TV朝日の長寿番組「題名のない音楽会」も収録を控えているのですかね、
ちょいと前には司会の石丸幹二が過去に放送された演奏からベストパフォーマンスを選び出して…
なんつう構成であったりしたですが、その中で取り上げられていたひとつがひどく印象に残っておりまして。
ラン・ランによるピアノで耳にしたベートーヴェンの「エリーゼのために」、
これってこういう曲だったのと、眼からうろこならぬ耳からうろこが落ちるような気にさせられた
過去の放送回のことを思い出したのでありますよ。
(確か以前にEテレ「らららクラシック」でも聴いたような…)
一般には「エリーゼのために」がどういうふうに受け止められているのか(名曲?)、
よく知られてはいるものの分からないところがありますけれど、
個人的には敢えて聴きたいと思う事など無い曲と思い込んでいたわけです。
それがラン・ランの演奏を聴いて、こんなにロマンティックな曲であったのかと初めて感じたのですなあ。
その後、当のラン・ランが「エリーゼのために」を「こういうふうに弾いてはいけんよ」的なレクチャーをしている映像を
Youtubeで見つけて、これまでは「こういうふうに弾いてはいけんよ」という「エリーゼのために」ばかり
耳にしてきていたのだと思ったような次第でして。
と、そんなときにまた思い出しましたのが、
「ゲーテ街道紀行」でライプツィヒ・ゲヴァントハウスでの演奏会のことを書いた折にふれた
現地の演奏会情報誌「concerti」、この中にクラシック音楽CDのチャート・トップ20が紹介されて、
ラン・ランの「ピアノ・ブック」なるCDがその第一位になっていたということなのでありますよ。
つうことで気にはなっていたこのCD、耳からうろこの「エリーゼのために」も収録されているだけに、
予て気にはなったいたですが、先ごろの「題名のない音楽会」での再放送に接して、
今さらながらに思わず「カートに入れる」⇒「購入する」という挙に出てしまったという。
この「ピアノ・ブック」なるCDには、CD1枚もののスタンダード、CD2枚の「デラックス・エディション」、
さらには収録曲のピアノ楽譜まで付いたものまで出回っているようですけれど、ここではデラックス・エディションを。
まあ、2枚目のCDには収録曲が少ない(時間的にも30分余り)ですので、ボーナスCDみたいな気もしますが。
とまれ、早速に聴いてみたですが、先に見たYoutube動画でラン・ラン自身が語っているところを思い返しても、
どうやらピアノ初学者がおけいこの発表会で演奏するかもという曲を集めたようでもあるわけですね。
ですから、こういっては何ですが、いささか手垢が付きすぎていたり(生活音とまでは言わないものの…)、
はたまた弾くにも極端に難しくないが故に曲そのものの魅力としては今ひとつといったものも入っている。
ところが、です。
例えばですが、非常によく知られたテキストの朗読を聴くことを考えてみたらいいと思いますが、
あまりに知られたものだけにこれから聴かされる先の先まで内容がわかっていますと、
ついつい聴き流してなことにもなろうところながら、読み手の側の表現如何によっては
思わず耳を欹ててしまうようなことがありましょう。
敢えて言うなら、ラン・ランの演奏はそんな印象だったのでありますよ。
「エリーゼのために」は言うに及ばず、ショパンの「雨だれ」、モーツァルトのK.545、
そしてシューベルトの「楽興の時」などなど、昔の百科事典におまけで付いてきた名曲集のレコードでもあるかという、
そんな曲が並んでいますと、先の朗読の例えで言いましたように、聴き流してしまいそうになるところながら、
つい聴き入ってしまったり。まさしく「表現」でありますね。ただ弾いているのではない。
そんなことに改めて思い至るのでありましたよ。
という話になりますと、やたらラン・ランを(珍しくも)褒めちぎっているやに見えますけれど、
ボーナスCD、でなくて2枚目の最後に収録されているスコット・ジョプリンの「メープルリーフ・ラグ」、
もうラン・ラン、ノリノリの感じで弾いている姿が思い浮かぶものの、どうも聴いている方はのれない…。
ま、好き嫌いの問題ではあろうものの、「表現」にはこういうこともありますですねえ。