梅雨時ですので仕方がないですが、シャキッとしない空模様にコロナも加わって家でだらりとしつつ、
古い映画を見ていたのでありますよ。といって初見なのですけれどね。
ブルース・ウィリス主演の「16ブロック」、2006年公開の映画となれば「ダイハード4.0」の前年ですか、
すっかり老境に差し掛かった刑事を演じてここでもやっぱり「世界一ついてない男」でありましたよ。
ですが、同じついていない男でも「ダイ・ハード」のジョン・マクレーンはばりばりのヤリ手の印象がありますが、
この映画でのニューヨーク市警刑事ジャック・モーズリーは仕事中でもウイスキーの小瓶を取り出すようなやさぐれぶり。
「釣りバカ日誌」のハマちゃんならばまだ職場を和ませるという大いなる機能?を果たしているものの、
ジャックの場合はもはや完全にお荷物として持て余されている感じです。
が、誰もが手のふさがっているときに今日はあがりという段階で帰ろうとしているジャックに
簡単な?任務が割り当てられるのですな。収監中の囚人エディが司法取引により法廷で証言するために、
16ブロック先の裁判所まで送り届けてくれというものですが、車で移動すれば16ブロックはあっという間のはずながら、
これがちいともたどり着けない。ま、ジャックが頼まれた段階で予想できる展開ですけれどね。
このたどり着けないプロセスがアクション映画の見せ場となるわけが、細かいことは興味があればご覧いただくとして、
証言させまいと狙われるエディが途中でぼやくのですな。人殺しのような大きな犯罪ではないものの
確か悪いことはした。でも、犯罪者は立ち直る機会がないのか。チャック・ベリーは刑務所に行ったし、
バリー・ホワイトはタイヤ泥棒だったけど、その後はどうか。自分はケーキ職人になってやり直したいのだと。
ここのところは難しいところですよねえ。一度犯罪者のレッテルが貼られた人をどう見るか。
一事が万事ではないとは思うものの、なかなかに複雑なところでして、それだけに本人に更生しようとの意識があっても
それが阻害される話というのは山のようにあるわけで。
ですが、今ここではその点に深入りはしないでおくとしまして、全く別のことに話を向けてみることに。
奇しくもエディが引き合いに出したチャック・ベリーもバリー・ホワイトも、いずれもミュージシャンとして知られてますね。
チャック・ベリーはロックの元祖的位置を得て、ジョン・レノンも心酔していたとか。
初期のビートルズが歌っていた「ロール・オーバー・ベートーヴェン」はチャック・ベリーの曲ですし、
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマーティがギターを弾き語る「ジョニー・B・グッド」もまたチャック・ベリーの曲ですね。
一方で、バリー・ホワイトといえばラブ・アンリミッテッド・オーケストラとしてクレジットされる「愛のテーマ」で知られています。
清々しい飛翔感のあるメロディーは、「ジェット・ストリーム」で流される音楽としてうってつけでしょうし、
それだけにキャセイ・パシフィック航空がCMの曲として使っていたこともあるようで。
こんなことを書いていて懐かしくなったものですから、
バリー・ホワイトの「愛のテーマ」を久しぶりYoutubeで聴き(なんとも便利な世の中です)、
「ああ、エレキギターがワカチコワカチコやっているなあ」と思ったところで、記憶はいささか暴走気味に。
「わかちこ」という擬音語は…というところで、そういえばゆってぃなんつう芸人がいたっけなと。
そのゆってぃの「わかちこ」は少年隊の「デカメロン伝説」から持ってきたものという話もあれば、
エレキギターの擬音語として使われた例はさらにさかのぼってサディスティック・ミカ・バンドにあるとかいう話も。
とにもかくにも、バリー・ホワイトの「愛のテーマ」を聴けば、エレキギターの音が「なるほど、わかちこだ」と思うでありましょう。
さながら三味線の音を「つんつるてん、つんつるてん」と記すがごとしです。
そう言えば、この「つんつるてん」はかつてのTVバラエティ番組「欽ちゃんの週刊欽曜日」で
風見慎吾が若旦那風の姿で登場するときに口ずさんでいたのではなかったかと。
ですが、「週刊欽曜日」が放送されていた1980年代前半ごろにはまだ日本の古典芸能におよそ関心が無く、
歌舞伎などを好んでみることもありませんでしたので、それが三味線の音っぽいと知るのはずっと後のことでしたけれど。
…とまあ、思い出すことはだらだらととめどもなく、しかも脈絡もなく展開していくものですから、
ふと我に返ったときに、そもこんなことに思い至ったのはいったい何の話から始まったのだったか…ということが
よくよく思い返さなくては分からなくなってしまう、てなこともありますね。
ここでの話も元はと言えば映画「16ブロック」であったわけですが、話の入り口と出口だけを考えますと、
およそブルース・ウィリスと三味線がつながるとは思われず、あたかも「風が吹けば桶屋が儲かる」的展開かとも。
そんな、日常にはよくあるであろう、思いがけずも記憶の蓋が開いてしまったら、こんなことにもなるという
ご覧になられた方には申し訳なくもなんとも益体もないお話でありました。
