寒い毎日が続く中では、ことさらお日さまの下では暖かさを感じ、
「ああ、ありがたいなあ」と思わされているのですなあ。
曇っていれば話は別ですけれど、空を見上げれば当たり前のようにそこにいてくれる太陽、
その太陽のことをあんまりよく知らんなあと、これまた今さらながらに思い付いたわけでして。
そこで手に取ってみた一冊は『太陽は地球と人類にどう影響を与えているか』というもの。
ちと想像した内容とは違いましたけれど、あれこれ、そうなんだねえ…と知ることになったものでありました。
内容が思惑違いと言いますのは、そもタイトルの理解の仕方に思い込みがあったせいですかね。
てっきり、太陽は地球と人類にどういう恩恵を与えているか、といった話なのかなと、
手に取るきっかけが太陽礼賛系の思いでしたので、そんなふうに考えてしまいましたけれど、
実はどちらかというと悪い方の影響のお話でありましたよ。
理系に疎い者としてはまず、極めて基本的なところから理解しておかねばなりませんな。
例えばこんな具合のことも。
太陽は、直径が地球の109倍もあって、表面温度約6000度(絶対温度)で光り輝いている。そのエネルギー源は、太陽の中心で起きている、水素原子4個がヘリウム原子1個に変わる時にエネルギーを出す核融合反応である。
その太陽が放つエネルギーのうち、地球という小さな的に当たるのはわずか約20億分の1でしかないのだが、それでも太陽は地球と人類にとって最大のエネルギー源で、このエネルギーで生命は繁栄してきた。
という具合で、太陽エネルギーが無ければ地球上に多様な生態系ができることはなかったわけで、
この点は悪い影響と言う以前の前提でありますね。
まずもって太陽という巨大な(宇宙規模ではざらにあるようですが)エネルギー源があり、
かつそのエネルギーのうち20億分の1という少量?がヒットするくらいの大きさと距離に
地球があることはやはり恩恵でありましょう。
さりながら、(宇宙規模でなくして地球感覚からすると)それでも太陽のエネルギーは莫大であって、
単純な話、ヒト(だけではないと思いますが)は太陽を直視することができないくらいですものね。
という太陽ですから、その活動が地球に与える影響はどうしたって大きなものになるわけでして、
例えば太陽の表面で炎が吹き上がるような「フレア」が起こりますと、
分かりやすくいうと電磁波やら放射線やらが放出されて、時に地球にもやってくるのだとか。
その規模が大きいと、通信網や送電線に大きなトラブルが生じかねない。
現にまだまだ電信くらいの時代であった19世紀にも実際に混乱が生じたことがあって、
その頃とは比べ物にならないほど、電気にも通信にも依存している現代にあって、
もしも同じような太陽の活動があったならば、ともすると大惨事にもつながりかねない。
そこで宇宙天気予報みたいなものが行われるのだそうですよ。
太陽を観測し、黒点やらフレアやらのようすを予測も含めて分析することで、
いささかでもトラブル回避に役立てようということで。
なんだか、こうと聞いても身近なイメージに結びつかない気がしますけれど、
それは太陽からの影響というのが目に見えるものではないからでもありましょうか。
SF映画ではありませんが、未知の飛行物体などが飛んでくるとなれば「そりゃ、大変だ!」でしょうけれどね(笑)。
ですが、影響が地球上で見える形に現れるのがオーロラでもありますね。
あれは太陽からの磁気嵐と言いますか、それがたくさん降り注いだときにはたくさん見られる。
といっても、普通は極地地方だけのことではないか…と思うところながら、
太陽が激しく活動した時期にはその影響として日本の北海道でも見られたとか、
広範囲で観測できたこともあるそうでして、そんなことにもなりますと太陽の影響を
目の当たりにするてなことでもありましょうかね。
と、そのようなことを観測の歴史、現在の分析などを通じて太陽の大きな影響を紹介してくれる本書は、
かなりやさしく説明してくれているものと思いますが、真剣に読んでいきませんと、
後から「ああ、前の部分がちいとも頭に入っていなかった…」ということも、しばし(苦笑)。
結局のところ、興味のつまみ食いのようではありますが、もひとつだけ「ほお!」と思いましたことを。
ちょいと前に東京都立埋蔵文化財センターの展示解説で見た「放射性炭素年代測定法」についてです。
測定法の自体の理屈は展示で見て、炭素14は規則的に半減期を迎えて減少するのであるから、
それで年代が分かるのであろう…てなふうに受け止めておりましたが、そもそも炭素14なる元素は
端から地球に存在するものではなくして、常に太陽から、そして宇宙からやってくる放射線によって
生み出されるものなのであるとか。
銀河宇宙線が大気の原子を破壊した時、副産物として中性子が放出された場合、これが大気中に最もたくさんある窒素の原子(7個の陽子と7個の中性子を原子核に持つ)にぶつかって原子核に入り込むと、入れ替わりに陽子1個が放り出されて6個の陽子と8個の中性子の原子核、つまり炭素14が作られる。
この炭素14は放射性同位元素で、半減期5730年でベータ崩壊(中性子から電子とニュートリノが飛び出して陽子になる)し、元の窒素14に戻る。
なにやら大仰な(といってミクロ以下の)話ですけれど、実は地球上にいて、
宇宙とは切っても切れない関わりの中にいる。ましてや太陽においてをや、ですかね。
古来、太陽は温暖さという恩恵をもたらすことで神とも見られたわけですが、
ときには荒ぶる神になることがあるかもしれない。これは覚えておいた方がよさそうですね。