先ごろ、八ヶ岳の麓にある小淵沢絵本美術館を訪ねましたお話の続きです。2階の展示室に上がろうかとしていたところからになりますけれど、階段部分の壁面も展示で受けつくされておりましたなあ。

 

 

踊り場のところまではいわゆる「夢見る」系の感じでありまして、可愛らしい妖精を描いた絵がたくさん。主にシシリー・メアリー・バーカーという英国の童話作家・挿絵画家のものが展示されておりました。

 

 

 

それにしても、妖精のイメージといえば英国にとどめを刺すような。正しくはケルトの信仰が入り込んでいるのでしょうから、アイルランドというべきなのかもしれませんけれど。羽根を生やした小さな姿で飛び回る姿、これはディズニーの『ピーター・パン』が思い出されますようにアメリカにも受け継がれておりますね。

 

一方、階段の踊り場からの2階も含めて、「これもまた絵本、すなわち子供向けなのだよなあ…」という重厚感といいますか、いささか暗い、ともすると怖いような絵本原画が登場するのでありますよ。

 

 

大人目線で考えてしまいますと、子供には明るく朗らかでいてほしいということから、なるべく暗いもの、怖いもの、美しくないものから遠ざけたいと考えたりしてしまうところもあろうかと。さりながらその判断基準はすべて大人によっているわけで、子供たちは大人が先読みして考えてしまうような思いとは別の感想を抱いているのかもしれない。

 

それをどう捉えたらいいのかは判断が難しいところですけれど、きれいきれいとかかわいいかわいいとか、そんなものばかりで世の中はできていないわけで、あまりに排除にかかってしまうと、世の中はばい菌だらけだからと闇雲にあっちもこっちも除菌しまくった結果、善玉菌まですべて抹殺してしまうことになるのかもしれませんですね。それこそ、上手の手から水が漏るような…。

 

 

作品の一点一点にフォーカスすることは不可ですので、はっきり画像を示せませんと分かりにくいでしょうけれど、例えば展示作品でいえば、スタシス・エイドリゲヴィチュス(一般にエイドリゲヴィチウスとも)の仮面の像などはどうなんでしょう、大人としてはアンソールの絵画作品ではありませんが、ついつい深読みを巡らしてしまうところながら、子供の受け止め方は果たして…。

 

 

ま、こうしたあたりに過剰?反応するのは、個人的に怖いもの苦手であるからかもしれませんですが、それを改めて考えてみますと、子供の頃に実は怖い絵本か何かを見てトラウマになっているとか…。理由は定かではありませんが、ともあれ今となって思うところは、子供たちを無菌室に押し込めるのもまた違うだろうなあということで。もちろん夢見る系もきれいきれい、かわいいかわいいも悪いことはないでしょうけれど。

 

 

とまあ、そんな展示を見て回った後はラウンジでワンドリンク・フリーのアイスコーヒーを頂戴いたしました。そこでつらつらと考えたのですけれど、いわゆる高原と言われるあたり、とりわけ(なのかどうか…)八ヶ岳の周辺には絵本とか童話とかに関わりある展示施設が多いのは何故なんですかね。そうした中ではしばらく前に信州・原村の「八ヶ岳小さな絵本美術館」を訪ねたことがありましたけれど、他にもいろいろとあるわけでして。それこそ(いささかステレオタイプ的発想ですが)木立に囲まれた中にあって、いかにも妖精が出てきそうなといか、そんな雰囲気が絵本に馴染む感覚があるのかも。それはそれでなるほどではありますね。