またもさりげなく小淵沢のアパートに行っておりました。先月に北杜市の桜を見て回ったり、信州高遠まで出向いたというお話をつい先ごろ終えたばかりですけれど、GWはどこへ行っても混んでおりましょうし、せめてものお出かけというわけで(笑)。

 

でもってこのアパート、とやかく言えた義理ではありませんが、TVは置いてあるもののアンテナ線が繋いでないものですから、TV放送は見られない。さりながらWi-Fi経由でVODは見られるので、こんな映画を見ていたのでありますよ。

 

 

江戸城の大奥を題材にしたドラマや映画は昔から数多作られているようだとは知っておりましたけれど、印象としてですがどうにもどろどろどろどろ…してそうな気がして一向に近付くことはなかったのでありますよ。

 

ところがこの2006年制作の映画『大奥』は、江戸期を通じた大奥の長いどろどろの中でも、あの「江島生島事件」(絵島生島事件とも)を扱っていると聞き及んだものですから、先日には高遠で「絵島囲み屋敷を見たりした折も折、まあ見てみようかいと思ったようなわけでして。

 

先に高遠の「絵島囲み屋敷」に触れた際には、「そもそも江島生島事件は幕閣内での勢力争いのとばっちりであったとも言われてますので、要するにスケープゴートにされてしまったのかもしれませんですなあ」とだけ記しておりましたですが、じわじわと陥れられていくさまが映画には描かれておりましたなあ。

 

徳川六代将軍家宣の側室で、後に実子が七代将軍家継となった月光院(井川遥)は、先代正室の天英院(高島礼子)とその取り巻きから、今でいうハラスメントに曝されているのですな。何しろ月光院が江戸の寺の娘であったのに対して天英院は関白太政大臣の近衛基熙のおひいさま、本来的な上下関係は明らかながら、時の将軍家ご生母となった月光院が大奥では最上位になってしまう。黙っておれんという人たちがが天英院のもとに結集したような格好ですな。

 

大奥を取り仕切る役割の江島(仲間由紀恵)としては月光院を立てるのは職責上も当然ながら、天英院側からすれば月光院一派の頭目でもあるかのように見えてしまうわけで、陰謀のターゲットになっていくわけです。

 

そこに巻き込まれるのが当代随一の色男、歌舞伎役者の生島新五郎(西島秀俊)でして、天英院派から大金をちらつかされて江島を色仕掛けでスキャンダルに巻き込むよう、指示されるという。いやはやもう、やっぱりどろどろですな。

 

とはいえ、ここには相当に想像をたくましくした脚色が入っているのでしょう、月光院の代参で先代将軍の墓参をすませた江島らが帰りがけ、「芝居小屋・山村座に立ち寄って帰城が遅れ、門限に間に合わなかった咎で評定所の審理を受ける」というのが史実としては残されたところでしょうか(Wikipediaによる)。生島との密会を疑われ、拷問にかけられるも認めることは無かった江島、一方で生島の方も三宅島遠島という処罰を受けながら、何ら申し開きが無いとなると、想像をたくましくしたくなるのも宜なるかなではありますな。

 

もっとも、これだけだけだと女性の間だけの諍いにも見えますが、その実、幕閣での確執、将軍家側用人として目立つ存在の間部詮房(及川光博)を快く思わない男性の側の諍いもあったわけで。映画ではこの反間部の筆頭として秋元但馬守(岸谷五朗)を持ってきておりましたが、歴史としてはこの人は一貫して間部を支持していたようですので、どうしてこういう話になってしまったか…ではありますですね。毎度のことながら映画やドラマを鵜呑みにはできんわけです。

 

とまあ、歴史の間隙を想像で埋める作業としての面白さは感じなくもなかったですが、やはりそのどろどろ感はどうも。これを機会に、あれこれの大奥ものを見てみようかというような気分にはおよそなりませんでしたなあ(笑)。