいところがありますなあ(もちろん、その他がすとんと落ちているわけではありませんけれど)。なんとなれば、2乗してマイナスになる数なんてMCの言葉ではありませんが、「ありえないでしょう!」と。

 

そもそも2乗というのは掛け算をした結果なわけで、掛け算の理屈としては

「プラスとプラスをかけ合わせれば、答えはプラスとなる」

「プラスとマイナスをかけ合わせれば、答えはマイナスとなる」

「マイナスとマイナスをかけ合わせれば、答えはプラスとなる」

という三種類ではなかったかと。学校で習いましたですよね。

 

ただ、惜しむらくは(文系頭の故でしょうか)、この理屈を丸暗記しているだけなのですなあ。「なぜそうなのか?」という理屈の本質を脇におきっぱなしにしているわけです。マイナスとマイナスをかけ合わせると、どうして答えはプラスになるのか、そのあたりを置き去りにしてしまっているという。

 

番組の中でも数式を使ってこれの証明をやってましたですが、文系頭としてはついつい言葉で理解したくなるところでして、どうやらこんなことになるようですなあ。

 

プラスとマイナスは増えていく方向が反対向きになっていますけれど、Xという数字にYという数字を掛け算すると、Yの数字が持つ方向にXが増えることになる。Yがプラスの数字であればプラスの方向に、Yがマイナスの数字であればマイナスの方向に、という具合です。でもって、XとYがいずれもマイナスの数字である場合には、Xというマイナスの数字がその数字の反対方向に向かって増えるということになる。つまり、プラスになるのであると。

 

このプラスの方向、マイナスの方向というのは、「0」を挟んで左右に伸びる数直線を思い描くと分かりやすくなりますが、さてここで「虚数」です。2乗(つまりは掛け算)してマイナスになるとは、上に挙げた3つのパターンのいずれにも属さない。ということは、一般的に考える数直線上には無い数ということになるようですなあ。これを番組の中では、横に伸びる数直線に対する縦軸として表しておりましたが、これには「そういうことであったのか!」と思ったものです。

 

ヒトはとかくその目に見えるものの存在を疑わないですが、見えないものの実在を確信するのはなかなかに難しいわけで、とりわけ数学のような概念(でしかないもの)を受け止めるのは少しずつ少しずつ進んできたのでありましょう。専門的に取り組んでいる方々はその概念世界の先の先を行っているものの、一般人はそうそう追いつけるものではないということに、この虚数の話でも思い至ったような次第でありますよ。

 

なかなかに興味深い数学。されど、これを(個人的に)面白いと思える日が来るのかどうかは定かではありませんなあ(笑)。