先日読んだ新潮新書の『ビートルズ』の中に、こんなことが書かれてあったのですなあ。
ビートルズのよきライバルとして同時期に実験的な音楽を作りはじめたビーチ・ボーイズ…
ビートルズが(「ラヴ・ミー・ドゥ」で)デビューしたのが1962年、どうやらビーチ・ボーイズも同年にデビューして、
やはりライバル意識はあったということになりましょうか。
少々遅れて1964年デビューしたモンキーズがてっきりアメリカ版ビートルズだとばかり思っておりましたが、
こちらはビートルズ人気にあやかって、そのアイドル性(カリスマ性ではなくして)を真似た存在であっただけで、
音楽作りの方面でのライバルはビーチ・ボーイズであったということなのかもしれません。
ただ、そう言われましてもそれほどポップスに詳しくない者としましては、
ビーチ・ボーイズといえばとにもかくにもサーフ・サウンドであって、
ビートルズのような普遍性といいますか、多様性といいますか、そうした部分は全く思い浮かばずでしたので、
やはりここは改めて耳を傾けてみようと、図書館へCDを物色しに出かけたのでありました。
取り敢えず「ビーチ・ボーイズ/MADE IN U.S.A.」なるベスト盤を借り出して早速に聴いてみますと、
のっけから代表曲のひとつ、「サーフィン・サファリ」が登場、一気にカリフォルニアの心地のする世界へと
連れ去られたのでありますよ。一曲おいた3曲目には、これまた大ヒット曲「サーフィンU.S.A.」と来て、
やっぱりビーチ・ボーイズはこれでしょう!と。
ではありますが、どうやらビーチ・ボーイズはサーフィン・ミュージックばかりではなかったようで。
2曲目に収録されている「409」が、ぶろろろろ~というエンジン音から始まりますように、
自動車を取り上げた曲、いわゆるホット・ロッドという音楽もまた手持ちのジャンルであったですなあ。
「ホット・ロッド」はそもそも、自宅にガレージ(アメリカ映画で見かけるように単なる車庫ではないですな)を備える、
いかにもアメリカらしいカスタムカーのことであるということですけれど、車社会アメリカの「らしさ」は
L.A.のピーターソン自動車博物館を思い出したりもしたものです。
また、アメリカン・フットボールのチアガールの掛け声らしきものが入る曲があったり、
「プロム」(これも米国映画の一場面としてよく出てきますなあ)のダンス・ミュージックっぽいのがあったり、
サーフィンにとどまらず、なんともかとも「アメリカだなあ」という色彩濃厚な印象なのでありますよ。
ファルセットを使ったナンバーなども、世代的に少々前のフォー・シーズンズの系譜に連なると思えるあたり、
いかにもアメリカっぽい(ミュージカル映画『ジャージー・ボーイズ』が浮かんできますな)。
ベスト盤のアルバム・タイトルが「MADE IN U.S.A.」とは、付けも付けたりではありませんでしょうか。
さりながら、この濃厚なアメリカ感(昭和の日本人が思い描く、憧れのアメリカ!)に対して、
例えばビートルズにしても聴いていてイギリス感を抱くことはあまりない。それだけ地域性と関わりない、
より普遍的な音楽をビートルズは作っていたというべきかもしれませんけれど。
ちなみにビートルズとの対比でいえば、このアルバスの後ろの方にビーチ・ボーイズのオリジナルでない、
いわゆるカバー曲が入っておりまして、その一つが「ロックン・ロール・ミュージック」でありましたよ。
元々はチャック・ベリーの曲ですのでアメリカ由来ですけれど、
そのアメリカ系譜を継いでいるビーチ・ボーイズ(「Billboard Hot 100で最高位5位」Wikipedia)ながら、
ビートルズの、というよりもジョンのシャウトするパフォーマンスは(昔聴いたときには尖りすぎにも思えたですが)
なるほどロックンロールであったかと。ビーチ・ボーイズ版はどうもリズムの刻みを重く感じてしまって…。
と、結局のところビートルズと比べてどうの…という話になってしまいましたけれど、
いろいろ意味で時代や場所、流行、若者風俗などなどが相当ストレートに伝わってくるビーチ・ボーイズの音楽、
これはこれでやはり捨てがたいと言わざるを得ないところでありましょうね。