ということで、東京・江東区にある東京都生活文化局計量検定所内の計量展示室を訪ねた…というお話の続きになります。計量の歴史の始まりから見て行ったわけですけれど、前回はまだまだ古代文明の時代から抜け出せておらず、これをこのまま時系列で紹介していくとなりますとあと何回掛かることやら。ですので、やおら視点を変えまして、ひとまとめに「度量衡」と言われる計量のそれぞれを見ていくことにいたしましょう。

 

まずは、長さをはかる「度」から。「どのくらいの長さ?」というときには何かしらの単位が必要になりますけれど、これがヒトの体の部分を「ものさし」として単位が生まれたことは洋の東西を問わず。何かとヒトはかけ離れた土地にあっても考えることは同じということがありますねえ。

 

 

例えば、英語の「フィート(単数はフット)」が足のサイズをものさしとして単位になったことはよく知られておりますな。ちなみに「インチ」は、親指の幅に由来するのであるとか。どんな思いで、そんなところに着目したのでありましょうかね。

 

実際に、だいたいのところをはかるにしてもヒトの体には個体差が大きくありますので、ものさしといっても一様ではないものになってしまいます。従って、当然に統一基準が作られてはいきますけれど、歴史が進んで世界がだんだんと狭くなってきますと、国を跨いで長さの単位が違うことに不便が生じることに。

 

 

そこで登場するのが「メートル法」という新たな単位でありますね。もっともフランス発祥というこの単位、敵対意識が強いのか、英国はじめ使っていない国々は今でもありますけれど。ともあれ、誰にも文句を言わせない「単位」としての拠り所に地球を持ち出すあたり、18世紀末に至るまで科学の積み重ねあってこそではありましょう。「1m(メートル)」の長さは、このように決まっているのだそうです。

地球の4分の1周にあたるパリを通る北極から赤道までの子午線の長さを、最新の測量の技術を使い実測と計算で求めて、その長さの1千万分の1を1メートルとする。

ちなみに「メートル」の語源は、「測ること」を意味するギリシア語の「メトロン(metoron)」だそうですので、ウルトラセブンに登場するメトロン星人は「光の国」ならぬ「はかりの国」からやってきたのでありましょうか…とは余談も余談ですが。

 

さて続いては体積をはかる「量」と重さをはかる「衡」ですが、考えてみると計測の大元に天秤があったということになりますと、度量衡という文字の並びとは異なって重さの単位が一番最初に取り上げても良いのかもですね。とまれ、重さの単位として知られるのはグラム、キログラムというものでして、やはり長さの単位がメートルと定められる頃と時を同じくして、体積の単位(リットル)と併せて考案されたようですなあ。

1デシ立方メートル(1メートルの10分の1=10㎝の立方体の体積)を1リットルと定義し、1リットルの容積を満たす純水の質量を「1キログラム」とする。

地球の大きさから導かれた長さの基準から発して、体積の基準、重さを基準が作られたのであるということで、まあ、文句のつけにくい方法を考えたでしょうかね。で、これまたちなみに「グラム」の語源もやはりギリシア語で、「ちいさいもの」の意であるとか。

 

ところで、日本では…となりますと、長らく尺貫法が使われてきて、明治に至るも当初は尺貫法による度量衡を法制化したということながら、これまた近代国家の体を示すには適当ではなさそう。そこで、メートル法を採るのか、ヤード・ポンド法を採るのか、大いに議論があったということでありますよ。国際的な動きとしては1875年(明治8年)に「メートル」を世界標準にしようというメートル条約というものが結ばれますけれど、フランス政府から明治日本に対して直接的に勧誘があったのだとか。そんなことも関わって、日本に「メートル法」が取り入れられたのでもありましょうかね。

 

と、展示の方は基本的な「度量衡」に関わる解説に加えて、距離をはかるタクシーメーターとか、温度をはかる体温計とか、計量に関わるさまざまなものを紹介しておりましたよ。こういっては何ですが、お役所の片隅に「ま、やっていることのPR、つまりは役所の存在意義を知ってもらうために作っておこうかな」的に設けられた施設という感がありあり。両親の住まいを訪ねるついでであって、さほどに期待して立ち寄ったわけではないのですけれど、それでもそれなりに面白く見てきたものでありましたよ。

 

 

そうそう、お役所としての役割という点では、タクシーメーターがきちんと走行距離(時に時間併用ですが)を算出できているのか、検査するというのも計量検定所の仕事なのですな。毎度同じ2点間をタクシー移動して支払額が異なることがあるにせよ、時間併用であるが故の違いなどであって、検定所としてはちゃあんと調べていますよ、場合によっては営業所に立ち入り検査もしますと、紹介していましたっけ。