しかしまあ、ひとつの題材でたくさんの映画が作られることがあるもので、
ケネディ暗殺などはまさにそうした題材でもあろうかと思うところです。
先ごろは、暗殺当時副大統領だったリンドン・ジョンソンを追いかけた「LBJ」 を見ましたが、
これとてケネディ暗殺が無ければ、映画で描かれたようなジョンソン大統領は無いわけで、映画にもなったかどうか…。
とまれ、このほどは見たのは「ジャッキー ファーストレディ最後の使命」と
「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」という2本、いずれもケネディ暗殺がらみの映画でありましたよ。
「ジャッキー」の方は、言わずと知れたファーストレディ、ジャクリーンのことで、ナタリー・ポートマンが演じてますが、
あの癖のある語り口調はジャッキーに似せているところなのでしょうか、ある程度の年齢のアメリカ人ならば
すぐに分かるというところなのでありましょう。
とまれ、ケネディ暗殺からしばしの時を経て、ジャッキーがタイム誌のインタビューに答え、
事件の前後を織り交ぜて回想する形でありますね。
その後のことを断片的につなぐ形でしか知らない者にとっては、ケネディ思いであったように見えて
大富豪オナシスと再婚してしまうしなあ…などと思うところもあるわけですけれど、この映画を見ている限り、
ああ、ケネディへの思いが深かったのだな、だからこそそれを拭い去らねばならず、オナシスと…なんつうふうに
思ったりもしたものでありますよ。暗殺事件が人生を狂わすのは凶弾に倒れた人ばかりではないのですよね。
と、それがケネディ夫人であったならば、もはや当事者ということにもなりますけれど、
一方で映画「パークランド」が扱っているのはもそっと普通の人ということになりまして。
フライヤー画像で、大きく見開いた目が見て取れますけれど、
ケネディが狙撃された現場に居合わせたエイブラハム・ザプルーダー(ポール・ジアマッティ)の大写しです。
ただ、現場に居合わせた人ならたくさんいるじゃないの?と思うところですけれど、
数々の映画や報道映像などを通じて、多くの人が何度も見ているであろう、ケネディが凶弾に倒れる瞬間を
8ミリカメラで撮影していたのが、この人なのだそうですね。
アメリカではこの衝撃映像がザプルーダー・フィルムとも言われ、よく知られているということでありますよ。
直ちにフィルムの争奪戦が行われたことは想像に難くないことでして、
これは完全に人生が狂わされもしたろうなと思うところです。
映画が焦点を当てるのはザプルーダーばかりではありませんで、
日常的にはほぼ没交渉になっていたオズワルドの兄や、捜査に当たってそれぞれの主張を曲げないFBIや
シークレットサービス、地元の司法当局(何しろアメリカは合衆国で、テキサス州も国のようなもので…)なども
映し出すわけですが、タイトルである「パークランド」に関わりのある人々も。
パークランドというのは狙撃されたケネディが緊急搬送された病院なのですよね、パークランド記念病院と。
すぐさま治療に当たるといっても、もはや手遅れとも見える中、なんとかせんとあかん状態に。
ところでこの病院には、ケネディが棺に入って病院を去ったのち、
なんと至近距離で撃たれたオズワルドも運び込まれて、その治療に当たることに。
これまた、人生を大きく揺さぶる出来事の連続であったでしょうなあ。
それぞれにケネディ暗殺との関わりを持ってしまった人たちのようすは映画のストーリーに譲るとして、
この事件が歴史の中で語られるあれこれに、こうした人たちはもはや出て来ないわけですが、
どの人をとっても大なり小なり、人生を変える出来事でもあったのですよね。
大きく見れば、そうした語られなくなるような一人ひとりの出来事、
それが歴史を作り出しているのだよなあと思ったりもしたものでありますよ。