イルカの話(歌手の方ですが)を持ち出したことで(?)、クジラを思い出し…。

JR青梅線の中神駅と昭島駅のちょうど中間あたりにある、こんな施設を訪ねてみたのでありました。

 

 

本来的には昭島市の教育福祉総合センターという施設なのですけれど、「アキシマエンシス」という名乗り。

公共施設にも妙な外来語混じりの名称が氾濫していますので、その類いかと思うところながらさにあらず。

「エスクリクティウス・アキシマエンシス」という動物種の学名からとったものでして、

この動物はこれまでも(そして今でも)通称「アキシマクジラ」として知られているものなのでありました。

 

かつての小学校の敷地に、校舎は再利用、体育館はそのまま体育館として使用、

そして校庭部分にご覧のような新たな建物が加わった複合施設になって生まれ変わったのですね。

東京とは言っても、小学校が廃校になることはあるわけで…。

 

 

とまれ、その新規の建物たる国際交流教養文化棟(ずいぶんといろんな要素を一緒盛りにしてますな)、

メイン機能は図書館のようですけれど、一歩なかへ入りますとこのような具合。

アキシマクジラの原寸大骨格模型がお出迎えなのですなあ。

 

 

でもってほんの一部分ながらも郷土資料室がありまして、

アキシマクジラ化石発見60周年記念事業「帰ってきたアキシマクジラ」展が開催中でありました。

 

 

化石発見60周年とありますように、多摩川の河原、八王子から拝島へと向かう国鉄八高線(当時)の橋梁近くで

アキシマクジラの化石は、1961年(昭和36年)8月20日発見されたといいます。

やはり夏の大雨があったのでしょうか、増水した多摩川に河原が洗われた後に見つかったということですが、

そも多摩川は明治以降に建築用の砂利の供給源になっていて、

砂利の堆積に守られることなく河原も洗い流されることたびたび、その結果として古い地層が露出したのかも。

 

それにしても、アキシマでクジラとは初めて耳にしたときには「どういうこと?」と思ったものの、

そもそも200万年前、今の昭島のあたりは海と陸地が出会う場所であったということなのですね。

 

 

ですから、海であったろう場所からはクジラのご先祖が見つかる一方では

陸地と想定されるあたりからはゾウのご先祖(アケボノゾウ)の化石が見つかっているそうでありますよ。

 

 

ところで展示タイトルが「帰ってきたアキシマクジラ」とは?ですけれど、発見されたのは1961年であるも、

その後の調査・研究により新種(他のどこでも発見されていない)と認められたのはほんの数年前、

2018年のことだそうで。そこで調査機関に預けられていたアキシマクジラがようやっと里帰りを果たした。

そういうことだったのですなあ。こちらがその化石でありますよ。

 

 

しかしまあ、新種であることを突き止めるというのは長い研究が必要だったのですなあ。

現存種ではコククジラに似ているようなのですが、それとどう違うのか、決め手は鼻骨であったそうですよ。

これほどに全体像が見渡せる形で出土しているにもかかわらず。

 

もっとも、この全体がまとまって出土するというのは極めて稀なことだそうですね。

たまたまにもせよ、この個体が浅瀬に横たわる形で死んだことがひとつのポイントらしく、

もしも深いところで死んでいたら、海面に浮かんで腐敗し、骨は波のまにまにバラバラになってしまうのだと。

また、地殻変動の際にも、全体像そのままに隆起したのは幸いなるかなとしかいいようがないような。

 

ということで昭島市の郷土資料室を訪ねて、

他の自治体の郷土資料館同様に古代からの当地の歴史をたどる展示も当然にあるわけですが、

どうしても目はアキシマクジラに向いてしまうところでありました。

見目麗しき縄文土器も展示されたりはしておりましたけれどね、ついつい…。