さて、神奈川県厚木市の飯山観音を出発点にして「飯山白山ハイキングコース」を辿ることに。まずもって目指すのは白山の頂上…といっても、標高284mと絵にかいたような低山ハイクでありますよ。
観音堂脇の道から山に入っていきますと、ほどなく男坂・女坂の分岐点に出くわしますが、ここは無理せず女坂を。すると、目の前にやおらかような防護柵が現れました。
遠目には「立ち入り禁止であるか?!」とも思うところながら、貼り紙には「鳥獣被害対策として電気柵を設置しています。扉を開けた方は必ず閉めてください。厚木市」と。添えられたイラストを見ると鹿ばかりか猿までも出るようですな。
おそらくうさぎは出ないと思うのですが、頂上までの道標は何故かうさぎ型。「あつぎ」と「うさぎ」の語呂が似ている…ということもないですなあ。
ともあれ、たちどころに深山幽谷の趣き漂う中を登っていくことになりますけれど、羊歯植物の繁茂するあたり、山のたっぷりとした保水性を感じるとともに、フィトンチッドをシャワーのように浴びておろうなあとも。そうこうするうちに、早くも今回のメインピークたる白山(284m)の頂上に到着です。
周囲の樹高に配慮してか展望台が設けられておりまして、上に出てみれば見晴らしが実に良いのですなあ。前の晩の雨がすっかり空気の淀みを払ってのでもありましょうかね。
新宿のビル群や東京スカイツリー、横浜のランドマークタワー、さらにはうっすら筑波山やら伊豆大島やら、ぐるりと展望できたのは好天に恵まれたからとして言いようのないところでして。「ふたりとも普段の行いの賜物」とは友人の言。そういうことも、あるかもしれない(笑)。
と、ここからはいったん急降下(これが運動不足の身にはこたえるのですなあ…)して、木立に囲まれた穏やかな尾根道でアップダウンを繰り返すわけですが、やがて物見峠というところに到達。名前のとおりにここも視界が開けていましたので、ここのベンチで昼食タイムということに。例によって携帯コンロを持参してましたのでね。
それにしても世の中はGWで、しかも特段の自粛が求めらない久しぶりのGWで、賑わっているところは多々ありましょうに、通りかかる人は家族連れひと組のみ、後は静寂に包まれて…という峠の上で、遠望を前にしつつ食事するというのは、ある種、とてもぜいたくな時間とも思いましたですなあ。
物見峠からはまたしばしの急降下、だんだんと人里に降りていく感を抱きつつ進みましたですが、飯山白山森林公園と思っていたところはいつしか七沢森林公園になっていたようで。管理者の違いをはっきりさせるということなのか、「ここからは七沢森林公園です」という強い主張が感じられましたですよ。
ただ、こちらの七沢森林公園に入りますと、県立というだけあって?コース整備が行き届いているような気がしたものです。たどり着いた順礼峠というところも、かなり手を入れて均してありましたなあ。
ところでこの順礼峠、いわゆる「巡礼」ではないのだよね…と思っていましたら、どうやら「巡礼」も「順礼」も同じ意味だったのですなあ。峠の言われはその昔、坂東三十三観音を巡り歩いていた老人と娘が賊に襲われ、無残にも斬殺されてしまったのがこの場所であると。
今では、森林公園の「とうげの広場」として老若男女を問わず自然に親しむ場となっていて、ほどないところに「ながめの丘」なる展望のきく場所がありますけれど、白山や物見峠を通って来た者にとっては些か物足らない眺めではありました。
というところで、もうひと下りして人里に帰りつく。本厚木駅へのバス停も近いわけですが、今回の低山ハイク、出かけるまでには本厚木駅からバスで30分ほどといって、大したこともなかろうと思ったりしていたのですな。されど、結構近いところにたっぷりとした里山があることに、改めて気付かされた次第。山歩きの楽しさを思い出すひとときでありましたよ。