公共交通機関利用ではなかなかに面倒な町田市立自由民権資料館ですけれど、
そのほんの裏山に、といった形でひとつ美術館があるのですなあ。
通りすがりに「ロダン、ユトリロの美術館」と看板が見えたりしたですが、
「なぜ、ここに?」というロケーションからいささか眉唾ものに感じてしまっていたり…。
ですが、このほど勇を鼓して出向いてみることに。
たどり着いてみれば、やはり胡散臭さ漂う構えで迎えられたのでありました。
起業家である方の個人コレクションの展示施設である西山美術館。
ロダン、ユトリロの美術館を標榜するだけあって、確かに入口脇には「考える人」が輝いて(?!)ますが、
それよりもさらに目立つの林立する大石ですなあ。いつのまにかキャッチフレーズは
「ロダン、ユトリロ、世界の銘石の美術館」となっていたようでありまして…。
パワーストーンに魅せられてしまったのか、いくつもの石が並び、
それをご神体に開運神社なるものまで設えてしまったとは…。
ギネスブックにも登録されたりする紅水晶の大玉とか、それはそれで大したものなのでしょうけれど、
瞬間的には入口だけでUターンしようかという考えがよぎったりもしたですよ。
それでもまあ、せっかくここまで来たからと(怖いもの見たさもあって?)入館してみますと、
ひとつひとつのフロアはさほど広くはないものの、2階から5階までが展示室となっておりまして、
3階までだったら入場無料で見て回れるのだそうですな。
2階、3階ではロダンの彫刻が見られる…ということながら、例えばこちらは2階の展示室。
むしろ世界の銘石が展示される合間に、ちょこちょことロダンが置かれている印象かと。
そして、3階もまた。ちなみに展示されている石には
基本的に金額が表示されている…ということは、これって販売されているということになりましょうかね。
ここまで無料で入場できる理由はそのあたりにありそうです。
と、石にばかり目を向けてしまいそうになるところながら、
ひとつロダンらしからぬ作品に目をとめることに。
ロダンらしからぬとはあまりに分かりやすい?作品であったものでして。
「シュゾン」というタイトルのこの作品、展示解説によりますと、
「ロダンが生活費を捻出する為にコンパーニュ・デ・ブロンズ社に無制限の複製権付きで
売り渡していることから、おそらく数千という単位で作られている」ということなのですな。
ロダンとしては、「これならきっとがんがん売れますよ。その分、会社は儲かるのだから、
高く買ってくださいな」と言った…かどうかですが、いかにも売れ筋狙いな気もしてしまうところです。
新聞夕刊などに大きな広告で「魅惑の女性像」的なる彫刻の複製販売が告知されることがありますけれど、
どうもそうした類いものもであるかなあと。大衆受け(少々、惹かれてます(笑))を意図した作品を、
作ろうとすれば作れるのだと考えれば、それもまたロダンの技なのかもしれませんですなあ。
と、4階、5階部分にはユトリロが展示されているということでして、
4階入口には改札口があり、トークンのようなコイン(1階受付で入場料を払うと渡される)を入れて通過します。
が、ユトリロの展示は一切撮影不可ですので画像はありませんです、はい。
さりながら「収蔵作品数は、世界第2位、個人コレクションとしては世界第1位を誇ります」(同館HP)という
ユトリロのコレクションは結構見応えのあるものではなかろうかと。どこかで見た絵であるなと思ったりしたのは、
ホテルオークラで開催された「秘蔵の名品 アートコレクション展」(2013年)に貸し出さたりもしたからかと。
(ただ、同展を見たときに印象に残ったユトリロは山形美術館寄託作品ですけれど)
まあ、個人美術館ですので、コレクター(石集めも含めて)の思いの丈が詰まっている施設であるわけで、
(思いがけずも横綱輪島に関係するコレクションのコーナーがあったりもするという…)
ロダンを見たい、ユトリロを見たいという鑑賞者側の思いとは嚙み合わないであろう点もあるものの、
取り分けユトリロへの関心が高い方々には見るべきものはあるところであろうとは思いましたですよ。