自転車ですいっと行けるものですから、どうにも昭和記念公園花みどり文化センターの話ばかりですが、

取り敢えず最後のひとつ。これも、ダーウィンの展示などとの関連性があるもののようでありましたよ。

国立科学博物館巡回展という点では同様ですしね。「日本の生物多様性とその保全」というパネル展なのでした。

 

 

まずもって「生物多様性とは何か」というところから始まりますが、

改めて問われると漠たるイメージでしかないことに気付かされますですね。

 

「生物」と一言に括ってはいますけれど、実は「種レベルの多様性」、「遺伝子レベルの多様性」、

そして「生態系レベルの多様性」、これらをひっくるめた表現であるようです。

昨今の状況から思い浮かべやすいのは生態系レベルの話になりましょうかね。

 

決して「日本」という国の自慢話をしたいわけではありませんが、狭い島国と言われつつ、

南北に長い国土は温帯域中心ながら、北は亜寒帯に、南は亜熱帯に属していたりする。

また7割ほどが山岳地帯で起伏に富んだ地形を持ち、

一方で入り組んだ海岸線は総延長35,000Kmと世界で6番目に長いのだそうですなあ。

こうしたことから「豊かな生物相」を持っているということでありまして。

 

先ごろ、奄美大島(を含む地域)が世界自然遺産に登録されましたけれど、

アマミノクロウサギなどの固有種が多くあることが選定理由のひとつでもありましょう。

一方で、中部山岳には植物の固有種が多々あるのですよね。

 

さらに、小笠原諸島にも動植物の固有種が数多あるわけで、

地球の歴史上、一度も大陸と地続きになったことがないとなれば、

かのガラパゴス諸島と同様の希少性がそこにはあるということになるわけで。

 

かつて寒冷な時期に日本の本土から南下した生物の個体群が、

その後、暖かい黒潮が出張ってきたことで本土との行き来ができなくなり、

固有種化が進んだりもしたようでありますよ。

 

ところで、生物には当然にして植物、樹木も含まれるわけですが、

森林保全ということに関してはちと誤解をしていたような。

 

山の森については、人が手を入れなければ荒れるてなことがよく言われますけれど、

それは植林したところであって、人為的に自然とは異なる植生にしたからには手入れをしなければならんのだろう、

翻って手つかずの自然のままの場所はそのままにしておくことがいいのかも…てなふうに思っていたわけです。

 

それが、そうとばかりは言えないようなのですなあ。「人手の加わらない自然では、長い年月の間に

一定の植物植生に収束してしまう「植物遷移」の働き」というのがあるのだそうで。

 

 

図の右側、「人が手入れをしないと…」の部分には、このような解説がありますな。

①林の中に、下草や低木が茂り、地面に陽が当たらなくなる。

②あまり陽の当たらないところに、日陰を好むカシ類が育ってくる。

③木が育って、一年中位常緑樹の森に入れ替わる。

結果、すべての場所が同じような森になると、里山のような豊かな生物多様性が失われる。

 

自然のままにしておくとこういうこともあるとなれば、人が手を加えることを人工的、人為的として

自然との対抗概念のように考えるのは必ずしも当たっていないのでしょう。

地球の歴史に比べれば、ヒトの歴史はさほどに長いものではないとしても、

ヒトが活動を始めて以来、森林との持ちつ持たれつの関係をうまい具合に

構築してきたのかもしれませんですね。その姿こそが自然のありようとでも言ったらいいのでしょうか。

 

自然のまま、あるいは人が手を加える、そのいずれに偏ってもバランスは崩れるということ。

いずれにしても過ぎたるは及ばざるが如しなのでしょうね。

ものごとを一面だけで捉えずにバランス感覚を持って臨むことは

生態系を考える点にも関わっていたのであるなと、改めて考えたものなのでありました。