先に出かけた増富温泉からの帰途、JR中央本線の普通列車(要するに各駅停車、鈍行ですな)に乗ってきたですが、
途中の駅ごとに「ああ、山帰りだな」と思しき姿かたちの老若男女(といっても、老と女が多い)が乗り込んできました。
途中からですので八ヶ岳や南アルプスといった高峰に行ってきたのでなく、
中央線沿線のほどほどの高さの山からの帰りでありましょうけれど、つくづく山人気なのであるなあと。
やおら「日本百名山」が注目された頃から(老と女に支えられて?)根強いものがありますね。
と、そんな山帰りの人たちの姿を目の当たりにしておりますと、なんとなあくまた山に登りに行きたくもなったり。
「また」とは言いましても、木曽駒とか白馬岳とかの、わりと高い山々を歩いていたのは
もう何十年も前のことですので、すっかり体はなまりまくっておりますし、一方で山登り人気だというご時勢からして
混んでる山道などは歩きたくないなあとも(しばらく前に友人を連れていった高尾山では辟易しましたし)。
ということで山登り復活は折を見ることにして、差し当たり山絡みの映画に気が付きましたので、
こちらは早速に見てみることに。タイトルは「フレンチアルプスで起きたこと」というものでありました。
いったいアルプスで何が起こったのであるか…という、物語の本筋に関わる点はまるで予備知識に無かったもので、
「こういう映画であったか」とは見てから驚いたような次第です。フライヤーにある物語紹介はこんな具合です。
フランスの高級リゾートにスキー・バカンスにやってきたスウェーデン人一家。…バカンスの2日め。スキーを楽しみ山際のテラスでランチをとっていると、突然轟音が響いて雪崩が発生し、テラスは大パニックにおちいる。幸いにも雪崩は直前で止まり、スキー場はすぐに笑いと活気を取り戻すが、その瞬間トマスが取った“期待はずれの行動”が、家族の間に予想外の波紋を広げてしまう―。
降雪の多いところでは、人工的に小規模な雪崩を起こすことで大規模雪崩を予防することがありますけれど、
舞台となるスキー・リゾート(フランスですのでモンブラン山系でしょうか)でも同様ですね。
それが分かっているからこそ、上のフライヤーの写真にありますように皆雪崩を「おお!」てな具合に眺めています。
人為的にコントロールして発生させた雪崩だから大丈夫と高をくくっていたところが、
想定外に大きくなってしまった雪の波は迫りくる。結果的にはしぶきに覆われてというくらいで済みはしたものの、
テラスは一面、雪煙で真っ白に。だんだんと視界が戻ってきたところで、「パパは?」となるのですなあ。
先の物語紹介では夫トマスが「期待はずれの行動」を取ったとしか書かれていませんのでネタバレになるとも言えますが、
どう検索しても目に留まってしまう書かれようですので、この際はっきり言いますれば、夫は、父親は家族そっちのけで
脱兎のごとく逃げ出してしまったのでありますよ。
その時の状況は、あたかもYoutubeに挙がった実録フィルムのようでしたなあ。
それこそ当人にとっては大パニック、後先考えずの行動であったことが見て取れたものです。
さりながら、トマスが家族のもとに戻ってきたときに、バツは悪いとしても、その場では謝ってしまえば
話はそれで終わったのでしょうなあ。「パパ、かっこわる~い」てなもんで。
深みに導いたのは「逃げてない」と言ってしまったことですね。
妻にとっても、子どもにとっても、「逃げちゃったんだろうなあ」と分かっているのに嘘をつかれたことが
話を大きくしてしまうのですよね。言うべきときに本当のことを言わないから話がこじれてしまう…というのは
「冬ソナ」を持ち出すまでもなく、ドラマには実によくある話なわけですが。
やっぱり、そうなるかあ…という気まずい夫婦関係、親子関係が提示されますけれど、
考えるところは「どうして繕ってしまうかなあ」というところでもありますね。
深刻なのですけれど、脇でもってとばっちりに巻き込まれる人たちの温かさ?などもあり、
いささかの救いも無いわけではない。
そして、(原題の意はWiki によれば「不可抗力」といったものらしいながら)この邦題はよく出来た方かもしれません。
当然にして「何が起こった?」と前のめりにさせるところがありますし、フレンチアルプスは実際に舞台なわけですが、
この「フレンチ」というのが話の中にウィットがある雰囲気を醸しているような。
もしこれが「スイスアルプス」や「オーストリアアルプス」だったら、もそっと厳しい話が展開しそうに思えるところですから。