「やっぱり、渇いていたか…」という印象。なにせ今年2022年のオーケストラ生音始め、今頃です。
思えば昨年末の「第九」以来になりますので、そりゃあ、渇きもするようなあと。
読響演奏会@東京芸術劇場を聴いてきたのでありました。
近頃は予定されていた海外から演奏者が来られなかったりすることがままあるわけで、
演奏会のフライヤーも急ごしらえのものをよく見かけるようになりました…と、それはともかくプログラムは、
ロルツィングの歌劇『密猟者』序曲、ドヴォルザークのチェロ協奏曲、シューマンの「ライン」シンフォニー、
とまあ、こんな具合でありましたよ。
ここで一番の注目はおそらく、ドヴォルザークでしょうかね(もちろん、思いはひとそれぞれですが)。
ソリストに海外プレーヤーを当て込んでいたところが来日できず、代わりに登場したのが
昨2021年のジュネーヴ音楽コンクール、チェロ部門で日本人初優勝と新聞で見かけていた上野通明、
20代後半ということですけれど、もっともっと若く見えましたなあ。
ともあれ、チェロ協奏曲ですけれど、とてもエネルギッシュな、ドヴォルザークらしいドスコイ感というか、
どんどこ感というか、そんな野趣?に溢れた第一楽章では、実のところ「うむむ…」と(個人の意見です)。
さりながら、緩徐楽章では独奏チェロの音色がしっくりきましたですね。
おそらくは剛腕奮ってぎこぎこ(まあ、曲自体がそういう曲ですが…)というのでない方が合うのであるかと
思ったことから、この人がバッハの無伴奏を弾いたらどんなであるかなと想像してしまったり。
すると、あろうことか、アンコールでは無伴奏チェロ組曲第1番の第1曲が演奏されて!。
この想像の背景もまた個人的な思いですけれど、
無伴奏はチェロがぶんぶん唸るタイプにどうにも馴染みがたいところがあったものですから、
そうでない演奏が聴けそうと考えたわけでしたですが、予想に違わず、これはすぅ~と入ってくる。
もしかしたら、この奏者は室内楽とかの方がよりマッチするのかもしれませんですねえ。
と、全体通した協奏曲の演奏にケチをつけるつもりは毛頭ありませんですんが(と、エクスキューズ)。
一方で、シューマンの「ライン」は悠揚迫らぬたっぷり感がありましたなあ。
こんなにスケールの大きな曲だったかいねと思ったりしたところです。
これは指揮者ヴァイグレがオーセンティックなドイツ音楽を受け継ごうとしているからでもありましょうか。
ベルリン歌劇場のホルン奏者から指揮に転じても、ドイツをはじめあちらこちらのオペラハウスでもって
叩きあげてきた育ち具合も、かつてのドイツの大指揮者たちの軌跡でもありましょうし。
そんなヴァイグレならではかと思われる選曲が、実は1曲目のロルツィングではなかろうかと。
ヴァイグレは2019年4月の就任お披露目でもロルツィングを取り上げていましたけれど、
元は役者であったというロルツィングも、いわば劇場叩きあげでオペラまで作り上げるようにもなるわけで。
このあまり取り上げられない作曲家の作品はほとんどドイツでしか上演されないてなでもありますし、
またその劇場育ちであることにヴァイグレ自身もいささかの親近感を抱いているのかもしれませんですね。
演奏された歌劇『密猟者』の序曲、もそっと演奏されてもいいような気がしたものでありますよ。
…ということで、差し当たりの渇きを癒すに十分な演奏会なのでありました。
来月の演奏会は指揮者も曲目もオール・フランス、これはこれで楽しみですなあ。
もっとも、予定者が来日できれば…ですけれどね。